コモディティレポート(金)

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
【NY金を押し上げる背景とは】
 NY金6月限は4月を迎えてからも強い足取りを維持し、連日、過去最高値を更新し
ている。1日は2286.40ドルまで上昇したところで上げ幅縮小に転じたが、2日
は2301.8ドルに到達。2301ドルで終え、3日は2319.70ドルに達し、
連日の過去最高値更新を示現している。
 NY金の上値追いのきっかけは、3月19〜20日に開催された米公開市場委委員会
(FOMC)において、強気な米経済指標の発表が見られたにもかかわらず、インフレ
率は短期間での高下を繰り返しながら低下傾向を保つ、との見方が示され、2024年
のフェデラルファンド・レートの誘導目標が4.6%に据え置かれたことで2024年
内3回の利下げ見通しが強まったことにある。
 NY金はこれを受けて中心限月が2240ドル台に達する急伸を演じながらも戻り頭
を売られて2200ドル前後まで軟化。2月にかけて昨年末の買い玉の調整を進めてき
たファンド筋を含む大口投機家の買いもこの上昇で一巡したと見られた。
 米国の利下げ見通しに加え、国内の経済不安から金価格の高騰にもかかわらず中国が
旺盛な需要を維持し続けていることが更に値位置を切り上げる一因になっている。
 上海金取引所によると、同取引所における金の取引価格は3月20日までグラム当た
り505元(約1万0605円)前後で推移していたが、3月下旬以降に地合いを引き
締めて4月に入り532元台(約1万1172円)に到達しており、価格の高騰にもか
かわらず金需要が衰える気配が見られない様子を窺わせている。
 ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると中国の金ETF残高は、3月
22日時点で華安易富黄金ETF,Guotai Gold ETF合わせて33.5
トンにとなっており、3月1日時点の29.6トンから増加。価格が上昇するなかでも
中国の需要が底堅さを見せたことが明らかとされている。
 この中国の需要に加え、中東地域の地政学不安の高まりも安全資産として金を求める
動きを後押ししていると見られる。中東では、イスラエルがパレスチナ自治区ガザで武
装組織ハマスを支援するイランのシリア大使館を空爆したが、これに対しイラン大統領
が報復を表明したことで戦火の拡大が警戒されている。
 イスラエルは米国からの支援を受ける一方、イランは米国から経済制裁を受ける一方
でロシアと軍事協力関係にあるため、イスラエルとイランの関係悪化は、米国とロシア
の関係悪化を促すリスクを高めかねないからだ。
 特に今回大統領が報復を表明したことでイランが支援している武装組織が米軍へ攻撃
を行う可能性もあるうえ、イランによる核開発加速化ことも見込まれる。

 どのような形でイランによる報復が行われれるのか、もしくは報復は行われないの
か、実際の見通しには不透明感が強いながら、報復が行われた場合、その対象によって
は戦火が拡大しかねない。
 また、中東情勢の不安定化は原油価格の上昇も促すことが見込まれ、沈静化しつつあ
るインフレ率の上昇が再び強まるようであれば、不安視されている中国経済を始め世界
経済に与える影響も大きい。それだけに安全な資産を求める動きが活発化してもおかし
くはなく、これが背景となって金の過去最高値更新という動きが促されたと見られる。
 3日のNY金6月限は高値からやや値を落とした2317.5ドルで取引を終えてい
る。上値警戒感が強いながらも高値に近い水準で引けを迎えたところに金への投資意欲
の強さが窺われるところで、急伸後の反動安の可能性は存在しつつも、米国での利下げ
路線、中国の需要、地政学不安の高まりに支えられ高値圏での高下が続くと見られる。
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