【NY金は地合い軟化ながら環境好転で目先の底は浅いか】 NY金12月限は11月6日まで2000ドル前後の値位置を維持する足取りとなっ ていたが、7日に下放れとなり、8日は2ケタ安を記録する軟調な足取りとなり、10 月19日以来の安値をつけた。 米国では10月7日にイスラエルとハマスの軍事衝突が発生して以降、地政学不安か ら金を買い求める動きが膨らんだが、これに米金融政策に関連する動きが見られたこと で金価格が押し上げられた。 米公開市場委員会(FOMC)については、フェデラルファンド(FF)レートの誘 導目標は5.25〜5.50%で据え置かれたうえ、パウエル連邦準備理事会(FR B)議長も利上げ終了の可能性を示唆する、これまでのタカ派姿勢が軟化した様子を見 せたことは、11月上旬のNY金市場の下支え要因となった。 これに加え、11月10日までに発表された米経済指標では、9月雇用動態調査(J OLTS)の非農業部門求人件数が955万3000件と前月を上回り人手を求める動 きが依然として旺盛な様子を示したが、同時に10月非農業部門雇用者数の増加幅は事 前予想を大幅に下回る15万人にとどまるなど、強弱入り混じる内容で、FRBによる 利上げ終了を支える根拠になるものとなっている。 米長期債の利回りも雇用統計の結果を受けて10月下旬に記録していた5%台から 4%台まで低下。米国のインフレ抑制のための金融引き締め政策とこれを受けた金利の 上昇の流れが一服した様子を示している。 この流れに加え、高金利環境が続くなかで利払い支出が増加した結果、米国の財政悪 化が進行していることも警戒されて金への逃避買い需要が集まったことも2000ドル 前後での金価格の推移を促す要因となっていた。 これらの要因にもかかわらず金価格が軟化に転じているのは、イスラエルとハマスの 軍事衝突が大規模に発展するとの懸念が強まりながらも現時点ではその拡大が抑制され ていることで、安全資産を求めて流入してきた資金が流出していることが背景と見られ る。 地政学不安の高まりは金市場において買い支援材料となるが、その影響は短期で消化 されるという傾向がある。ロシアによるウクライナ軍事侵攻が行われた際にもNY金は 上伸しその当時の高値となる1900〜2000ドルのレンジまで値位置を切り上げた うえ、一時的に2078.80ドルに達する動きも見られたが、この騰勢は4月中旬ま ででその後は軟化に転じている。つまり、2か月程度で材料を織り込んだ形となってい る。 今回のパレスチナ情勢については中東諸国まで紛争が拡大することが警戒されながら も、NY原油は軟調な足取りが続いており、警戒が柔らいでいる様子を示している。 NY金の軟調な足取りも、2000ドル前後という水準まで価格が上昇し、しばらく この水準で高下するなかで材料を織り込んだことが背景と見られ、反動安場面が続く可 能性はまだ残されている。とはいえ、本格的な軟化に転じる可能性については見通しに 不透明感が強い。 前述のように米雇用情勢の軟化傾向が強まっているからだ。これまでの米国のインフ レは、コロナ後の供給網の混乱がきっかけとなったが、供給網の混乱が落ち付いた後は 人手不足解消のための賃金引き上げが主因となって進行してきた。 それだけに米国の雇用情勢の緩和は今後も物価が上がり続ける可能性が後退している ことを意味すると同時に、追加利上げによって金利が上昇するなか、米景気や米財政に 対する不安を高めるものにもなっている。依然として安全資産を求めてドル高傾向が続 いていることは金市場において重石になり得るが、一方では10月下旬には850トン を割り込む水準まで低迷していたSPDR金ETF残高が回復に転じ11月7日時点で は867.57トンを記録していることは、金の需要が回復しつつある様子を示唆して いると見られる。 目先は急伸後の反動安場面が続く可能性が残されているが、金を巡る環境は強気に転 じつつあると見られるだけに、ここから先の底は浅いと予想する。 MINKABU PRESS
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