【関税を巡る不確実性やドルへの信認低下がNY金を下支え】 7月に入ってからのNY金8月限は3300ドル台を回復し、3300ドル割れは買 い拾われる動きが続いている。 米トランプ政権は今月9日に相互関税の上乗せ分の通達を開始した。今回の通達が行 われたのは日本・韓国を含めた14か国で、対象国の14カ国は米国にとって貿易赤字 額が多額に当たる国となる。日本と韓国に対する上乗せ分は15%。基本税率10%を 加えた計25%の関税が賦課されると伝えられている。 関税の通達にもかかわらず、NY金は安全資産として買い進まれる動きにならず。4 月に相互関税の発表が行われた時は中心限月が3000ドル前後から3400ドル前 後まで大きく値を切り上げる動きが見られたものの、今回の発表時は軟調な展開となっ たうえ、取引レンジもこれまでと同様の3300ドル水準にとどまった。 関税の発動は8月1日で3週間程度の交渉の余地があるとの見方に加え、今回新たな 関税が通達されたのが14か国に限定されたうえ主要国は日本と韓国に限られた。通達 された関税が4月に通達された税率からかけ離れて引き上げられたものではなかったこ とが金価格が4月ほど上昇しない背景と見られる。 そのため、今回の関税上乗せ分の通達を受けても金を安全資産として買う動きは限ら れた。ただ、その一方でNY金8月限が3300ドルを大きく割り込むことなく推移し ている点に逃避買い需要の根強さも窺わせている。 米トランプ政権は今回の関税上乗せ分の通達において、分野別の関税については交渉 の余地はない可能性をしており、8月1日までの交渉で引き下げられる可能性がある上 乗せ分とは異なり、自動車などへの分野別の関税に関しては引き下げられる可能性は低 いと見られる。 8月1日まで交渉期限が設けられたことは、今後関税が引き下げられる可能性がある うえ、現時点で発表されていない欧州連合(EU)への新相互関税率の発表も注目され るところで、EUへの新相互関税率次第では世界景気不安が高まる、もしくは低下する ことが予想されるなど、依然として米トランプ政権の関税政策には不確実性が含まれて いる。 この不確実性はある程度織り込み感があるため、金価格が一代の高値を更新し続けた 時期のように活発に安全資産を求める動きを刺激することはないと見られるが、逃避買 い需要を支える要因になってくると見られる。 さらに注目されるのが、米トランプ政権が銅に50%、医薬品に200%の関税賦課 方針を新たに明らかにした点だろう。この新たな関税賦課は米経済、世界経済にマイナ スの影響を与えることが予想され、逃避買い需要をより根強くすると見られる。 特に関税の上乗せ分の発表のタイミングで銅および医薬品に対する関税引き上げの発 表およびその施行までに1年〜1年半の猶予を設けるとしていることは、米国の関税政 策は不確実性を残した状態があと1年程度は続くことを意味し、米政権に対する信頼性 の低下を促す可能性がある。この信認の低下はドル離れの動きとなって現れているが、 金市場においては安全資産を求める動きを下支える要因となっている。 なお、米政権は関税を引き上げる一方、7月4日には減税恒久化を含んだ一つの大き な美しい法案(OBBBA)が可決されている。米議会予算局(CBO)は同法案が実 行された場合、今後10年間で財政赤字は3兆4000億ドル増になると試算するな ど、同法案により米政府の財政悪化は避けられないとの見方が強く、これも米政権およ びドルへの信認低下を促す要因になると見られる。 依然として一代の高値に近い水準での高下が続いていることで、NY金がここから更 に値位置を切り上げていくほどの手掛かりや勢いには乏しい状況にあるとはいえ、次々 と不確実性が浮上する米トランプ政権により安全資産を求める動きはより底堅さを増 し、NY金8月限は3300ドル台を維持する可能性が高い。ただしテクニカル要因を 背景にしたトレーダーや投機家の手じまい売りには警戒したい。 MINKABU PRESS
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