プラチナの現物相場は1月、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測後退や中国経 済の先行き懸念を受けて軟調となり、昨年11月以来の安値879ドル台を付けた。そ の後は、中東の緊張の高まりを受けて買い戻されたが、中国恒大集団の清算命令などを 受けて戻りを売られると、2月に入り、再び900ドルの節目を割り込んだ。 米金融当局者の利下げ見通しを受けて米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待が高 まったが、3月に利下げを開始し、年末までに150ベーシスポイント(bp)の利下 げを織り込んだことは行き過ぎとみられた。堅調な米経済指標が発表されると、早期利 下げ観測は後退した。昨年12月の米消費者物価指数(CPI)は前年比3.4%上昇 と前月の3.1%から伸びが加速し、事前予想の3.2%上昇を上回った。米小売売上 高は前月比0.6%増と、事前予想の0.4%増を上回った。自動車の販売やオンライ ン売上高が好調だった。第4四半期の米国内総生産(GDP)速報値は前期比3.3% 増と前四半期の4.9%増から伸びが鈍化したが、事前予想の2.0%増を上回った。 1月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比35万3000人増加し、事前予想の 18万人増を大幅に上回った。失業率は3.7%と前月から横ばい。1月31日の米連 邦公開市場委員会(FOMC)では金利据え置きが決定された。パウエル米連邦準備理 事会(FRB)議長は会見で3月利下げを否定した。また同議長は4日に放送されたC BSニュースの番組「60ミニッツ」で早期利下げに慎重な姿勢を示した。CMEのフ ェドウォッチで3月利下げ確率は16.0%(前月64.0%)に低下し、利下げ開始 は5月か6月とみられている。 一方、地銀ショックに対する懸念が出ていることも当面の焦点である。米地銀ニュー ヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)の第4四半期決算が予想外の赤字とな り、配当を引き下げた。NYCBは昨年破綻した米地銀シグネチャー・バンクから一部 を取得し、貸し出しリスクに対応するためにキャッシュを積み上げた。商業用不動産に 対する懸念を受けて株価が急落した。ただシティグループのアナリストは、最近の銀行 業界に対する懸念が「絶好の買い場」を生み出していると指摘し、楽観的な見方もあ る。 【中国恒大集団の清算命令と当局の株安対策】 中国株が急落するなか、中国人民銀行が預金準備率を0.5%ポイント引き下げな ど、当局は相次いで対策を発表した。一方、香港の高等法院は1月29日、中国不動産 開発大手である中国恒大集団の清算を命じた。長期的には中国経済にプラスになるとみ られているが、同社は3000億ドルの負債を抱えており、中国経済に打撃を与えるこ とが懸念されている。清算は困難なプロセスとなる可能性が大きいとみられており、上 海株の戻りは売られた。証券監督管理委員会(証監会)の王建軍副主席は、財政支出の 適切なペースを維持する戦略を打ち出したが、上海株は引き続き売られ、5年ぶりの安 値を付けた。中国市場は10日から17日まで春節で休場となる。個人消費の行方など を確認することになりそうだ。 【NY市場で大口投機家の買い越しは縮小】 プラチナETF(上場投信)残高は6日の米国で31.57トン(昨年末31.04 トン)、1月30日の英国で12.21トン(同12.18トン)、5日の南アで 11.79トン(同11.89トン)となった。米国と英国で安値拾いの買いが入っ た。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、1月2日時点 のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2万9039枚をピークに縮小 し、23日に8341枚となった。手じまい売り、新規売りが出た。ただ900ドル割 れで買い戻されると、30日に1万1549枚に拡大した。 (MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行) *7日、Yahoo!ファイナンスに掲載された記事を再配信します。
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