【金は米国とイランの停戦期待を受け底堅く推移】 金ドル建て現物は3月23日に4103.04ドルと昨年11月24日以来の安値ま で値を落とした。その後、買い戻されたが、4600ドルを抵抗線になっていたが、3 月31日に4600ドルを突破。その後、4月1日に4790ドル台を回復し、3月 19日以来の水準まで浮上している。 2月末に開始されたトランプ米政権によるイラン攻撃以降、中東ではイランによる周 辺諸国への攻撃やイスラエルによるレバノン攻撃と戦闘が拡大したうえ、ホルムズ海峡 をイランが実質的に封鎖した状態が続いている。 このホルムズ海峡の封鎖は世界的な原油価格の高騰を招いている。NY原油は3月上 旬に100ドル台に達した。また、世界的な協調備蓄放出などによる供給緩和期待を受 けて値位置を落としながらも中東不安の長期化が警戒されて買い戻されていたが、1日 は一時96ドル台まで下落した。トランプ米政権とイランとの間の停戦協議の進展が期 待されていることや、トランプ米大統領がホルムズ海峡の封鎖が続いても米軍は撤退す る可能性を示したことが下落要因となった。トランプ米大統領はSNSにイランが停戦 を求めてきた、と書き込むなど、米国とイランの間で停戦協議が開始される可能性があ ることも示唆している。 ホルムズ海峡は3月2日にイラン革命防衛隊(IRGC)によるホルムズ海峡閉鎖宣 言以降、封鎖された状態が続いている。これは、このホルムズ海峡閉鎖宣言の同日に世 界の外航船腹量の約90%に海上保険を提供している国際P&I グループ主要12クラ ブのうち7クラブが3月5日には戦争リスクの補償を停止したことが背景となってい る。この戦争リスク補償の停止を受け航行中の攻撃により損害が発生しても補償を得ら れないリスクが高まったことでほぼ全ての船舶の航行が停止された状態にある。 これが原油価格の高騰を招いた主因だが、イランと米国の間で停戦が合意に至るよう であれば原油供給の回復が見込まれることになり、これが4月1日のNY原油の大幅下 落の原因となった。 この原油の下落は、これまで安全資産としての役割を持ちながらも、米利下げ観測の 後退も相まって逃避買い需要が米ドル・米債券に向けられた結果、大きく値を落とす場 面が見られたNY金にとっては買い支援要因となっている。 ただし、米国とイランの停戦協議が順調に進行する可能性が高いわけではない。米国 はイランに対し停戦協議に向けた条件としてホルムズ海峡の開放、核開発、軍事安全保 障などの15項目の条件を提示したのに対し、イランはホルムズ海峡におけるイランの 主権、賠償金などの5項目を提示している。これら双方の条件はお互いに逆行するもの であり、停戦協議に辿り着く道のりの困難さを窺わせている。 また、トランプ米大統領はイラン側が停戦を求めた、とSNSに書きこんでいるが、 その一方でイラン側はこれを即時に否定したばかりか、6か月間の戦闘の備えを有して いるとしている。これから6か月間、戦闘が継続すれば、米国にとって中間選挙間近ま で戦闘が続く可能性がある。 すでにトランプ米大統領はホルムズ海峡が封鎖された状態であっても米軍がイラクか ら撤収する可能性を示唆しており、戦闘の長期化が米中間選挙に与える影響を危惧して いる可能性も窺わせている。 ただ、米国とイスラエルによるイラン攻撃の結果とホルムズ海峡の封鎖が実施された 経緯から見ると、ホルムズ海峡の封鎖により原油価格の高騰の影響を受けている国々に とって、ホルムズ海峡の封鎖を解決せずにイランを去る動きは米国の自国優先の姿勢を 改めて強く印象付けるものとなる。 第2次トランプ米政権の誕生以降、トランプ米政権による関税の引き上げ、ベネズエ ラの首都攻撃とマドゥーロ大統領の拘束、グリーンランドの領有主張など一連の動き は、トランプ米政権の不確実性を意識させ、米国の信認低下を促す要因となってきた。 それが米利下げ観測の後退と同時にイランへの攻撃とその長期化懸念を受けて有事の ドル買いが再燃した結果、金価格の急落が促されるに至った。ただ、今回の戦争終結に 向けた流れのなかで、トランプ米大統領による発言やSNSへの書き込みが同大統領の 不確実性に対する意識を再び高めかねない。 イラン情勢の沈静化が期待されていることで原油価格が下落し、経済不安も緩和され ている。また、トランプ米大統領による2〜3週間以内に終結する、との発言から4月 半ばにはイランへの攻撃は終結するのが基本路線となってくるだろう。 これに伴いインフレ懸念が後退するなかで、金を求める動きが高まる可能性がある。 特に、これまでの暴落で売りを消化した可能性が高いことは金価格を下支えする要因に なってくると見られる。トランプ米政権に対する不確実性や米国への信認が再び意識さ れるようであれば、金ドル建て現物は4800ドル台まで値を戻してくる可能性もある 点に注意したい。 MINKABU PRESS
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