ドル円は一時145円台 米雇用統計を受けて安心感が広がる=NY為替概況 きょうのNY為替市場、ドル高が強まり、ドル円は一時145円台を付ける場面も見られた。この日発表の5月の米雇用統計を受けて安心感が広がっている。米労働市場の鈍化を示す内容ではあったものの、今週発表のADP雇用統計が予想外の弱さを示していたことから、米雇用統計にも警戒感が高まっていた。 ただ、非農業部門雇用者数(NFP)は13.9万人増と予想を上回り、前回の下方修正分と併せると、雇用情勢の軟化を示す内容ではあるが、失業率は4.2%と前回水準を維持し、平均時給が予想を上回る伸びを示すなど、底堅さは堅持している印象。 市場ではFRBの年内利下げ期待を後退させており、年内2回の利下げ期待は後退している。短期的にはドルショートがかなり積み上がっていることから、今月17、18日のFOMCに向けてドルの買い戻しが出易い状況にはある。 本日の米雇用統計を受けた動きから、オプション市場では円への強気姿勢が3月下旬の水準まで縮小している。トレーダーは依然としてドル円の下落に高いプレミアム(オプション料)を支払っていはいるものの、5月20日以降縮小傾向にある。本日の米雇用統計が米景気の減速懸念を和らげたことで米国債利回りが上昇し、円などの安全資産通貨の魅力が低下したことが背景にある。 ユーロドルは1.13ドル台に一時下落。本日の21日線が1.13ドルちょうど付近に来ていたが、目先のその水準が下値メドとして意識されそうだ。 前日のECB理事会は予想通りに0.25%ポイントの利下げを実施したが、ラガルド総裁は今回の利下げサイクルは完了に近いとの認識を示していた。市場では、ECBのインフレや成長見通しの下方修正から、あともう1回の追加利下げがあるのではとの見方で意見が分かれている状況。 一方、ECBは利下げサイクル終了に向けたサインを出し始めたが、エコノミストからは、関税でユーロ圏経済は早期に打撃を受ける可能性があるのとの警告も出ていた。この日発表された4月のドイツ貿易収支は予想を下回る黒字となっていた。トランプ関税が始まった4月に対米輸出が急減したことが打撃となり、第1四半期に見られた駆け込み需要による対米輸出増加を一転させている。ユーロ圏における純輸出が予想以上に早く減少に転じ、第2四半期の成長をすでに押し下げている可能性を示唆しているという。 ポンドドルも1.35ドル台前半に下落。ただ、前日は1.36ドル台まで上昇し、2022年2月以来の高値を更新するなどポンドは力強い動きを見せている。 英経済が比較的堅調な兆候を示しており、英中銀も利下げを急いでいないことから、最近のポンドは力強い動きが続いている。そのような中、来週の英雇用統計と月次GDPはポンドにとって重要な試金石となる可能性がある。 来週12日木曜日の4月の月次GDPは労働コスト上昇が企業に打撃を与える中、第2四半期の減速の始まりを示唆する可能性が見込まれ、前月比0.1%のマイナス成長が見込まれている。一方、10日火曜日の2-4月の英雇用統計は失業率の上昇が見込まれ、週平均賃金(除く賞与)も前回から伸び鈍化が見込まれている。それでも5%台ではある。ただ、減速を示す内容だったとしても、英経済は十分な備えを整えており、関税の影響を乗り切れると予想されているようだ。 MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
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