金・銀週間展望=堅調、地政学的リスクや貿易戦争が支援

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
             [3月24日からの1週間の展望]
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   週間高低(カッコ内は日)   2026 年  2 月限  3 月 17 日〜 3 月 21 日
        始 値   高 値    安 値    帳入値   前週末比
  金          14,371    14,736 (20)   14,295 (18)     14,672        +304
  銀           162.0     165.3 (18)    159.5 (21)      159.5        -1.0
 プラチナ       4,647     4,736 (20)    4,588 (21)      4,603         -34
 パラジウム     4,600     4,600 (18)    4,600 (18)      4,600           0
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  NY貴金属(カッコ内は限月)      | 東京外為・株式/NY原油
        21  日終値  前週末比  |        終 値      前週末比
  金       ( 4) 3,021.4     +20.3   | ドル・円    149.50      0.84 円安
  銀       ( 5) 3,348.6     -94.7   | 日経平均  37,677.06       +623.96
 プラチナ   ( 4)   978.4     -34.8   | NY原油 ( 5)  68.28         +1.37
 パラジウム ( 6)   962.20    -11.20  |* ドル・円は15時45分現在、原油は 21日
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【前回のレビュー】
 金は貿易戦争に対する懸念や米インフレ鈍化が支援要因、とした。
 金は地政学的リスクや貿易戦争に対する懸念を受けて買い優勢となった。現物相場は
史上最高値3057.22ドルを付けた。金先限は上場来高値1万4736円を付け
た。
 トランプ米大統領は、イエメンの親イラン武装組織フーシ派に対する大規模な軍事攻
撃を指示した。トランプ氏は、イランにもフーシ派への支援を直ちに停止するよう警告
した。今回の攻撃は、紅海やアデン湾などでフーシ派が繰り返す商船攻撃への報復措置
で、中東での軍事作戦としては、第2次トランプ政権発足後で最大規模。イランは核開
発をめぐる米国との交渉を拒否しており、今後の行方を確認したい。イスラエル軍は、
パレスチナ自治区ガザ北部のベイトラヒヤなどを空爆した。イスラエル軍は、ドローン
(無人機)を操作する2人をベイトラヒヤの部隊に脅威を与える「テロリスト」と認定
して攻撃したと発表した。イスラエルのネタニヤフ首相は、停戦回復に向けた交渉は
「砲火の下でのみ」継続すると表明しており、中東情勢の行方を確認したい。一方、ト
ランプ米大統領とロシアのプーチン大統領は電話会談を行い、ウクライナのエネルギー
施設やインフラに対する攻撃を30日間停止することで合意した。プーチン大統領は米
国が提示する広範な停戦案は受け入れず、米ホワイトハウスは広範な和平計画に向けた
協議が「直ちに」開始されると発表した。ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア
のエネルギー施設に対する攻撃を停止するという米国の提案を支持すると表明した。ロ
シアのウシュコフ大統領補佐官は、ウクライナに関する次回の米ロ間の会合は専門家レ
ベルで24日にサウジアラビアの首都リヤドで開催されると明らかにした。ドイツ連邦
議会は、財政規律を緩和する憲法改正案を可決した。経済成長の回復と欧州集団防衛の
ための軍事支出拡大に向け、数十年にわたり維持してきた保守的な財政方針を転換し
た。ただ欧州連合(EU)の首脳会議では、ハンガリーのオルバン首相の反対によって
ウクライナ支援策を巡って合意に至らなかった。
 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は、トランプ米政権の鉄鋼・アルミニ
ウム関税に対する第1段階の対抗措置発動を4月中旬まで延期すると発表した。米大統
領はEUが米国産ウイスキーへの課税措置を撤廃しなければ、EUから輸出される全て
のアルコール製品に200%の関税を課すと述べており、交渉の行方を確認したい。た
だ米大統領は4月2日に全ての貿易相手国に対する相互関税を発動する方針を示してい
る。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、米国との全面的な貿易戦争が起これば
ユーロ圏経済は大打撃を受け、インフレが急上昇する可能性があるとし、解決策は貿易
の統合を強化することだと提言した。イングランド銀行も、米国の関税政策が原因で貿
易を巡る緊張が高まり、国内外の経済に高度の不確実性があると指摘した。
【金ETF残高は増加】
 世界12カ国に上場している金ETF(上場投信)の現物保有高は20日時点で
1103.45トンとなり、前週末比4.77トン増加した。米国で4.02トン、英
GBSで0.06トン、英ETFSで0.55トン、オーストラリアで0.13トン増
加した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、3月11
日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは23万6100枚となり、前週の
24万3261枚から縮小した。今回は手じまい売りが6960枚、新規売りが201
枚出て、7161枚買い越し幅を縮小した。
 米上院は、共和党がまとめたつなぎ予算案を可決した。民主党のシューマー上院院内
総務をはじめ、一部の民主党議員が賛成に回ったことで、つなぎ予算案は最終採決にこ
ぎ着けた。年度末の9月30日までの期間について予算が確保された。米連邦公開市場
委員会(FOMC)で市場の予想通り、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を
4.25〜4.50%に据え置いた。ただ経済減速が見込まれるなか、年内2回の利下
げ見通しを維持した。米FOMC後は米国債の利回りが低下した。2月の米小売売上高
は前月比0.2%増と、前月の1.2%減(下方改定)からプラスに転じたが、事前予
想の0.6%増を下回った。米新規失業保険申請件数は前週比2000件増の22万
3000件だった。小幅な増加にとどまり、労働市場の安定を示唆した一方で、貿易摩
擦の激化や米連邦政府支出の大幅削減により、見通しには影が差している。事前予想は
22万4000件。
【銀は金堅調も上げ一服】
 銀の現物相場は金堅調を受けて買い優勢となり、昨年10月以来の高値34.20ド
ルを付けたのち、米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えて手じまい売りが出たこと
や貿易政策の先行き不透明感を受けて上げ一服となった。欧米の関税交渉の行方を確認
したい。ただ米大統領は4月2日に全ての貿易相手国に対する相互関税を発動する方針
を示しており、関税引き上げによる先行き不透明感が強い。
 20日のニューヨークの銀ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比106.15
トン増の1万3777.69トンとなった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)
の建玉明細報告によると、3月11日時点のニューヨーク銀の大口投機家の買い越しは
5万9526枚となり、前週の5万3316枚から拡大した。新規買いが新規売りを上
回った。
当面の予定(イベント・経済統計)
24日 ユーロ圏製造業購買担当者景況指数 2025年3月速報(Markit)
    ユーロ圏サービス業購買担当者景況指数 2025年3月速報(Markit)
25日 金融政策決定会合議事要旨公表 1月23-24日分(日本銀行)
    独景況感指数 2025年3月(ifo)
    米ケース・シラー住宅価格指数 2025年1月(S&P)
    米新築住宅販売 2025年2月(商務省)
    米消費者信頼感指数 2025年3月(カンファレンスボード)
26日 英消費者物価指数 2025年2月(国立統計局)
    米耐久財受注 2025年2月速報値(商務省)
27日 中国工業利益 2025年2月(国家統計局)
    米国内総生産 2024年10-12月期確報値(商務省)
    米新規失業保険申請件数(労働省)
    米中古住宅販売仮契約指数 2025年2月(全米不動産協会)
28日 英国内総生産 確報値 2024年10-12月期(国立統計局)
    英貿易収支 2025年1月(国立統計局)
    英小売売上高 2025年2月(国立統計局)
    独雇用統計 2025年3月(連邦雇用庁)
    米個人所得・支出 2025年2月(商務省)
    米消費者信頼感指数 2025年3月確報値(ミシガン大)
    建玉明細報告(CFTC)
MINKABU PRESS 東海林勇行
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