コモディティレポート(金)

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
【NY金は米雇用情勢不安とインフレ懸念の後退から底固さを増す】
 NY金12月限は6月24日から8月4日にかけて4000ドル〜4200ドルのレ
ンジを中心とする、もみあいとなっていたが8月5日に急伸し4328.2ドルの高値
を記録。その後、騰勢を維持し12日は6月5日以来の高水準となる4502.7ドル
まで値を伸ばしている。
 4200ドルを上抜いて以降、短期間で4500ドル超えまで上昇の背景はイランと
オマーンとの間でホルムズ海峡を航行する船舶の航路についての協議が最終段階にある
と伝えられ、原油価格が下落し、利上げ観測が後退したことがきっかけとなった。加え
て約1カ月半、4200ドルを抵抗線に低迷した後の反動という側面もある。
 ホルムズ海峡の航行を巡る交渉に関しては、オマーンとイランとの間では話し合いが
進んでいると見られるものの、肝心の米国との交渉に関してはイラン側は直接交渉を否
定している。また、オマーンとの間で新航路の設定で合意に至ったとしても、ホルムズ
海峡の再開にすぐに繋がるものではない、とイラン側は伝えている。
 イランが米国に対し今回の戦闘に対する損害賠償、周辺地域からの撤退、資産凍結の
解除などを含めた戦闘停止に向けた覚書の内容を履行するよう強く求めている。一方、
トランプ米大統領は引き続きホルムズ海峡を封鎖する姿勢を見せていることで、米国と
イランの直接交渉の実現期待は後退している。
 これにより、一時は高まりを見せたホルムズ海峡の通常航行再開期待も後退し今月5
日に75ドル前後で高下していたNY原油9月限は再び上昇傾向を強め11日に84ド
ル台まで浮上した。
 くすぶる中東情勢不安を受けた原油価格の底固い動きはインフレ高止まりに対する警
戒感を強めるものとなり、NY金市場にとってはこれまで上値抑制要因となってきた。
しかし、4200ドル割れでの低迷が1か月余に渡って続いたことで、原油高によるイ
ンフレ高進懸念は既に織り込まれた感が強い。
 その一方で、これまで堅調を維持してきた米国の雇用情勢が軟化傾向を強めているこ
とが新たな材料として意識されている。今月4日発表の6月雇用動態調査(JOLT
S)求人件数は前月から17万8000件減少したうえ、事前予想の750万件も下回
る735万9000件にとどまった。
 また、7月の非農業部門雇用者数も前月の2万人増を上回る8万人増という事前予想
に反し2万3000人の減少に転じたうえ、賃金の上昇率(前月比)も前回および事前
予想の+0.3%を下回る+0.1%の伸びにとどまったことが明らかとなった。
 米雇用統計では、医療・社会福祉部門や人工知能(AI)の世界的な需要増により建
設部門では労働者数の増加が伝えられるなど、一部の部門の雇用情勢は強気を維持して
おり、弱気一辺倒の内容ではない。とはいえ、ホルムズ海峡の通常航行再開を巡る交渉
が難航するなかで原油価格が再浮上していることでインフレ率の高止まりが見込まれ
る。インフレ率の高止まりが見込まれるなかでの賃金上昇率の停滞は、実質賃金低下の
可能性を高める要因となる。
 また、米国のインフレ高進は、原油の高止まりだけでなく、トランプ米政権による関
税政策、旺盛なAI需要を受けた電子機器類の価格上昇、と複数の要因が絡んだ結果に
よるものとなる。
 そのため、中東情勢不安が後退しNY原油価格が下落しても米インフレ率に与える影
響はごく一部にとどまると見られる。米7月の消費者物価指数(CPI)の前年同月比
は前月の+3.5%から+3.4%にやや低下し、インフレ鈍化傾向を示したが、米国
のインフレ率は米連邦準備理事会(FRB)が目標とする+2.0%を依然として上回
っている。
 これまでのインフレ高進下でも堅調な雇用が維持され賃金の上昇がインフレ高進によ
る影響を相殺してきたことが米国の消費の伸びを支えてきていた。しかしながら、雇用
情勢に軟化傾向が強まっていることや賃金の伸びが抑制されていることは、インフレ高
止まりのなかで消費意欲が後退する可能性が高まっていることを示唆する。
 米連邦準備理事会(FRB)のウォーシュ議長は物価の安定に強い意欲を見せてきて
いるが、雇用の軟化傾向が見られる中での利上げは米国内総生産(GDP)の70%程
度を占める個人消費を減退させかねない。
 11日時点のCMEのFedウォッチでは9月利上げを見込む比率は46.1%に低
下。12月時点での利上げを見込む比率も75.5%となっている。NY金は利上げ観
測が重石になっての低迷が続いてきただけに、ここにきて利上げ観測が後退しているこ
とで今後も4450ドル前後を下値支持線とする底固い動きが続くと見られる。
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