【来週の注目材料】前回はさえなかった雇用は、今回しっかりとした数字を期待~米雇用統計

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 5日に2月の米雇用統計が発表されます。
前回1月の雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+4.9万人と、事前予想の+10.5万人を下回ったうえに、12月分の数字が-14万人から-22.7万人に大きく下方修正されるなど、厳しい数字となりました。
 
 失業率は6.3%と12月の6.7%から変わらずとの予想に反して大きく低下しましたが、労働参加率が予想外に低下したことが失業率の低下につながった面があるとみられます。

 12月の雇用統計で53.6万人の大幅な減少を見せ、雇用減の要因となったレジャー&ホスピタリティ部門(映画館・劇場・カジノなどのレジャー部門、ホテルなどの宿泊部門、レストラン・バーなどの飲食サービス部門)が-6.1万人と引き続き厳しい数字になったことに加え、12月に+13.49万人と持ち直しを見せた小売部門が-3.78万人とマイナス圏に沈みました。11月、12月とプラス圏を回復していた製造業も-1万人と雇用減に。運輸・倉庫部門が2か月連続でマイナス圏となったほか、比較的安定して雇用が増加し、雇用市場を支えていたヘルスケア及びソーシャルアシスタンス部門が-4.08万人となり、全体を押し下げています。

 総じて新型コロナウイルスの感染拡大とロックダウンの影響が出たという印象です。予想外のマイナスとなったヘルスケア部門も、在宅訪問ケア関連の減少が主要因という見方があり、コロナの影響とみられています。

 そうした意味では、新型コロナウイルス向けワクチン接種の進行が進んでいることもあり、今回はある程度の回復が期待されています。累計死者数が全米で唯一5万人を超えるなど、米国で最も感染被害が厳しい州であるカリフォルニア州で12月から導入されていた厳しい外出制限が1月25日に緩和されました。同じく感染被害が深刻なNY州でも一部の地域を除いて1月27日に緩和が発表されるなど、米国各地で行動制限の緩和が進んでいます。こうした動きが雇用の回復につながっていると期待されます。

 関連指標を確認してみましょう。
基準日である12日を含んだ週の新規失業保険申請件数は84.1万件(速報時点では86.1万件)と比較的高い水準となっています。1月の基準日を含んだ週の数字は87.5万件(速報時点では90.0万件・その後91.4万件に改定後、87.5万件にさらに改定)でしたので、やや強い数字となっていますが、それほど大きな改善ではありません。翌週は73.0万件と昨年11月以来の低水準になっていますので、雇用の回復にやや遅れが出ている可能性があります。

2月19日に発表された2月のマークイット製造業PMIは58.5と1月の59.2及び予想値の58.8よりもやや弱めも水準的には強めを維持。同時に発表された非製造業PMIは58.9と前回の58.3よりも悪化するとの事前予想(58.0)に反して改善を示しています。行動制限の緩和が進んでいることで、影響を大きく受ける非製造業の景況感がより強く進んでいることが印象付けられました。

 3月1日に発表される2月のISM製造業景気指数は、12月に60.5と驚きの好結果を示した後、前回1月は58.7と若干鈍化も堅調な水準を維持しました。今回の予想は58.6と前回とほぼ同水準。好悪判断の境となる50を大きく上回っており、堅調な数字を維持すると期待されています。前回は雇用部門については12月よりも強い52.6となっており、こちらの数にも要注目です。

 3月3日に発表される同非製造業景気指数は、前回予想外に上昇し58.7とほぼ2年ぶりの高水準となりました。12月時点では48.7と好悪判断の境である50を下回っていた雇用部門の回復が目立ち、55.2と大きく改善しています。今回は前回と変わらずの58.7が見込まれています。

 同じく3日に発表される2月の米ADP雇用者数は前月比+17万人と前回の+17.4万人とほぼ同水準が見込まれています。

 こうした状況を踏まえた今回の事前予想ですが、NFPは+14.5万人と前回よりも強い数字が見込まれています。失業率は前回下がりすぎた感もあり6.4%と0.1%ポイント悪化見込みです。NFPが予想前後の好結果を示すと、米景気回復見通しに安心感を与え、インフレ期待の拡大とともにドル買いにつながると期待されます。


MINKABU PRESS 山岡和雅

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