プラチナは上値を抑えられる、米利上げ観測や原油高、AI開発減速で

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
 プラチナの現物相場は9月、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ観測後退を受けて
押し目を買われ、6月3日以来の高値1925台ドルを付けたが、米雇用統計で予想以
上の改善が示されたことや米インフレの伸び加速、原油高を受けて上げ一服となった。
米財務長官がイランに対する制裁措置強化見通しを発表したことや米イランの武力衝突
が続くなか、トランプ米大統領がイラン戦争は11月の中間選挙直後に終結するとの見
通しを示した。イエメンの親イラン武装組織フーシ派がサウジアラビアを攻撃し、紅海
沿岸を制圧したこともあり、イラン戦争は長期化するとの見通しが強い。米ゴールドマ
ン・サックスは中東でのタンカー攻撃激化なら原油相場は120ドルまで上昇するとの
見通しを示している。
 8月の米雇用統計によると、非農業部門雇用者数は16万2000人増加し、事前予
想の5万6000人増を大幅に上回った。前月は2万3000人減から2万1000人
増に上方修正された。失業率は4.1%で前月と変わらず。労働市場の予想以上の改善
が示されたことを受け、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ観測が戻った。一方、8
月の米生産者物価指数(PPI)は前年比5.4%上昇と前月の4.8%から伸びが加
速し、事前予想の5.3%上昇を上回った。エネルギー価格の上昇が主因となった。ま
た米消費者物価指数(CPI)は同3.4%上昇と前月から横ばいとなったが、前月比
では0.4%上昇と前月の0.1%から伸びが加速した。CMEのフェドウォッチで
は、今夜の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが決定され、年末にかけてさら
に利上げするとみられている。
【米財政悪化懸念やAI開発減速も上値を抑える要因】
 米財務省は債務総額が8月18日時点で40兆ドルを突破したと発表した。債務総額
は第1次トランプ政権が発足した2017年1月時点の19兆9500億ドルから倍増
し、財政危機に対する懸念が高まった。米国債の利回り上昇を阻止するため、米財務省
は長期国債の買い戻し倍増を発表し、利回りが低下する場面も見られた。しかし、トラ
ンプ米大統領が中間選挙を控えた共和党大会の演説で、共和党が多数派を維持すれば、
全ての成人に5000ドルの「トランプ配当」を支給すると述べた。米議会が承認した
場合、約1兆2000億ドルの費用が発生する。米大統領のばらまき政策に対する懸念
や原油高を受け、米10年国債利回りは14日、5%を一時突破し、2023年10月
以来の高水準となった。米国の財政危機に対する懸念は貴金属の投資需要を促す面もあ
るが、債務が膨れ上がり、米国債のクラッシュとなれば換金売りが進む可能性が出てく
る。
 米アンソロピックのダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)は12日に発表した
エッセイで、「人工知能(AI)モデルの能力を向上させるペースを落とさねばならな
い」との見方を示した。イーロン・マスク氏やOPENAIのサム・アルトマンCEO
も同調した。今回のAI開発減速論のきっかけは7月にOPENAIの社内で起きた事
件だった。サイバー攻撃能力を評価するため、隔離環境で動かしたAIモデルが未知の
脆弱性をみつけ、外部インターネットに接続し、他のサーバーに侵入した。今回のAI
開発減速論ではモデルの安全性を高め、他者が確認する時間を確保するとしている。ト
ランプ米大統領は「中国が利益を得るだけ」とAI規制強化論をけん制しており、今後
のAI関連の株式の動向や協議の行方を確認したい。株安に振れると、プラチナの上値
を抑える要因になる。
【米英のプラチナETFに投資資金が戻る】
 ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)の四半期報告によ
ると、今年のプラチナは8トンの供給過剰が予想された。プラチナETF(上場投信)
からの資金流出が反転し、上半期の17トンの供給過剰が部分的に相殺される見通しと
なった。総供給量はリサイクルの増加を受けて前年比4トン増の229トン、総需要は
前年と比較して投資需要が大幅に減少したため、同49トン減の220トンと予想され
た。
 プラチナETF(上場投信)残高は9月14日の米国で37.86トン(7月末
35.83トン)、11日の英国で10.00トン(同9.84トン)、南アで
4.60トン(同4.75トン)となった。安値から戻し、米英で増加したが、レンジ
相場となり、南アで減少した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報
告によると、9月8日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1万
5976枚(前週1万5000枚)に拡大し、6月2日以来の高水準となった。ただ米
連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが決定されると、ドル高に振れ、利食い売り
が出るとみられる。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
*16日、Yahoo!ファイナンスに掲載された記事を再配信します。

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