【NY金は再び高まる米国の不確実性や米景気悪化リスクで下値堅く推移か】 NY金期近6月限は今月15日に4月10日以来の安値となる3123.3ドルまで 下落したが、19日の週を迎えてから3200ドル台での高下が続くなか、値位置を切 り上げて21日は終値で3300ドル台を回復した。 今月10〜11日に開催された米中閣僚級の通商協議で米国と中国の双方が90日の 期限付きながら、互いの国からの輸入関税を115%引き下げることで合意に至ったこ とで米中貿易摩擦懸念が後退し、一時的に大きく値を落としたものの、その後、安全資 産を求める動きが活発化した様子を示唆している。 米国・中国間の輸入関税大幅引き下げにより米スタグフレーション発生予想を後退さ せ、最悪の事態を避けられる可能性が高っている。しかし、トランプ政権により米国の 輸入関税は中国製品に対しては30%、その他の地域からの輸入にも一律10%の関税 が賦課、分野別にも様々な輸入関税が発動されていることで今後のインフレが予想され るなど、米国は景気悪化リスクを抱えていることへの意識が背景と見られる。 米中貿易摩擦に関しては、互いに115%引き下げる案は暫定的な措置であり、90 日間という期間が設けられている。米国では中間選挙が、中国では景気刺激策の必要性 があることため、米中間の緊張が再び高まる可能性は低いと見られるとはいえ、今後の 交渉次第では再び関税が引き上げられる可能性が残されている。 また、115%と大幅に引き下げられたとはいえ、米国の中国からの輸入に対する関 税は30%と依然として高率となっている。 4月の米消費者物価指数(CPI)の前年同月比は総合が+2.3%となり、前月の +2.4%を下回った。変動が激しいエネルギーと食料を除いたコアCPIの前年同月 比も+2.8%で+3%を下回った。米連邦準備理事会(FRB)が目標とする2%に 達しないながらも、時間をかけながら次第に低下する傾向にあった。 米トランプ政権による輸入関税の引き上げ表明以降、新たな関税の発動前の駆け込み 需要や駆け込み輸入が見られたことで、当面は輸入関税の引き上げが物価に与える影響 は抑制される可能性はあるが、足元の在庫を消化した後は新たな輸入関税が賦課された 価格が広がることが予想され、米国のインフレが加速化することが予想される。 なお、4月CPIの低下は駆け込み輸入によって物価が抑制されているのと同時に、 サービス手数料を抑制することで価格を据え置いている可能性もあるが、懸念されるの は、サービス手数料の抑制は賃金の伸び悩みに繋がる傾向がある点だ。 コロナ後の物価高局面では、強気な雇用とこれを受けた賃金の上昇が物価高を吸収す る力強さを見せていた。トランプ関税に発動による物価上昇時に賃金の上昇が見られな いのであれば、購買力が低下し物価の上昇を吸収できず、米経済が伸び悩むリスクが高 まることになる。 米中間で大幅な輸入関税の引き下げが合意に至っているとはいえ、米景気不安は依然 としてくすぶるなか米国の国債の格付は引き下げられている。将来的なインフレ加速化 の可能性が見込まれるなか米国債離れの動きも進んでいる。 米トランプ大統領は輸入関税の引き上げのみならず、所得減税の恒久化も目指してい るが、大型減税が実行に移されれば歳入が減少し米国財政の赤字が拡大の恐れがある。 米トランプ政権は4月2日の相互関税発表時に一律10%の関税賦課に加えた上乗せ 分を発表しながらも、90日間を交渉期間として設けこの期間中はその発動を停止する としたが、7月上旬にその期限を迎えることになる。既にトランプ政権は、その期限ま でに協議を申し入れた全ての国々との協議の実施や合意は困難として、協議や合意の実 施がない場合でも改めて上乗せ部分を通告する予定であることを明らかにしている。 米国の輸入関税を巡る混乱はまだまだ続く可能性があり、一旦は収束した不確実性が 再び高まることが予想される。 米輸入関税を巡る混乱や輸入関税引き上げを受けた米インフレ加速化の可能性、米国 離れの動きは万国共通の安全資産である金の需要を支える要因となり、NY金期近6月 限は3300ドルを支持線に下値堅い値動きが想定される。ただ24日から3連休とな るため、連休前の利食い売りによる急落リスクは警戒したい。 MINKABU PRESS
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