NY金12月限は8月25日に4755ドルまで上昇した後は急落に転じ、今月1日 に4369.7ドルと8月14日以来の安値まで軟化。2日は8月7日以来の安値とな る4329.2ドルまで値を落とした。安値で買い拾われプラスに転じたが、8月26 日から9月2日までの下落で8月19日から25日にかけての上げ幅を相殺している。 急落の背景は日米両国での長期金利の上昇が背景となっている。米国の30年債は8 月18日に5.321%と2007年以来の高水準まで上昇。この金利の上昇に対し、 米財務省が警戒感を強め、今年9月9日から11月4日にかけての期間内は長期債の1 回あたりの買取規模の上限をそれまでの20億ドルから40億ドルへと倍増させること を発表。 この発表を受け米利上げ観測が後退したことが金価格の急伸を促した。しかし、その 後は中東情勢の見通し不透明感から原油価格の高騰が続き、インフレ高進に対する警戒 感が強まったことがきっかけとなって反落に転じた。 米国とイランの戦闘に関しては、6月に60日間の停戦で合意し覚書に署名した。だ がホルムズ海峡の通常航行再開に向けた話し合いのなかで見解の相違が浮き彫りとなっ た結果、協議は難航。9月1日に覚書による60日間との停戦期限が終了したことで米 国とイランの攻撃の応酬が激化するなかNY原油価格は急伸し、9月1日に5月21日 以来となる90ドル台に到達している。 原油価格の高騰はインフレ高進観測を強めているが、これは複数ある米長期債の利回 り上昇の原因の一つとなる。8月26日に米商務省が発表した米国の7月個人消費支出 (PCE)の前年比は事前予想の+3.6%を上回る+3.7%となった。これは米連 邦準備理事会(FRB)が目標とする2%のインフレ率を依然として大きく上回る水準 となる。 インフレ高進は、前述の原油価格の高騰のみならず、トランプ米政権による関税政 策、世界的な人工知能(AI)需要の増加を背景とした半導体価格の上昇が電子機器類 の価格上昇なども要因となっている。今後もFRBの目標とする水準まで安定的に低下 に向かうことを予想し難い状況にある。 FRBのウォーシュ議長は8月28日に行われたジャクソンホール会議の講演で物価 の安定に注力姿勢をより強く示しているが、その後も原油価格の高騰が続いている。そ のため、FRBによる利上げ観測に加え長期債の利回りにも上昇圧力が高まっている が、これは金利による差益を産まない金にとっての弱材料となる。 また、この利上げ観測に加え米財政悪化に対する警戒感も長期債の利回り上昇を促す 要因になっているが、長期債に利回り圧力がかかっているのは米国だけではない。米国 と同様に日本の財政悪化が警戒されるなか、日本国内でも10年債の利回りは9月1日 に1996年9月以来となる3%の大台を記録。 原油価格の高騰やトランプ政権による関税引き上げ、世界的なAI需要の影響が世界 規模に及んでいることで金融引き締めの動きが広がると予想されていることが、日米両 国のみならず、ドイツ、フランスでも長期債の利回りが上昇するなど、長期債利回りの 動きは世界的に見られている。 2日は反発に転じたNY金だが、急落後の反動による動きと見られ、高値からは大き く値を落として取引を終えるなど、上昇に対する抵抗の強さも窺わせている。財政悪化 に対する警戒感や、中東情勢の見通し不透明感が強まるなかでの原油高やトランプ関 税、世界的なAI需要を受けたインフレ高進の動きを受けて米国で強まった長期債の利 回り上昇の動きの世界的な広がりは今後もNY金市場にとっての上値抑制要因になって くると見られる。NY金12月限は4500ドルが近くづくと頭が重くなる、上昇に対 する抵抗を見せる動きが続きそうだ。 MINKABU PRESS
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