【NY金は米長期債利回り押し上げ圧力と米財政悪化懸念に挟まれもちあいへ】 NY金12月限は今月19日に急伸した後も騰勢を維持し25日に4755ドルと5 月15日以来の高値まで浮上した。その後は反落に転じ、26日は終値で4700ドル を割り込んでいる。 NY金が急伸したのは、19日に行われた米財務省による米長期債の買い戻し規模の 倍増発表がきっかけとなった。従来は1回あたり20億ドルを上限としていた残存期間 が10〜20年、20〜30年の固定利付債券の買い入れ額を9月9日〜11月4日の 期間は40億ドルに倍増する、と発表したことで金利が低下すると同時に、米財務省の 金利上昇に対する警戒感が意識されたことが利上げ観測に上値を抑制されてきたNY金 の上伸を促した。 米長期債買い戻し増額発表の後も金が騰勢を維持したのは、米財政悪化が警戒される なか安全な投資先としての金の役割に対する意識が高まったことが背景となっている。 米議会予算局(CBO)は米国の26年赤字見通しを2月の当初予想を2000億ド ル上回る2兆1000億ドルと試算していることを明らかにした。また米国の月財政収 支は赤字額は過去最大となる4320億ドルに達していたことが明らかとなっている。 この米財政悪化は米ドルに対する信認を低下させると同時に金に対する逃避買い需要 を刺激するものとなり、NY金12月限は4755ドルまでの浮上が促されている。 ただ、その後は反落に転じており、NY金のここからの上げ余地は限られていると見 られる。米長期債の利回りには引き続き根強く上昇圧力がかかると見られるからだ。 米長期債の利回りは今年6月末以降は上昇傾向が強まり7月上旬には5%台を記録。 その後も上昇傾向を保ち8月18日に2007年以来の高水準 となる5.337%台 に達した。米財務省の長期債買い入れ規模の倍増が発表された後に軟化しながらも5. 1%台と高水準を維持している。 米30年債の利回りは2006年から2007年にかけて5%台を前後して推移した 後は5%を下回る水準での推移が続き、2020年には1%台まで低下していた。その 後、2022年から2023年にかけて急浮上しながらも4%台での高下にとどまって いたため、5%という現在の水準は過去20年の中では高水準にあたる水準となる。 今年6月から8月にかけてこの高水準まで利回りが上昇したのは、米国とイランの交 渉が難航するなか、一時は和らいでいた中東情勢不安が再び高まって原油価格が上昇し ていること、トランプ米政権による関税政策、世界的な人工知能(AI)需要の増加を 背景とした半導体価格の上昇が電子機器類の価格上昇を促していること、でインフレが 高止まりしていることが一つの要因となる。 また、高齢者に対する医療保障などの増加、そしてトランプ米政権による大型減税も 財政悪化を促す要因になっている。過去最大の規模まで財政悪化が進んでいることで米 長期債には引き続き金利の上昇圧力がかかってくると予想される。 さらに世界的な人工知能(AI)需要を受けて積極的な設備投資が続くなか、企業側 が資金調達のために積極的に社債を発行していることも米長期債の利回り高止まりの背 景となっている。米国の投資適格社債の利回りは米長期債を基準に企業の信用リスクを 加味した水準となるが、8月時点では5%前後で推移している。 これらの社債が米国債と競合する形となっていることが、米長期債の利回り低下を妨 げる一因となっている。特に、前述のようにインフレ高止まりや米財政悪化といった複 数の要因が絡み合っているだけに、米長期債には引き続き利回り上昇圧力がかかった状 態が続くと予想される。 米財務省による金利上昇に対する警戒感は米利上げ観測を後退させるうえ、米財政悪 化に対する警戒感は安全資産としての金需要を刺激する要因となる。それだけにNY金 には引き続き根強い買い気が見られると予想される一方で、米債券の利回りが高水準を 保つ可能性が意識されることはNY金市場にとっての重石になってくると見られる。 8月に入ってからの急伸で5月半ばから6月下旬にかけて記録した下げ幅を概ね相殺 したが、米債券市場に利回りが30年債で5%割れ、10年債で4.5%台前半まで低 下しない限り、リスク買い資金がさらに金市場に流入することは考えにくく、上値は抑 制されそうで、4600ドル台でのもちあいへのシフトが予想される。 MINKABU PRESS
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