金は3月、米ISM製造業景気指数の低下などを受けて米連邦準備理事会(FRB) の6月の利下げ開始を織り込むと、テクニカル要因の買いも入って急伸し、史上最高値 を更新した。その後はパウエル米FRB議長の利下げ見通しが示されたが、米国のイン フレの伸びが加速すると、利下げ予想の後退が警戒されて上げ一服となった。ただ米連 邦公開市場委員会(FOMC)で年3回の利下げ予想が維持されると、押し目を買われ て一段高となり、2220ドル台まで上昇した。スイス中銀の予想外の利下げなどによ るドル安一服に上値を抑えられたが、米FRBの6月の利下げ開始見通しは変わらず、 押し目を買われた。欧米の中銀が利下げサイクルに転じるとの見通しを受けて金ファン ドに投資資金が流入している。米主要株価指数3指数も最高値を更新し、リスク選好の 動きとなっており、引き続き買われると、上値を伸ばすとみられる。これまでの商品 (コモディティ)市場では、今回のような急伸場面ではまとまった現物が出てきて利食 い売り主導で反落したが、ニューヨーク金の指定倉庫在庫は減少傾向にあり、実需筋も 踏み上げとなっている。銀市場では現物が出て上値を抑えられており、金はまとまった 現物が出るまで上昇が続く可能性がある。 2月の米消費者物価指数(CPI)は前年比3.2%上昇した。前月の3.1%上昇 から、ガソリンや住居費の上昇を受けて伸びが加速した。事前予想の3.1%上昇も上 回った。また米生産者物価指数(PPI)も前月比0.6%上昇し、前月の0.3%上 昇から伸びが加速し、事前予想の0.3%上昇も上回った。インフレの伸び加速に対す る警戒感が出たが、米連邦公開市場委員会(FOMC)で年3回の利下げ予想が維持さ れた。米FOMCではフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を5会合連続で 5.25〜5.50%に据え置いた。パウエル米連邦準備理事会(FRB)は会合後の 記者会見で、インフレの高止まりが示されたが、「全体的なストーリーは変わっていな い」と強調した。市場ではインフレが鈍化すれば、6月に利下げを開始するとみられて いる。CMEのフェドウォッチで、6月の米FOMCの利下げ確率は63.5%(前月 52.3%)に上昇し、年末までの利下げ幅は75ベーシスポイント(bp)の確率が 34.8%(同31.9%)となった。また2025年は9月までにさらに75bp利 下げが見込まれている。 スイス中銀は、主要金利を25ベーシスポイント(bp)引き下げ、1.50%とし た。声明で「過去2年半のインフレとの闘いが効果的であったため、今回の金融緩和が 可能になった」とされた。主要中銀として初めて利下げに踏み切り、ドル安が一服し た。ただイングランド銀行は金利据え置きを決定したが、前回会合まで利上げを主張し た2人の委員が据え置きに転じた。ベイリー総裁は利下げを開始する「正しい方向に動 いている」と指摘した。欧州中央銀行(ECB)も6月に利下げを開始するとみられて おり、欧米の中銀は利下げサイクルに転じる見通しである。バンク・オブ・アメリカ (BofA)の週間調査によると、3月20日までの1週間の金ファンドへの資金流入 は11億ドルと2023年5月以来で最大となった。BofAは、中銀の利下げに向け た動きが下支えとなり、株価や金が最高値を更新していると指摘した。 【国内金は円安も支援要因】 国内金は日銀金融政策決定会合後の円安も支援要因となり、現物(店頭小売価格、税 込)が1万1752円、先物(JPX金先限)が1万0734円とともに最高値を更新 した。日銀会合ではマイナス金利解除とイールドカーブコントロール(YCC)廃止を 決定した。ただ「当面、緩和的な金融環境が継続する」と明記されたことで円相場は1 ドル=151円台後半まで円安に振れた。神田財務官の発言を受けて介入警戒感も出て いるが、米連邦準備理事会(FRB)が当面、高金利を維持することで円を買い戻す動 きは限られている。 【米利下げ予想で金ETFに投資資金が戻る】 世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、3月25 日に835.33トン(2月末822.91トン)となった。米連邦準備理事会(FR B)の利下げ観測後退を受けて815.13トンまで減少したが、利下げ予想が示され たことで投資資金が戻った。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告 によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは3月12・19日に20 万1602枚に拡大し、1月2日以来の高水準となった。米FRBの利下げ観測後退を 受けて2月13日に13万1168枚まで縮小したが、2000ドル割れで下げ一服と なったことから、安値拾いの買いが入った。 (MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行) *27日、Yahoo!ファイナンスに掲載された記事を再配信します。
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