金は内外で史上最高値を更新、米国の関税で先行き不透明感

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
 金は米国の関税を受けて内外で史上最高値を更新した。ドル建て現物相場は2844
ドル、JPX金先限は1万4202円を付けた。トランプ米政権の政策でインフレ高止
まりが見込まれ、米連邦準備理事会(FRB)の利下げペースが鈍化したことは上値を
抑える要因だが、関税発動で先行き不透明感が強く、金に逃避買いが入りやすくなって
いる。イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦が実現する一方、ウクライナでの戦闘が
続いていることも支援要因である。ただトランプ米大統領はロシアのプーチン大統領と
停戦交渉する見通しであり、交渉の行方を確認したい。金の独自材料では、中国人民銀
行の金買いが再開されたことが価格を押し上げる要因である。一方、ニューヨークの指
定倉庫在庫が急増した。昨年の米大統領選以降、1月末時点で88%増の3229万
0384オンス(1004トン)となった。米国の関税発動を控えて輸入が急増したこ
とが背景にある。関税発動後に輸入が止まると、上値を伸ばす可能性が出てくる。
3000ドルの節目を目指すとの見方もあり、高値での買いが続くかどうかを確認した
い。
 トランプ米大統領は1日、カナダとメキシコに25%、中国に10%の関税を課す大
統領令に署名した。ただメキシコのシェインバウム大統領やカナダのトルドー首相と3
日の電話会談で、麻薬の流入阻止に向け、国境警備を強化することで合意したことか
ら、関税発動は1カ月延期された。一方、中国に対する関税は発動。米大統領は欧州連
合(EU)にも関税を課す意向を示しており、EU首脳らはベルギーのブリュッセルで
会合し、対応策を協議した。不法移民の強制送還でも米大統領の関税発言が見られた。
米大統領は1月26日、コロンビアが不法移民を乗せた軍用機の着陸を拒否したことを
受け、25%の関税や制裁などの報復措置を取ると表明した。コロンビアが合意したこ
とで報復措置は回避されたが、トランプ米大統領の交渉に関税を利用するスタイルに変
わりはない。米大統領はBRICS諸国に対しても脱ドルを目指せば100%関税を課
すと警告している。
【米FRBの金利据え置きとディープシーク・ショック】
 米連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を
4.25〜4.50%に据え置くことを決定した。パウエル米連邦準備理事会(FR
B)議長は会見で、トランプ米大統領の政策を判断するのは時期尚早であり、米FRB
の2%のインフレ目標は維持されるだろうと述べた。CMEのフェドウォッチで、米F
RBの次の利下げは6月とみられている。一方、欧州中央銀行(ECB)理事会で、主
要政策金利の0.25%引き下げが決定された。利下げは4会合連続となり、昨年6月
以降で5回目となった。経済成長の低迷が懸念されるなか、一段の金融緩和の可能性が
ある。
 中国のAI開発企業ディープシークは、新型AIモデル「R1」を発表した。R1は
グーグルやオープンAIに匹敵する性能を持つ一方、旧型の半導体を使って開発され
た。開発費用は600万ドルと大手AI企業の幹部1人分の報酬とほぼ同額で開発期間
は約2カ月とされた。オープンAIやソフトバンクグループらが米国で今後4年間、
5000億ドル投資するスターゲート・プロジェクトが発表された直後であり、ナスダ
ックやS&P500が急落し、リスク回避の動きから金ETF(上場投信)に換金売り
が出る場面も見られた。中国政府へのデータ流出リスクやプライバシー保護の脆弱性に
対する懸念から、ディープシークR1の使用を制限する動きが広がり、急落は一服した
が、AIバブルが弾けたとの見方もあり、AI業界の行方も確認したい。
【NY金先物市場でのファンド筋の買い意欲が強い】
 世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、2月3日
に865.63トン(昨年12月末872.52トン)となった。戻り場面で利食い売
りが出ると、1月27日に857.02トンまで減少したが、トランプ米大統領の関税
発言を受けて投資資金が戻った。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細
報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは1月28日時点で
29万9409枚(前週30万0784枚)となった。昨年末の24万7279枚が当
面の底となるなか、新規買い、買い戻しが入って2020年3月3日以来となる30万
枚台まで買い越しが拡大した。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
*5日、Yahoo!ファイナンスに掲載された記事を再配信します。


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