【NY金は米金利上昇でも高止まりが示唆する市場のセンチメントの変化】 NY金12月限は10月6日に1823.5ドルまで値を沈めた後、イスラエルとハ マスの軍事衝突をきっかけに急浮上し20日には8月1日以来の高値となる2009. 20ドルまで上昇した。 真相は不明ながら病院の爆撃など民間施設への攻撃に対する非難が高まる一方で、イ スラエルがガザ地区への地上侵攻を予定していることが緊張の激化懸念を強めたことが NY金を約80ドルを超える上げ幅を記録し2000ドルの節目まで押し上げる要因と なった。 この紛争が中東地域を巻き込む紛争に発展することへの警戒は高まるなか、金価格の みならずNY原油価格も押し上げられ、紛争発生直前の6日に付けていた80〜81ド ルという価格帯から10月20日には89.85ドルと90ドル直前まで浮上。その 後、やや軟化しながらも85ドル台は維持しており、紛争発生以前よりも値位置を切り 上げた状態にある。 イスラエルがガザ地区の地上侵攻を実施すれば抗争が泥沼化する恐れがあり、この紛 争がいつ終結に向かうのか見通しの付かない状況となっている。これは有事の際に安全 資産としての需要が高まる傾向にある金にとって引き続き強気材料ながら、2000ド ルを突破した後にその水準を下放れたことで、NY金市場ではパレスチナ紛争に対する 懸念はくすぶりながらも、初期のインパクトはすでに織り込まれた可能性が高い。 初期のインパクトを織り込みながらもNY金12月限は1980ドル前後を維持する など高止まりとなっている。これはやはりパレスチナの緊張激化に対する警戒感がくす ぶると同時に、米高金利環境に対する市場の見方に若干の変化が生じた可能性がある。 軍事紛争発生以前にはNY金市場では米国の強気な経済指標の発表を受けた高金利環 境の長期化予想が支配的で、これに上値を抑制される足取りが続いていたからだ。特 に、現時点でも米国の経済指標は米国の好調な経済活動を示すものが目立ち高金利環境 の長期化観測が払しょくされたわけではなく、パレスチア情勢不安がもたらした初期の インパクトを消化したと見られるにもかかわらずNY金が高止まりしていることは、イ スラエルとハマスの軍事衝突激化が警戒されると同時に、米高金利環境に対する意識の 変化が生じている可能性があることを示している。 米長期金利の指標となり、一時は5%台まで上昇していた10年債の利回りは、25 日のNY債券市場では4.95%で取引を終えた。米国では25日に9月新築住宅販売 件数が発表されたが、事前予想の+0.7%を大幅に上回る+12.3%を記録してお り、高金利環境および高インフレにも関わらず、住宅需要の根強さが示されている。 追加利上げの影響で住宅ローンも上昇するなかにもかかわらず旺盛な需要が見られて いることは、タイトな雇用情勢緩和に向けた賃上げの動きが背景となり、この賃上げが 価格に転嫁されることでインフレ率が上昇するという流れが依然として働いていること を示唆している。 それだけに、米国では高金利環境が継続する可能性が高まったと予想されるが、これ までと異なるのはこの予想に対する金市場の反応だ。 高金利環境は金利により差益が生まれる債券や通貨への資金流入を促す要因になる可 能性が高い一方、金利により差益が発生しない金にとっては弱材料となってきた。その ため、強気な内容の米経済指標の発表が続いていることはNY金価格を押し下げる要因 になってもおかしくはない。 おおよそ織り込んだとはいえ、地政学不安がくすぶっていることも下支え要因になっ ていると見られる。同時に高金利環境が長期化することによって深まる米財政不安に対 する意識も同時に高まっていると予想される。 米国では9月末に予算不成立の影響で一部政府機関閉鎖リスクが高まっていたが、1 1月17日までの繋ぎ予算案を可決することで急場をしのいでいる。しかしながら、予 算案を巡る対立はこれまでにも何度も繰り返されており、再び政府閉鎖リスクが浮上す る可能性がある。 特に、追加利上げが繰り返された影響で利払い支出が増加した結果、米国の2023 会計年度の財政赤字は1兆6950億ドル(およそ250兆円)で国内総生産比では前 年の5.4%から6.3%に上昇し、財政悪化が進んでいることが明らかとなったが、 この財政悪化を巡る対立が2024会計年度予算に影響を与えている。 財政悪化に対する懸念は、高金利環境の長期化懸念は以前は金価格の重石となってい たが、次第に安全な投資先としての金需要を刺激するものへと変化していると見られ る。パレスチナ情勢不安がくすぶるなかでの米財政悪化に対する警戒感の強まりによ り、金価格が底意を強める可能性が高まっている。 MINKABU PRESS
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