【FRBの姿勢は利下げに傾くも市場の思惑との不一致に注意】 NY金2月限は4日に2152.3ドルの過去最高値まで浮上した後に値を落としな がらも2050ドル前後での高下が続く場面が見られた。その後、急落となり1990 ドル台前半に達すると下げ渋り13日は買い戻され2040ドル台を回復し、1900 〜2050ドル台での振幅のある足取りを演じている。 この背景は米金融政策の見通しだ。過去最高値に達した時点では米連邦準備理事会 (FRB)による利下げ着手観測が強まりながらも、強気な雇用統計を受けて利下げ観 測が後退し、これが金価格を押し下げた。前述のように150ドルに近づく大幅な下落 となったのは、利下げ観測の後退に加え、急伸後の反動という側面も強い。 ただ、その後12、13日に開催された米公開市場委員会(FOMC)では、事前予 想通りに金利が据え置かれながらも、今回のFOMCでは利上げに関しては、今後もし あったとすれば、というスタンスが示された。 また、パウエル議長自身も現在は利上げサイクルのピークまたはその近辺に達してい る、との見解を示したこと、ごく初期段階とはいえ利下げについての議論が行われたこ とも明らかとなった。さらにパウエル議長が利上げの長期化がもたらすリスクを警戒し ていることも強調したため、利下げ着手期待が押し上げられ、金現物相場は2030ド ル台まで急騰。 強気とされた11月米雇用統計では非農業部門雇用者数の前月比で増加幅が事前予想 を上回り、賃金上昇率の前月比も10月時点の+0.2%を上回る+0.4%に達して いた。11月の米消費者物価指数(CPI)は総合CPIの前年同月比は前月からわず かに鈍化しながらも変動が大きい食品とエネルギーを除いたコアCPIは前月と同率を 保つなど、雇用情勢には強弱材料が混じりながらも底堅さも窺われるうえ、この底堅さ がコアCPIを下支える要因になっている様子が示されている。 特に11月CPIで注目されたのはスーパーコアと呼ばれる部門だった。スーパーコ アとは、サービス部門から帰属家賃を示すシェルター部門を除いた医療、運輸、教育、 通信、娯楽などの分野となる。これらはサービス部門のおよそ30〜40%程度を占め るが、注目された理由はこれらの部門は概ね人件費で構成されているため、その動向が 雇用における賃金の動向を示すと考えられるからだ。 今回の報告ではこのスーパーコアの前月比は前回の+0.2%から+0.4%に上昇 したことで、インフレ高止まりの可能性が警戒された。ちなみに、住宅関連以外のサー ビスの品目別の動向(前月比)は、医療サービスが前月の+0.3%から+0.6% に、運輸サービスも前月の+0.8%から+1.1%へとそれぞれ上昇している。 とはいえ、運輸サービスの中には上昇が続いている自動車保険が含まれているため賃 金そのものの上昇がスーパーコアの上昇を支えているわけではない点にも注意が必要だ ろう。また、求人件数の減少が明らかとなっているだけに、今後はスーパーコア部門も 軟化に転じる可能性も出てきている。物価高の持続は警戒されるが、雇用情勢の軟化が スーパーコア部門の低下にいつ繋がるかが注目される。 今回のFOMCを受けて次回、1月のFOMCでの金利引き下げを見込む比率は1 0.3%に達しているほか、3月FOMCでの利下げ着手を見込む比率は65.9%に 上昇している。ただ、FRB自身は高金利の長期化に対する警戒感を示しながらも、景 気後退に対する警戒感も強く急速な政策の変更は避けると見られる。 実際、景気見通しについては不透明感が強いとの見方をFOMCの参加メンバーの多 くが示しており、1年先の景気見通しとなる24年10〜12が月の成長率について は、前回見通しの1.5%から1.4%へと僅かに修正にとどまるなど、慎重な姿勢を 崩していない。 すでに来年上旬での利下げ着手を市場は織り込んでいる。また、高金利政策の長期化 による米財政悪化懸念やこれを受けた利下げ着手観測も金価格を押し上げる要因になっ ているだけに、金市場は目先もその勢いを継続する可能性があるが、FRBの姿勢は利 下げ着手に傾きながらも同時に慎重であり、市場が予想しているペースでの利下げ着手 が実現しない可能性がある点を留意しておく必要があるだろう。 MINKABU PRESS
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