きょうの為替市場は、ロンドン時間にドル売りが優勢となり、ドル円も137円台半ばまで値を落としていた。しかし、NY時間に入って買い戻しが活発化し、138.70円付近まで買い戻される展開。 ロンドン時間のドル円の下落については、中国で実施されているゼロコロナ政策に対して北京や上海などの大都市で大規模な抗議活動が続いており、それを嫌気した円高の動きも圧迫していたようだ。 今週は重要イベント目白押しの週だが、それを巡って調整の動きも出ている模様。経済指標では米雇用統計が週末に発表になるほか、水曜日にパウエルFRB議長の講演が予定されている。 パウエル議長は追加利上げの必要性を改めて強調する可能性があり、それがドルを下支えするとの見方も出ている。ただ、議長は利上げスピード減速とターミナルレート(最終着地点)が従来よりも高くなると警告した前回FOMCでのメッセージと同様の内容を伝える可能性もありそうだ。 一部からは「パウエル議長の発言はドルをサポートする可能性がある。しかし、最近の値動きに見られるように、市場参加者は、米インフレがピークに達し、成長が減速するという確信を反映し、米金利がさらに上昇するリスクを見過ごそうとする傾向が出ている。議長の講演を受けて本格的なドル高の流れに戻るかどうかは未知数だ」との声も聞かれる。 ユーロドルは上に往って来いの展開が見られている。ロンドン時間には買いが強まり、1.05ドル台をうかがう動きも見せていたが、NY時間にかけてドル買いが復活し、ユーロドルは1.03ドル台に戻している。ただ、200日線が1.0385ドル付近に来ており、その水準はかろうじて維持されている状況。 市場では12月のECB理事会を巡って、利上げ幅で見方が二分している。確率的には0.50%ポイントが60%、0.75%が40%といったところ。今週はユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値の発表が予定されており、それが大きなヒントを与えてくれるかもしれない。 いずれにしろ、ECBはしばらく利上げを継続する可能性が高い。しかし、それはユーロに恩恵をもたらさないとの見方も少なくない。先週、シュナーベルECB専務理事が示したように、ECBは0.75%ポイントの利上げを継続する可能性もある。しかし、それが必ずしもユーロを支援することにはならないとも専務理事は述べていた。景気後退が待ち構える中、地政学的リスクも制御不能の状態。利上げは2023年の高インフレとリセッション(景気後退)とが重なるスタグフレーションを招く可能性があり、金融政策が効果を反映するには時間が必要な中、その間にもエネルギーコスト上昇が物価に転嫁され、インフレは持続するという。 ポンドドルはロンドン時間に1.21ドル台まで上昇していたものの、NY時間にかけてのドル買いが復活で1.20ドル台前半に戻している。先週は1.2175ドル付近に来ている200日線を試しそうな気配が見られたものの、それは達成できていない。逆に目先は1.20ドルを維持できるか注目される展開。 ポンドドルには慎重な見方が根強く、現在の上昇は続かないとの見方がなお多い。世界的な景気後退と英国の経常赤字を考慮すると、ドルに対するポンドの上昇は長続きしないという。世界的に国債市場は逆イールドを示現しており、景気後退の前触れとも取れる。その中で、巨額の経常赤字を抱えるポンドは脆弱な状態が続くと考えるべきだという。 200日線が控える1.2175ドル付近、または、2021-22年の下降波のフィボナッチ50%戻しの1.23ドルちょうど付近で、新規の売りオーダーが強まる可能性があるという。 MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
みんなの株式をはじめ、株探、みんかぶFX、みんなの仮想通貨など金融系メディアの 記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコン テンツなど幅広く提供しています。