ドル円は111円台半ばでの推移が続く=NY為替後半

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 NY時間の終盤に入ってドル円は111円台半ばでの推移が続いている。きょうのNY為替市場、ドル円は上値追いが続いており、一時111.65円付近まで上昇。7月につけた年初来高値に顔合わせした。NY時間に入って米株式市場や原油相場が下落しており、ドル円も伸び悩んでいるものの、111円台はしっかりと維持。

 きょうも米国債利回りが上昇を加速させていることがドル円のフォローとなっている模様。米10年債利回りは一時1.56%台まで上昇。先週は中国大手不動産の恒大集団の債務不履行への警戒感が高まり、リスク回避の雰囲気が高まった。中国への不安は根強いものの、ひとまず不安感は一服している。そのような中で、市場は改めて先行きのインフレ見通しを見直しているようだ。

 市場は現在、米国のインフレ上昇は一時的との見方に焦点を合わせている。ただ、一部からは、市場はインフレ上昇が一時的との見方に焦点を合わせ過ぎており、インフレ上昇が予想以上に長引くリスクを過小評価しているとの指摘も出ている。インフレ上昇は一時的とのパウエルFRB議長が示すストーリーに固執し過ぎているという。サプライチェーンのボトルネックなどの現在のインフレ要因の一部は、今後次第に緩和されることが期待される一方で、インフレ上昇の継続的な構造要因も見られるとの指摘も聞かれる。

 ユーロドルは1.16ドル台で推移しており、下値模索が続いている。NY時間に入って、ECB理事のカジミール・スロバキア中銀総裁が「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)終了後に必ずしも、従来の資産購入プロフラム(APP)を拡大する必要はない」と認識を示したことで1.17ドル台に戻す場面がみられたものの、一時的な上昇に留まっている。きょうは1.1670ドル付近まで下落し、8月につけた年初来安値1.1665ドルに顔合わせしている。

 FRBや英中銀に22年の利上げ開始の可能性が出てきている半面、ECBは2022年3月にパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の下での債券購入終了が見込まれているだけの状況。ECBとFRBおよび英中銀との金融政策の格差がユーロを圧迫するとの見方は根強い。カジミール・スロバキア中銀総裁の発言はあったものの、依然として市場では、ECBはPEPP終了後にAPPの購入額を増やして緩和状態を継続するとの見方が根強いようだ。FRBや英中銀と違い、ECBが2022年に利上げを開始する可能性は低いと見られている。きょうはラガルドECB総裁の発言も伝わっていたが、一時的なサプライチェーン問題に過剰反応すべきでないと述べており、ECBの姿勢はやはり慎重なようだ。

 ポンドドルも売りが強まり1.35ドル台に下落。7月以降強いサポートとなっていた1.36ドルの水準をブレイクしたことで、見切り売りが加速しているようだ。ただ、英10年債利回りは2019年5月以来の1%を回復するなど、金利上昇期待が高まっている。2022年の第1四半期に0.15%利上げし、0.25%に、第3四半期に0.5%まで引き上げるとの予想も出ている。

 市場では英中銀の早期利上げ期待が高まっているが、現在のサプライチェーン問題が英中銀に引き上げを思い留まらせる可能性があり、ポンドは上昇に苦労する可能性があるとの指摘も聞かれる。

 ベイリー英中銀総裁は前日の講演で、金利が年末までに上昇する可能性に繰り返し言及していたが、サプライチェーンのボトルネックが経済見通しに重くのしかかっており、金融政策の引き締めが早過ぎると回復が遅くれる可能性も強調していた。そのことから、総裁の発言とは裏腹に、年内の利上げ開始はありそうにないという。従って、ポンド上昇の可能性はほとんどないとしている。サプライチェーンのボトルネックが長引くほど、景気回復に対するリスクは大きくなり、金融政策の大幅な引き締めは起こり難くなるという。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

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