NY金指標限月の期近12月限は9月2日に4329.2ドルまで下落した後に買い 戻され4558.5ドルまで浮上したものの、再び売り直されて8日に4500ドルを 割り込んだ。9日は買い戻されたが、20ドル程度の上昇にとどまり、上値の重さを窺 わせる動きが続いている。 米10年債の金利上昇を受けて8月18日に米財務省が今年9月9日から11月4日 にかけての期間内は長期債の1回あたりの買取規模の上限をそれまでの20億ドルから 40億ドルへと倍増させることを発表したことで上昇したが、その後、この上げ幅を完 全に相殺。現在は8月上旬から半ばにかけての水準での高下が続いている。 既に米財務省の金利上昇に対する警戒感を織り込む一方、9月15〜16日に開催さ れる米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ観測に対する警戒感が強まってい る。利上げ観測が上値を抑制する要因として意識されているだけに、NY金の足取りは 頭重い。特に上値を抑制する要因になっているのが、原油価格の高騰を背景としたイン フレ高進に対する警戒感だ。 米国とイランの間では6月に交わされた最終的な戦闘終結に向けた覚書の期限を迎え た後もその延長は行われていない。それどころか、9月に入ってから両国の攻撃の応酬 は激しさを増し、米国とイランによるタンカー攻撃も行われていると伝えられている。 また、イエメンの新イラン武装組織がサウジアラビアの石油施設に大規模攻撃を行った ことも報告されるなど、中東情勢はますます厳しさを増している。 中東情勢不安を受けてNY原油10月限は8日に94.73ドルに達して一代高値を 更新。9日は96.92ドルを記録し、連日の一代高値を更新し、上伸の動きを維持。 FRBのウォーシュ議長は8月28日にジャクソンホール会議の基調講演において物 価の安定に注力姿勢をより強く示しているが、7月時点の個人消費支出(PCE)の前 年比ですら事前予想の+3.6%を上回る+3.7%に達していたため、その後の原油 価格高騰によりインフレさらに高進している可能性が高い。 また、インフレ高進を促す要因として、トランプ政権による関税引き上げ、世界的な 人工知能(AI)需要の増加、天候不良による穀物価格の高騰などが台頭しており、中 東情勢が落ち着きを見せたとしても、インフレ高進に歯止めがかかるか見通しに不透明 感が強い。 今後のインフレ高進が警戒されるなか、米雇用は8月に入っても底堅さを維持してい たことが明らかになっていることも、利上げを後押しする要因になり得る。利上げを後 押しする要因が目立つなか、米長期債の利回りも上昇し10年債の利回りは8日に20 23年11月以来の高水準まで上昇した。 長期債の利回り上昇は、金利による差益を産まない金にとっては利上げ観測と同様に 上値を抑制する要因になる。特に世界的に長期債の利回りが上昇傾向にあることは、引 き続きNY金市場の上値を抑制する要因になってくるだろう。 その一方で、利回り上昇の要因の一つとして財政悪化に対する警戒感があることや、 ドル離れの動きが見られていることは、NY金市場にとっての買い支援材料視される可 能性があるため、NY金市場は必ずしも弱気で運ばれるとは予想し難く、2日に付けた 安値4329.2ドルを大きく下抜く可能性は低いと見られる。 CMEのFedwatchで9月利上げを見込む比率は9月8日時点で62.4%と なっていることでNY金市場は引き続き上値を抑制されそうだ。米財務省による長期債 買い入れ規模の引き上げに対する反応が限られたことも米インフレ高進観測の根強さを 示唆するなか、NY金12月限は4500ドル台半ばを抵抗線とする一方、4330ド ルが近づくと買い戻されることになりそうだ。 10日に8月の米生産者物価指数(PPI)、11日に米消費者物価指数(CPI) が発表される。内容次第では15日〜16日のFOMCでの利上げ観測を後退させる可 能性もあるため、その内容が注目される。 MINKABU PRESS
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