為替相場まとめ9月14日から9月18日の週

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 14日からの週は、ドル相場が激しく振幅した。米FOMCをめぐり、週明けからはドル安の動きが優勢となった。先日のジャクソンホールにおけるパウエルFRB議長の新戦略の内容が具体的に説明されるとの思惑が背景。FOMCでは、FOMCメンバーの17人中13人が2023年末までゼロ金利政策が続くと予想。FRBが雇用とインフレが目標水準に達するまで低金利政策を継続するとの意志が示された。当初はポジション調整のドル買いの動きが広がったが、週末にかけては次第にドル安方向へと回帰している。ポンド相場にとっては、英金融政策委員会(MPC)が注目された。声明でマイナス金利を議論との文言があり、市場は一時ポンド売りを強めたが、ドル安圧力も根強く下に往って来いとなった。英国とEUの通商交渉で漁業権に関する譲歩の兆しがあったこともポンド買いを誘った。ユーロドルも1.18を挟んで振幅。上値ではECB当局者らのユーロ高けん制への警戒感がみられた。ドル円は104円台へと軟調な流れが続いた。米株がIT関連株を中心に調整売りに押されたことが円高圧力となる面があった。菅新政権が発足し、まだ不透明感が残る面も一部にはあったようだ。


(14日)
 東京市場で、ドル円は106円台前半での狭いレンジ推移。朝からのレンジは106.01-106.16にとどまった。ユーロドルは1.1850台での推移。朝の1.1830台から上昇も値幅自体は限定的。対EUとの通商交渉難航などが重石となり今月に入って売りが目立つポンドは対ドルで1.2790台から1.2830台まで上昇。落ち着いた動きの中でポジション調整が入った。今週は米FOMC、日銀金融政策決定会合、英中銀金融政策会合(MPC)などが控えており、週初は動きにくい面もあった。

 ロンドン市場は、ドル売りが優勢。株が堅調に推移する中、リスク選好のドル売りの動きが見られた。加えて、明日からの米連邦公開市場委員会(FOMC)で示される参加メンバーによる年末時点での政策金利見通し(ドットプロット)において、今回から示される2023年末時点での見通しも、2022年までと同様にゼロ金利維持見通しが大勢になるとの思惑が広がっている。米緩和政策の長期化見込みからのドル売りにつながっている。ドル円は106円台割れ。ユーロドルは1.1840台から1.1870台まで持ち上げられた。ポンドドルは1.2510近辺から1.2580台まで上昇。

 NY市場でも、ドル安の推移。米株が大幅に続伸するなど、先週までの不安定な雰囲気が一服している。ワクチン開発への期待が再度膨らんでいるほか、Tiktokの買収を巡る動きに前進が見られそうなことも雰囲気改善につながったようだ。そのような中で為替市場ではドル売りが再開しており、ドル円を圧迫。一時105円台半ばまで下押しされた。ユーロドルは1.18台後半に一時上昇。先週のECB理事会でラガルドECB総裁は、ユーロの物価への影響を監視する必要性には言及したが、差し迫った政策調整の必要性までは示唆しなかったことから、市場のユーロ買いにポンドドルは1.29台に乗せる場面があった。英議会では国内市場法案の審議が始まったが、国際法違反との見方もあって与党内からの反発も強く、成立見通しは小さいとみられているもよう。

(15日)
 東京市場では、ドル安傾向がみられた。ドル円は狭いレンジで膠着。105.61から105.75までの値動きにとどまった。今日と明日の米FOMCを前に様子見ムードが広がる展開。ユーロドルはじり高。1.1860前後から1.1900レベルに迫った。豪ドルは0.7260台から0.7330台まで大きく上昇。中国の鉱工業生産や小売売上高が予想を超える好結果となり、対中輸出が大きい豪ドルにも好結果との思惑が広がった。豪ドル円も76.80近辺から77円台半ばへと上伸。NZドルも堅調に推移した。

 ロンドン市場では、ドル安とその調整の動きが交錯。ドル円は105.80近辺へと反発。ただ、取引中盤にかけてはふたたび105.50台へと押し戻された。ユーロドルはロンドン朝方に1.1900レベルまで買われた。その後は1.1880割れ水準まで反落する場面があったが、再び1.1890台へと上昇。ポンドドルが堅調。1.28台半ばでやや振幅したあとは買いが優勢となり、1.2925近辺まで上伸。明日の米FOMCを控えてドル売り圧力がみられた。ポンドにとっては国内市場法案の審議が行われるなど不透明感は高い。また、この日発表された英雇用統計でも失業率が再び上昇しており、目立ったポンド買い材料は見当たらなかった。原油が上昇、欧州株や米株先物が堅調に推移などリスク動向は良好。ユーロ円が125円台後半で停滞気味だが、ポンド円や豪ドル円は堅調に推移した。

 NY市場では、ドル円が軟調。106.30近辺まで下落する場面があった。きょうからFOMCが始まっている。今回は政策変更は見込まれていないが、市場は枠組み見直しに注目しているようだ。これまでのインフレ目標2%を、平均2%に変更することで、許容範囲を拡大させ、FRBは低金利の長期化を強調して来ると見られている。先日のパウエルFRB議長の講演に引き続き、少なくともそれに向けたヒントは示されるものと期待されているようだ。ユーロはNY時間に入ってから売りに押された。ユーロドルは1.1840近辺、ユーロ円は124円台まで一時下落。特段のユーロ売りの材料は見当たらなかった。ポンドドルは一時1.29台をつけたが、NY時間にかけては戻り売りに押され、1.28台半ばまで下落した。市場からは国内市場法案が成立しようがしまいが、ポンドにとっては重石となるとの見方も出ている。成立すれば合意なき離脱の可能性が高まり、成立しい場合は、ジョンソン首相のリーダーシップが損われる可能性があるという。
 
(16日)
 東京市場で、ドル円はやや頭の重い動き。105.25近辺まで一時値を落とした。いわゆる弱保ち合いとなっている。今晩のFOMCの結果次第で米国の緩和政策長期維持期待がもう一段強まるのではとの思惑があり、ドル売りにつながっている。ユーロドルは往って来い。ユーロ円の売りもあって朝方は軟調で1.18台半ばから1.1830割れも、その後1.18台半ばへ値を戻した。やや買いが入ったのがカナダドル。大型ハリケーン・サリーの米メキシコ湾岸上陸見込みでNY原油が上昇しており、原油輸出の大きいカナダには好材料となった。ドルカナダは1.3200前後から1.3170割れまで。

 ロンドン市場では、ドル売りが優勢。このあとのNY市場では米FOMCの結果内容が公表される。新たな方針として、雇用重視やインフレ目標を期間平均とすることなどが示されることが期待されている。ドル円は105.40近辺が重く、取引中盤には105円ちょうど近辺へと軟化。欧州通貨ではポンドドルの上昇が堅調で、1.29台乗せから1.2970近辺へと上伸。ユーロドルも1.18台半ばから一時1.1880付近まで買われた。豪ドル/ドルも0.73台前半で堅調な動き。ただ、ドル円は105円をめぐって売買が交錯、ユーロドルはデコス・スペイン中銀総裁が、これ以上の強いユーロ相場は輸出に悪影響与える可能性、とユーロ高進行に警戒感を示しており、やや神経質さがみられた。朝方に発表された一連の8月英物価統計は伸びの鈍化が示されたが、ポンド売りの反応にはつながらなかった。

 NY市場では、FOMC後にドル高に反応した。午後になってFOMCの結果が発表され、パウエル議長の会見も行われたが、FOMCメンバーの金利見通しでは2023年までのゼロ金利据え置きが示され、パウエルFRB議長が会見で「予想よりも早い回復が持続するかどうかはわからない」と述べていた。また、政策指針の枠組み見直しについても言及がほぼ無かった。概ね予想通りではあったものの、ドルショートが積み上がっている為替市場は改めてドルの買い戻しを強めている。ドル円は序盤に104.80近辺まで下落した後、105円付近へと戻した。序盤の円高については、この日新首相に就任した菅首相が会見で「規制改革を政権のど真ん中に置いている」と述べたことが円高を誘発したとの見方が一部に出ていた。米小売売上高は予想を下回ったが、市場はさほど警戒感を示していない。ユーロドルは売りが強まり、1.18ドルを割り込んだ。一方、ポンドドルは一時1.30台乗せと堅調。ポンド円も一時136円台半ばまで買われた。英国が先週のEUとの交渉で、漁業に関する暫定的な譲歩案を提示したと伝わり、交渉進展への期待感が高まったことが背景。ただ、あすの英MPCを控えていることもあり、FOMC後は売り戻しが入った。

(17日)
 東京市場で、ドル円は頭の重い展開。前日の海外市場で104円台まで下落したあとは回復の動きをみせ、今日の東京市場では105.17レベルまで反発。しかし、その後は再び104円台へと下押しされた。ドル安円高基調が継続。注目されたFOMCでは2023年までのゼロ金利継続見通しが示された。17名中13名がゼロ金利見通しを示すなど圧倒的な状況で、さらに長期のゼロ金利継続も意識されており、ドルの重石となっている。一方。ユーロドルは前日からの売りの流れが続き、昼頃には1.1730付近まで軟化。これまで積み上げてきたユーロ高基調に対する調整ムードが広がっている。英国とEUとの通商交渉の難航がユーロポンドでのユーロ買いを誘っていたが、漁業関連での対立に関して英国が譲歩の姿勢を示したとの報道がユーロ売りポンド買いを誘った。豪ドルは雇用統計が好結果で一時上昇も続かず。上昇分を解消してもみ合いに。

 ロンドン市場では、ポンドが下落した。この日の英金融政策委員会(MPC)では予想通り政策金利と資産買入枠が全会一致で据え置かれた。声明で「マイナス金利の有効性を議論」との文言があったことで、ポンドが一気に売られている。ポンドドルは1.29台後半から一時1.29台割れ、ポンド円は135円台後半から一時135円台割れに。8月会合後にはベイリー英中銀総裁が、マイナス金利は選択肢にあるが活用する計画ない、と述べていたが、今回の声明ではより前向きなメッセージとして市場は受け止めているようだ。その他通貨ではドル売りが優勢。前日の米FOMC後にはドル買いの動きがみられたが、東京昼頃を境にしてドル安方向に転じた。ドル指数は上に往って来いとなっており、方向性は出ていない。

 NY市場で、ドル円は上値の重い展開が続いた。104.55付近まで一時下落。前日のFOMCは大方の予想通りであったこともあり、積み上がっていたドルショートを巻き戻すきっかけとなったようだが、先週からある程度、事前に巻き戻しの動きが出ていたことから、ドル買いは続いていない。一方、米株に調整が入っており、それを受けた円高の動きがドル円を圧迫していた。前日のFOMCで雇用とインフレが目標水準に達するまで低金利政策を継続するとの意志が示される中で、ドル高は続かないとの見方が強まっている。ユーロドルはNY時間に入っても買い戻しが続き、1.18台を回復。ユーロ高に対するECBのけん制も警戒される中で8月以降、ユーロドルは上値を抑えられた動きが続いている。しかし、下向きの流れに変化した兆候までは見られていない。ポンドドルは1.28台後半から1.29台後半で下に往って来いの展開。英MPCでのマイナス金利を議論との言及に売られたが、フォンデアライエン欧州委員長の「英国との合意はまだ可能と確信している」との発言が伝わり、ポンドは一気に買い戻しを強めた。

(18日)
 東京市場は、小動き。ドル円は104.60台から104.80台での取引にとどまった。今週の米FOMC後のドル買いでは、105.10台までで上値を抑えられていた。一方、日本の大型連休を前に、突っ込んだ円買いにも慎重だったようだ。ユーロドルは1.1850台を中心とした高値圏でのレンジ取引。ユーロ円は124円台前半での取引に終始。昨日の英MPC後のポンド売り、その後のフォンデアライエン欧州委員長による英国とEUの合意まだ可能との発言でポンド買いと不安定な振幅を見せたポンドドルは、1.2960台を中心とした落ち着いた動きだった。

 ロンドン市場では、ドル円の下げが目立った。東京午前に104.87レベルまで買われたあとは、売りに転じている。ロンドン早朝から売り圧力が広がり、取引中盤には104.20台まで下押し。7月31日安値104.19レベルをうかがう水準となった。クロス円も軟調で、ユーロ円は123.50割れ、ポンド円は135円台前半、豪ドル円は76円台前半へとこの日の安値を広げた。ただ、欧州株や米株先物は高安まちまちでリスク警戒感はそれほど広がっていない。米10年債利回りが0.67%近辺へと低下しており、ドル円の重石となっている。ユーロドルは1.18台半ば付近で揉み合い、ポンドドルは一時1.30ちょうど近辺まで上昇。前日からのドル安の流れもみられた。

 NY市場は終盤に入ってドル円は買戻しが見られたものの、依然として上値の重い展開が続いており、104.30付近まで一時下落する場面も見られた。7月31日の直近安値が104.20付近に来ているが、目先の下値メドとして意識されそうだ。ドル円はきょうで5日続落となったが、明確な要因はないものの、FRBの低金利長期化観測や米大統領選の不確実性、そして、米中の政治的緊張などへの意識がリスク回避の円高を呼び込んでいるとの指摘も聞かれる。

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