ドル円は一時143円台前半に下落 貿易摩擦と中東情勢、そして米PPI=NY為替概況

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
ドル円は一時143円台前半に下落 貿易摩擦と中東情勢、そして米PPI=NY為替概況

 きょうのNY為替市場、ドル安が優勢となり、ドル円は一時143円台前半まで下落する場面が見られた。貿易摩擦と中東情勢がリスク回避のムードを広げ、ドルは下落。最近のリスク回避はドル安の反応に変化しており、ドルは2022年以来の最低水準に接近している。

 この日発表の5月の米生産者物価指数(PPI)もドルをさらに押し下げた。前日の消費者物価指数(CPI)に引き続き、予想を下回る内容となり、5月はインフレが加熱しなかったことを示している。市場は年内の米利下げ期待をさらに高めているが、FRBの慎重姿勢に変化はないものと見られている。

 貿易摩擦と中東情勢については、トランプ大統領が、今後数週間で数十カ国の貿易相手国に対して一方的な関税を課す意向を表明し、不確実性を高めている。米中協議は合意したといいながらも不透明感から懸念残る。一方、中東情勢の緊張が高まっている。イラン情勢が再び緊迫化しており、イスラエルのイラン攻撃の可能性も出ている。米政府はきのう、中東地域が危険な場所になる可能性があるとして、同地域から米国人を退避させていると発表した。

 ユーロドルは上値追いを強め、一時1.1630ドル付近まで上昇し、4月の直近高値を突破している。2021年10月以来の高値水準。テクニカル的にも買いシグナルが発生しているようで、21日線を完全に上放れており、依然として下落局面を買い戻す意欲があることが示唆されているという。日足チャートの一目均衡表も同様の傾向を示している。

 ユーロ圏のインフレは目標の2%付近まで低下している。ECBはまだ勝利宣言はしていないものの、先週のECB理事会では利下げサイクルが終了に迫っているとの認識を示していた。更なる追加利下げが期待されているFRBや英中銀とは違い、金融政策の格差もユーロを下支えしているようだ。

 ポンドドルは一時1.3625ドル付近まで上昇。2022年2月以来の高値更新となったが、その後は伸び悩む動き。1.36ドル台はまだ上値が重いようだ。

 本日は4月の英月次GDPが発表になっていたが、予想以上のマイナス成長となった。大幅な増税とトランプ関税で大きく縮小した。これを受けて短期金融市場では英中銀の利下げ観測が強まっており、年内の利下げは、2回が改めて完全に織り込まれた。市場は来週は据え置くものの、8月の利下げを想定している。

 月次GDPは前月比0.3%減少。1年半ぶりの大幅な落ち込みとなった。建設は拡大したものの、サービスと製造業が縮小した。1-3月に関税導入前の駆け込み需要が見られていた財の対米輸出は、4月に1997年の統計開始以来最大の落ち込みを記録。リーブス財務相にとって成長鈍化は頭痛の種。大規模な支出計画に必要な歳入の確保が難しくなり、増税を打ち出さざるを得なくなる可能性が高まるとエコノミストは指摘している。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

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