【中銀チェック】ECB理事会で、直近の利回り上昇への警戒示すか

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
【中銀チェック】ECB理事会で、直近の利回り上昇への警戒示すか

 11日にECB理事会が開催されます。政策金利及び量的緩和策については現状維持が見込まれています。政策金利はここ6会合連続で据え置きが続いています。量的緩和策については12月の会合で6月会合半年ぶりとなる追加緩和策としてパンデミック緊急債券購入プログラム(PEPP)を5000億ユーロ拡大し、1.85兆ユーロとしました。期限についてもそれまでの21年6月までから22年3月末までとしており、当面余裕のある状況です。前回1月21日の会合でラガルドECB総裁は「引き続きあらゆる手段を用いる準備ができている」と、環境によっては追加緩和を辞さない姿勢を示していますが、直近で追加緩和が必要な状況であるという認識は見られず、すんなりと現状維持となりそうです。

 そうした中、市場が注目しているのが直近で上昇している国債利回りについての言及です。

 米国債の利回り上昇が話題になっていますが、長短金利操作付き量的・質的緩和政策の下で長期金利(長期国債利回り)を抑え込んでいる日本はともかく、米国以外の国でも長期債利回りの上昇が目立つ状況です。
 年初に-0.6%台、2月初めの時点でも-0.5%台での推移となっていたドイツ10年国債利回りは2月末に一時-0.203%まで上昇。その後は少し戻しましたが直近で-0.29%台推移となっています。その他のユーロ圏諸国もフランスが年初の-0.3%台、2月初め時点でのようやくの-0.3%割れから先月末に一時+0.06%とプラス圏に浮上するなど、利回りの上昇傾向が顕著となっています。

 市場ではこうした利回りの上昇について、ECB理事会が声明や会合後のラガルド総裁会見で警戒感を示すかどうかが注目されています。

 直近では2日にデギンドスECB総裁が債券利回り上昇が資金調達環境を悪化させているかどうかを見極める必要と、一定の警戒感を示しました。さらに、理事会メンバーであるドイツ連銀のワイトマン総裁は3日、国債利回り上昇が正当化できないと判断された場合、ECBはPEPPの現在の枠組みの中で債券買い入れを増額できると発言しています。

 こうした一定の警戒感もあり、債券利回りの上昇がECB理事会の中で議題として上がる可能性は十分にあると考えられます。もっともドイツ国債利回りが依然マイナス圏で推移しているように、上昇したとはいえ水準的には警戒感を強めるほどには見えず。政策の変更については時期尚早という見方が一般的です。

 可能性としては声明などでPEPPの柔軟性を強調し、状況によっては対応するという姿勢を繰り返すといったところです。この場合ある程度のユーロ売りが見込まれるものの、影響は限定的と見られます。

 もう一つの可能性としては、利回りの上昇は経済成長とインフレに対する見方の改善の結果であるという楽観的な姿勢を示す可能性。3日に警戒発言を行っていたワイトマン総裁も、以前は楽観的な姿勢を強調していたように、米国と比べると金利水準がかなり落ち着いていることもあり、楽観論にも一定の理解が得られそう。ただ、この場合ユーロは買いで反応する可能性が高そうです。

MINKABU PRESS 山岡和雅

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