M7がトータルリターンの53%占める (4) 【シルバーブラットの「S&P500」月例レポート】

配信元:株探
著者:Kabutan
●企業業績

 ○2024年第3四半期の暫定結果(最終結果は来週にも明らかになる見込み)に基づくと、営業利益と売上高は、ともに四半期での過去最高を更新する見通しで、営業利益率は11.80%と高水準で推移しています。将来の予想はこれまでの水準を維持しており、2025年末まで毎四半期で過去最高の更新が予想されています。

  ⇒暫定結果の段階で、決算発表を終えた498銘柄のうち、359銘柄(72.1%)で利益が予想を上回り、497銘柄中308銘柄(62.0%)で売上高が予想を上回っています。

  ⇒2024年第3四半期の営業利益は前期比で1.4%増、前年同期(不況だった2023年第3四半期)比では13.1%増となり、過去最高を更新しました。

  ⇒売上高は前期比で2.6%増となり、四半期での過去最高を更新する見込みで、前年同期比では7.0%増となっています。

  ⇒2024年第3四半期の営業利益率は2024年第2四半期の11.94%から低下する一方、2023年第3四半期の11.15%を上回り、11.80%となりました(1993年以降の平均は8.46%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。

  ⇒2024年第3四半期中に株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は13.6%となっています。この割合は、2023年第2四半期は12.7%、2023年第3四半期は13.8%でした。

 ○2024年第4四半期については、決算期がずれている19銘柄が発表を終え、そのうち15銘柄で利益が予想を上回り、13銘柄で売上高が予想を上回りました。2024年第4四半期の営業利益は前期比3.3%増と、四半期での過去最高を更新する見通しで、前年同期比では13.4%増が見込まれます。

 ○2024年通年の利益は前年比9.2%増が見込まれており、この予想に基づく2024年の予想株価収益率(PER)は25.2倍となっています。

 ○2025年通年の利益は前年比16.3%増が見込まれており、予想PERは21.7倍となっています。

●個別銘柄

 ○クラウドサービスを提供するオンライン小売企業アマゾン・ドット・コムは、人工知能(AI)向けチップの新たなメガクラスター(米国で生産)が2025年に稼働予定であることを明らかにしました。

 ○自動車大手ゼネラル・モーターズは、ほぼ完成済みの電気自動車バッテリー工場(ミシガン州)への投資を韓国のパートナーであるLGエネルギーソリューションに売却すると発表しました。同社はまた、中国事業の再編と評価損による50億ドルの費用計上と、100億ドルを投資したロボタクシープログラム(クルーズ)の中止を発表しました。

 ○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、金融銘柄のアポロ・グローバル・マネジメント、アプリケーションとソフトウエアソリューションを提供するワークデイ、資本財・サービス銘柄のレノックス・インターナショナルをS&P500指数 に採用し、半導体銘柄のコルボ、金融銘柄のアメンタム・ホールディングス、ヘルスケア銘柄のキャタレントを同指数から除外しました。

●配当金

 ○S&P500指数の2024年第4四半期と2024年通年の配当支払額が、四半期と通年の過去最高を更新しました。

 ○2024年12月の配当支払額は前年同月比32.0%増となりました。11月は同11.0%減、10月は同16.2%増でした。2024年第4四半期の配当支払額は前年同期比7.8%増、前期比6.0%増でした。2024年通年の配当支払額は前年比6.44%増でした(2023年は同5.05%増、2022年は同10.81%増)。

  ⇒12月の配当支払金は前年同月の1株当たり5.39ドルから7.12ドルに増加しました。

  ⇒2024年第4四半期の配当支払金は前年同期の1株当たり18.38ドルから19.81ドルに増加し、過去最高を更新しました。

  ⇒2024年通年の配当支払金は前年の1株当たり70.30ドルから74.83ドルに増加し、過去最高を更新しました。

 ○2024年12月は、増配が38件、配当開始が2件、減配が1件で、配当停止は0件でした。2023年12月は、増配が32件、配当開始が1件で、減配が1件、配当停止は0件でした。

  ⇒2024年は、増配が342件、配当開始が8件、減配が15件、配当停止が2件でした。

  ⇒2023年は、増配が348件、配当開始が11件、減配が26件、配当停止が4件でした。

  ⇒2022年は、増配が377件、配当開始が7件、減配が5件、配当停止が0件でした。

 ○12月の増配率の中央値は、11月の7.14%から5.78%に低下しました。2024年通年では6.25%(11月末時点の年初来でも6.25%)となりました。12月の平均増配率は11月の7.52%から9.22%に上昇しました。2024年通年では8.31%(同8.20%。いずれも2倍以上になった銘柄は除く)となりました。2023年の年間の増配率の中央値は7.01%(2022年と2021年はともに8.33%)、平均値は8.68%(同11.80%、同11.76%)でした。

 ○2024年通年の配当支払い額は前年比6.44%増加しました。これにより、S&P500指数の株主への実際の年間の現金配当は15年連続で増加し、13年連続で過去最高を更新しました。

  ⇒2025年に関しては、(これまでに)2024年の173億ドル相当の配当開始(アルファベット、ブッキング・ホールディングス、メタ・プラットフォームズ、セールスフォース・ドット・コム)と、68億ドル相当の配当停止(インテルを含む)を考慮し、更にS&P500指数構成銘柄の各年の増配の傾向(過去20年間、各年で平均58.5%の企業が増配、対して3.3%の企業が減配)、足元と今後も予想される過去最高益、並びに金利の低下と雇用と基調的な経済成長の力強さを踏まえ、2025年の配当支払い額も過去最高を更新し、実際の1株当たり現金配当額は前年比8%程度増加すると予想します(2024年は前年比6.44%増、2023年は同5.05%増、2022年は同10.80%増)。


●インデックス・レビュー

◇S&P500指数

 12月のS&P500指数は力強い基調でスタートし、最初の週(取引時間中の最高値は6099.97、終値での最高値は6090.27)に終値での最高値を4回更新しました(年初来では57回で、S&P500指数の歴史の中で6番目に多い記録)。しかし、資産の再配分と、ある程度の旧来の利益確定の動きが生じるとともに、金利(およびFRBの追加利下げの回数)を巡る懸念が背後でくすぶる中、そこから下落に転じました。12月は値上がり銘柄数が減少し、値下がり銘柄数を大幅に下回りました。マグニフィセント・セブンが市場の下落を緩和し、リターンに大きく影響して相場を下支えしたものの、S&P500指数は下落して12月を終えました。

 12月にS&P500指数は2.50%と大幅に下落しました(配当込みのトータルリターンはマイナス2.38%)。11月は5.73%の大幅上昇(同プラス5.87%)、10月は0.99%下落(同マイナス0.91%)でした。2024年第4四半期の3ヵ月間のS&P500指数の騰落率は2.07%の上昇となりました(同プラス2.41%)。2024年通年では23.31%上昇(同プラス25.02%)しました。2023年は24.23%上昇(同プラス26.29%)、2022年は19.44%下落(同マイナス18.11%)でした。12月は値上がり銘柄数が減少し、値下がり銘柄数を大幅に下回りました。値上がり銘柄数は僅か54銘柄で、値下がり銘柄数は449銘柄でした(11月は値上がり銘柄数が385銘柄、値下がり銘柄数が118銘柄、10月は値上がり銘柄数が199銘柄、値下がり銘柄数が304銘柄)。12月は21営業日中9日で上昇しました(11月は20営業日中15日)。2024通年では252営業日中143日で上昇しました。12月の1%以上変動した日数は5日(上昇が2日、下落が3日で、1日で2.95%の下落を記録)と、11月の3日(上昇が2日、下落が1日で、1日で2%以上の上昇を記録)から増加し、2024年通年では1%以上変動した日数は50日(上昇が31日(3日で2%以上上昇)、下落が19日(4日で2%以上下落))となりました。

 12月はマグニフィセント・セブンの影響力が大幅に強まりました。S&P500指数が下落したのに対して、これら7銘柄は全体で上昇しました。具体的には、12月のS&P500指数のマイナス2.38%のトータルリターンは、マグニフィセント・セブンを除くと、マイナス3.49%となります。2024年11月5日の米大統領選以降のS&P500指数のトータルリターンはプラス1.95%ですが、マグニフィセント・セブンを除くと、マイナス0.35%となります。また、2024年通年では、マグニフィセント・セブンがリターンの53.1%を占めており、これら7銘柄を除くと、プラス25.02%のトータルリターンはプラス11.75%まで低下します。

 12月は11セクター中3セクターが上昇しました。11月は11セクター全てが上昇、10月は3セクターが上昇しました。12月のパフォーマンスが最高となったのはコミュニケーションサービスで、3.49%上昇しました(2024年通年では38.89%上昇、2021年末比では27.73%上昇)。パフォーマンスが最低だったのは素材で、10.91%下落しました(同1.83%下落、同7.00%下落)。

 12月は値上がり銘柄数が減少し、値下がり柄数を大幅に下回りました。12月の値上がり銘柄数は54銘柄(平均上昇率は5.19%)と、11月の385銘柄(同9.21%)から減少しました。10%以上上昇した銘柄数は10銘柄(同16.72%)と、11月の147銘柄(同15.28%)から減少し、1銘柄(11月は9銘柄)が25%以上上昇しました。一方、12月の値下がり銘柄数は449銘柄(平均下落率は7.86%)と、11月の118銘柄(同4.39%)から増加しました。12月の10%以上下落した銘柄数は120銘柄(同13.64%)と11月の12銘柄(同17.20%)から増加し、2銘柄が25%以上下落しました(11月も2銘柄)。2024年通年では、11月末時点から値上がり銘柄数が減少しましたが、なお値下がり銘柄数を大幅に上回り、値上がり銘柄数が332銘柄(平均上昇率は28.17%)、値下がり銘柄数が169銘柄(平均下落率は16.07%)となりました。

 12月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は0.91%と、11月の0.83%から上昇(10月は0.81%)しました。2024年通年は0.91%で、2023年は1.04%、2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした(長期平均は1.42%)。12月の出来高は、11月に前月比17%増加した後に、同3%減少し(営業日数調整後)、前年同月比では1%増加となりました。2024年通年では前年比2%減少しました。2023年通年では前年比1%減で、2022年通年では同6%増でした。

 12月は1%以上変動した日数は21営業日中5日(上昇が2日、下落が3日)で、市場は2%以上の変動を1日(下落)記録しました。11月は1%以上変動した日数は20営業日中3日(上昇が2日、下落が1日)、2%以上変動した日は1日(上昇)でした。2024年通年では、1%以上変動した日数は50日(上昇が31日、下落が19日)で、2%以上変動した日数は7日(上昇が3日、下落が4日)でした。2023年通年は、1%以上変動した日数が250営業日中63日(上昇が37日、下落が26日)、2%以上変動した日数が2日(上昇が1日、下落が1日)でした。

 12月は21営業日中7日で日中の変動率が1%以上となり、2日で日中の変動率が2%以上、1日で3%以上となりました。対して11月は1%以上の変動が20営業日中6日で、2%以上変動した日はありませんでした。2024年通年では1%以上の変動が83日、2%以上の変動が11日でした。2023年通年では1%以上の変動が113日、2%以上の変動が13日で、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が219日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日でした(4%以上の変動が4日、5%以上の変動が1日)。


[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト


※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。

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このニュースの著者

Kabutan

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