為替相場まとめ5月10日から5月14日の週

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 10日からの週は、米インフレ懸念が台頭し、不安定な相場展開となった、前週末の米雇用統計が予想外に小幅の雇用増にとどまり、ドル売りに反応したものの、株式市場はゴルディロックス的な状況として好感した経緯があった。そして、今週の米消費者物価指数に注目が集まった。事前予想の段階から上昇が想定されていたが、結果はそれ以上の高い伸びとなった。市場ではインフレ警戒が高まって米債利回りが上昇、株式市場は連日の下落に見舞われた。高騰していた原油相場も反落。長期債利回りの上昇は、各主要国にも波及した。そのなかで、今後の米金融当局の姿勢については見方が二分されている。インフレ対応で出口戦略が早まるとの見方がある一方で、インフレは一時的なものとして緩和姿勢継続が維持されるとの見方も有力。週末にかけて株式市場はやや落ち着きを取り戻しているが、来週にかけても市場の変動性はしばらく高止まりしそうだ。為替市場では、米消費者物価指数発表後にドル買いの動きが強まった。もっとも、14日の米小売売上高は弱めの数字に。同日のミシガン大学消費者信頼感指数も冴えず、ドルはやや調整が入り109円台前半で週の取引を終えている。

(10日)
 東京市場は、円安の動き。先週末に発表された米雇用統計が予想外の弱い結果となり、ドル売りとともに米株は買われた。米FRBの緩和姿勢が長期化するとの見通しが強まったことが背景だった。週明けは日経平均の上昇とともに、ドル円が午前中に108.90台へと上昇、午後も高止まりに。ポンド買いが目立った。ポンド円は152円ちょうど付近から153円手前へ、ポンドドルは1.40台割れ水準から1.40台半ばへと上昇。6日に行われたスコットランド議会選挙において、SNPが第1党を維持し、改選前から議席も伸ばしたものの、焦点となっていた過半数に届かなかったことや、勝利したSNPが主張する独立を求める住民投票について、コロナ下では実施しないと改めて示したことを好感。NY原油先物が上昇し、カナダや豪ドルなど資源国通貨買いの動きもみられた。ハッカーによる攻撃で米最大のパイプラインなどが操業停止となったことが背景。カナダ円は89円台前半から後半へと上昇。

 ロンドン市場は、ポンドが堅調。ポンドドルは先週末に1.40台乗せ、週明け東京市場では1.4040台へと上昇。ロンドン時間にはさらに買いが加速し、1.41台にしっかりと乗せた。ポンド円は152円台半ばから153円台半ばへと上昇。6日に行われたスコットランド議会選挙の開票が8日に終了し、スコットランド国民党(SNP)が単独過半数をとれなかったことがポンド買いに。SNP及びスコットランド緑の党の独立賛成派で過半数を超えたものの、一部で両派の圧勝が期待されていたほか、SNPが単独過半数をとることで独立への機運が高まるとの見方があった分、安心感につながったと見られる。ユーロドルは1.21台で方向感に欠ける上下動。ユーロ円は132円台前半から半ばで上に往って来い。NY原油の上昇一服で、カナダ買いも一服。ドル円は米債利回りの上昇で一時109円台に乗せたが、欧州株の冴えない動きとともに108.60台まで反落。

 NY市場で、ドル円は108円台後半での振幅が続いた。ロンドン時間には一時109円台に乗せたが、買いは続かず。108.70付近で揉み合った。ユーロドルは1.2170付近での上下動で、1.22台を試す動きはみられていない。先週末の米雇用統計後の高値圏は維持している。市場の一部からは先週末のショッキングな米雇用統計を受けてFRBは当面緩和スタンスを維持するとの見方も出ている。一方、FRBの緩和スタンスの長期化が世界経済の成長を改善させ逃避買い需要は後退するという。ポンドドルは買いが強まり、一時1.41台半ばと2月以来の高値水準に上昇した。先週6日に実施されたスコットランド議会選挙でスコットランド民族党(SNP)が勝利したものの過半数には1議席足りなかった。市場は独立を問う住民投票への差し迫ったリスクが後退したとみているようだ。ジョンソン英首相が住民投票の反対を改めて表明したこともサポートしている。

(11日)
 東京市場で、ドル円は108円台後半での揉み合い。前日の海外市場で109円台をつけたが、ハイテクを中心とした米株の下落とともに上値を抑えられた経緯がある。東京市場では108.90前後で上げ止まり、108.80台での膠着状態となった。ユーロドルは前日海外市場で1.2170台から1.2120台まで下落した。東京市場では1.2120付近から1.2150付近での狭いレンジ取引だった。ユーロ円はドル円と同様に132.20-30レベルで動意薄となった。日経平均は909円安と大幅安で引けたが、為替市場はほとんど反応せず。

 ロンドン市場は、ユーロが堅調に推移している。5月ドイツZEW景況感指数が84.4と予想を上回る力強い数字となったことが好感された。ECB当局者からは、仏中銀総裁が「PEPPに関するテーパリング観測はまったくの憶測だ、PEPPが終了した後であっても、政策は引き続き緩和的に」と慎重姿勢を強調した。一方、シュナーベル理事は「ドイツのインフレ率が一時的に3%を上回る可能性」と指摘した。ユーロドルは1.21台前半から後半へと上昇。ユーロ円は132円近辺が底堅く、一時132円台半ば付近まで上昇。ポンド相場は落ち着いた展開で、対ドルは1.41台前半、対円は153円台後半での取引に終始。ドル円は108円台後半での取引で、上値を試すも109円台には届かず反落。欧州株や米株先物が大きく下げており、NY原油先物も反落。リスク警戒感が広がるものの為替市場は総じて小動きにとどまっている。
 
 NY市場では、ドル円が戻り売りに押された。きょうは米株安が強まり、円高の動きに。ドル円は一時108.40近辺まで下落した。一方で、米債利回りは上昇しており、ある程度の下支えとなった。取引後半には米株も下げ止まり、ドル円も買い戻された。ユーロドルはNY時間に入ると1.21台半ばに伸び悩んだが、本日は一時1.21台後半まで上昇するなど1.22台をうかがう動きは継続。EUのワクチン展開が加速しており、ユーロ圏経済の回復期待が高まっている。5月のZEW景況感指数が約21年ぶりの高水準となり、その期待を裏付ける内容となった。最近、ドイツ債とイタリアやスペインといった南欧債との利回り格差が拡大している。一部からはこの背景として、ECBの資産購入ペース縮小が近づいていると市場が考え始めていることが要因との見方も。ポンドドルは1.41台半ばまで上げ幅を拡大。前日は独立を目指すスコットランド民族党(SNP)がスコットランド議会選挙で過半数を1議席下回ったという選挙結果は、2回目の住民投票が差し迫っているという懸念を和らげた。SNPはパンデミックが終息するまで待つ姿勢を示している。

(12日)
 東京市場では、ドル買いが先行。午前中にドル買いの動きが広がり、ドル円は108.60付近から昼頃には108.90近辺まで上昇。午後は108.80台での揉み合いに。ユーロドルは軟調。1.21台半ばから1.2115近辺まで下落した。前日海外市場での強い独ZEW景況感を受けた上昇をほぼ解消している。ポンドドルはドル高圧力が重石となり、1.4110割れ水準まで下落した。ユーロ円は132円を挟んだ揉み合い。台湾株の大幅安で日経平均も下げ、リスク警戒的の円買いがやや優勢だった。新型コロナ対応での厳しい制限が示される可能性が報じられた台湾は、代表的株価指数である加権指数が一時8%安と暴落。朝方買いが入っていた台湾ドルも一転して売りが出る流れとなった。

 ロンドン市場では、東京市場でのドル買いの動きが一服。ドル円は108.90付近まで買われたあとは売り戻された。ロンドン時間には米債利回りが低下しており、108.70近辺へとじり安に。ユーロドルは1.21台前半で下げ渋り。ただ、1.2150レベルには届かずと値幅は限定的。ポンドドルは1.41台前半にとどまっており、1.4150レベルに接近する場面があったが、付けきれずに揉み合いに。ロンドン朝方に発表された英GDPは第1四半期が予想通りのマイナス成長となった。一方で、3月単月のデータでは前月比の伸びが予想を上回り、ポンド買いに反応した。一方で、「フランス、英金融業界のEU市場アクセスで覚書を遅らせるよう意図」と報じられるとポンド買いは一服。EUは今年と来年の成長予測をいずれも引き上げた。各国の財政支援策が要因とした。ただ、ユーロ買い反応は目立たなかった。全般に、このあとのNY市場で発表される米消費者物価指数の結果待ちとなっているようだ。 

 NY市場では、ドル買いが強まった。米消費者物価指数(CPI)が予想を上回る強い数字となったことで市場はインフレ警戒感を強めた。米債利回りが急上昇、ドル円はストップを巻き込みながら109.70近辺まで買われた。今回の結果を受け市場では、先週の米雇用統計で後退していたFRBの早期出口戦略への期待が再び高まっている。米CPI発表後に伝わったクラリダFRB副議長にも敏感に反応している模様。副議長は一過性の要因としているものの「一過性ではないと分かれば、FRBは行動する」と述べていた。ユーロドルは戻り売りが強まり、一時1.2065近辺まで下落。米国のインフレと成長見通しはユーロ圏よりもかなり強く、ユーロ安をフォローする利回り格差が徐々に拡大。ワクチン展開の加速により、ユーロ圏の見通しはやや改善したが、ECBは市場が現在割り引いているよりも遥かに長期間政策金利を据え置くとの見方があった。ポンドドルは1.40台半ばまで下落。ポンドはワクチン展開の早さや回復期待、そして、英中銀の早期出口戦略着手への期待から買いが強まっていたが、きょうはその動きも一服していた。

(13日)
 東京市場では、ドル高の流れが継続。前日の米消費者物価指数の大幅上昇を受けてドル高が進行した流れを受けて、米10年債利回りが1.70%近辺に上昇するなか、ドル円は109.79レベルまで一段と買われた。その後は上昇一服も、109円台半ば割れでは再び買いが下支えしている。ユーロドルは前日の下落のあと、1.2089近辺まで反発も、上値も重く1.2070台で揉み合った。ユーロ円はドル円の上昇とともに、朝方に132.50台まで買われたが、その後は揉み合いとなった。日経平均は続落。インフレ警戒感が重石となった。

 ロンドン市場は、ドル高・円高の動き。前日に発表された米消費者物価指数の急上昇を受けて、市場にはインフレ警戒感が広がり、欧州株や米株先物が売られている。また、NY原油先物も大幅安。市場が不安定な状況となっている。ユーロドルは序盤に買い戻しの動きがみられたが、欧州株の下げ幅拡大とともに再び下押しされて、1.2050台まで下落。ポンドドルは1.40台後半から前半へ、豪ドル/ドルは0.77台前半から0.77台割れへと下落。クロス円も軟調で、ユーロ円は132円台後半へ買われたあとは売りに転じており132円付近まで一時下落。ポンド円は154円台前半から153円台後半へ、豪ドル円は84円台後半から前半へとそれぞれ下落している。そのなかで、ドル円は109円台後半と、前日からの高値圏での揉み合いが続いており、上下どちらにも動かない。米債利回りの上昇を受けて、欧州でも各国債券利回りが上昇している。

 NY市場では、ドル買いが一服。ようやく米株が反発の動きをみせたことで、リスク警戒的なドル買いは落ち着いた。ドル円は109円台半ばで、やや上値重く推移した。ユーロドルは下げが一服、買い戻しが入った。ただ、1.21台には慎重になっており、上値を抑えられている。ポンドドルは下げ一服も買い戻しの動きは乏しい。1.40台前半から半ばでの推移だった。米消費者物価指数の急上昇を受けての市場の見方は分かれている。インフレ懸念からFRBの慎重姿勢のコミットに疑念が生じる一方で、インフレ上昇は一時的との見方も根強い。FRBが慎重姿勢のコミットを一段と強化する可能性があるとの見方もあった。ユーロに関しては、ユーロ圏の経済見通しの改善が、米債利回り上昇の効果を相殺しつつあるとの見方もあり、ユーロドルの下支えとなっているもよう。ポンドにとっては、スコットランド議会選挙を終えたあとで安心感が広がっているが、長期的には住民投票の火種は残ると警戒する声も。

(14日)
 東京市場では、ドル買いの調整が入っている。前日の米株の反発を受けて、きょうの日経平均は大きく値を上げている。リスク警戒感が後退したことで、為替相場ではドル売り圧力が優勢。ドル円はゴトウビ関連の実需買いで午前には一時109.66レベルまで買われたが、午後には米債利回り低下とともに109.50割れ水準へと反落している。ユーロドルは1.20台後半から東京終盤にかけては1.21台をつけている。ポンドドルは1.40台半ばで小動きとなっているが、午後にはやや買いが優勢に。クロス円はまちまち。ユーロ円は132円台半ばへと小高く、ポンド円は朝方につけた154円ちょうど付近からはじり安となっている。

 ロンドン市場は、ドルが売り戻されている。前日の米株式市場が大きく反発した流れを受けて、きょうも欧州株や米株先物が堅調に推移している。米消費者物価ショックを受けた相場の混乱は落ち着いてきている。為替市場ではドル売りが優勢。ドル円は109円台前半へと軟化。ユーロドルは再び1.21台に乗せている。ポンドドルも1.40台後半に高値を伸ばしている。クロス円は株高や原油相場の下げ渋りを受けてやや円売りが優勢だが、値幅は限定的。ユーロ円は132円台半ば、ポンド円は153円台後半、豪ドル円は84円台後半で取引されている。このあとのNY市場では、米小売売上高、米鉱工業生産などの経済指標が発表される。結果待ちのムードも。

 NY市場は米小売売上高の弱さもあって朝方にロンドン市場のドル売りが強まる格好でドル円が109円19銭前後を付ける動きに。もっとも米株高を受けたリスク選好のでの円売りもあって、その後は109円台前半での推移となった。欧州通貨は対ドル、対円でしっかり。ユーロは欧州株の上昇などが支えとなり一時1.21台半ば手前まで。ユーロ円は132円84銭前後まで。ほぼ高値圏で週の取引を終えるなど、レンジは限定的も地合いは堅調。ポンドはロンドン市場からの上昇基調が加速する格好で1.41台を一時しっかりと付けた。大台を維持しきれずも、1.4090台で引けるなど堅調。17日からの海外旅行解禁などの英政府による行動制限緩和がポンド買いに。

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