【NY金はインフレ加速化の可能性を受け高値安定】 NY金8月限は今月14日以降、上値重く推移しているが、3300ドルが支持線に なり、上値の重さと同時に下値の堅さが感じられる動きが続いている。 7月7日の週は米政権による関税の上乗せ分の通達が開始された。発動日の8月1日 までの交渉の余地が残されながらも、日本、韓国、欧州連合(EU)、カナダと主要国 への相互関税率が明らかとなったことで関税引き上げによる米国と他諸国との間での貿 易摩擦激化が根強く警戒されている。 米関税政策による影響は引き続き米国内でも見られている。15日に米労働省が発表 した6月消費者物価指数(CPI)の前年同月比は、前月に記録した伸び率+2.4% を上回る+2.7%だった。 6月のCPIは総合、変動が激しい食料品およびエネルギーを除いたコアCPIにつ いても事前予想にほぼ一致した。前月に比べて伸び率が上昇したのは、米トランプ政権 による関税引き上げ前に行われた駆け込み輸入によって確保された在庫の消化が進み、 高い関税が賦課された商品が出回り始めたことが影響していると見られる。 一方、16日に発表された米生産者物価指数(PPI)は事前予想の+0.2%を下 回る横ばいとなった。この結果がディスインフレ傾向の継続ととらえられたことも一因 となり、米株高となったが、内訳は、モノの価格の+0.3%に対しサービス価格は −0.1%と、モノとサービスとで異なる動きが見られている。 米トランプ政権の関税政策を受けて、商品価格の値上がりを抑制するために企業側は 関税発動前に在庫確保のための駆け込み輸入の動きを見せたほか、関税発動以降はサー ビス価格を調整することによって関税上昇分を相殺してきた。6月のPPIからも上昇 するモノの価格をサービス価格を低下させることによって消化している可能性が見受け られる。 サービス価格の低下は賃金の抑制に繋がる恐れがあり、モノの価格が上昇するなかで 賃金が抑制される動きが、米国の個人消費にマイナスの影響を与える可能性が懸念され る。 また、モノの価格の上昇が見られていることは将来的にインフレ加速化の可能性が高 い。特に8月1日以降はこれまで停止されていた相互関税の上乗せ分が発動されるだけ に、モノの価格が受ける上昇圧力はさらに強まると予想される。 モノの価格上昇をサービス価格を抑制することで調整する動きが強まれば米実質賃金 の低下が促されかねない。インフレの加速化が抑制されても、サービス価格の引き下げ で対応する状況が続くようであれば米雇用情勢に悪影響を与えると同時に米経済不安が 強まり、結果として安全資産を求める動きが引き続き見られるだろう。 なお、米国の今会計年度(24年10月/25年9月)の関税収入は単一会計年度で 初めて1000億ドルを突破した。また、ベッセント米財務長官は今年通年の関税収入 は3000億ドルを超えてくるとの見通しを示している。 米国では7月に入り大型減税・歳出法案である1つの大きい法案(OBBBA)が可 決したが、この法案成立に伴う減税分は関税の引き上げによって補われることが見込ま れる。 そのため、米政権にとっての関税引き上げは財政面から見ても重要な政策であり、大 型減税の影響をある程度、相殺するための関税率が必要とされている以上、8月1日ま での交渉期限が設けられているとはいえ、今後の交渉によって関税率が大幅に引き下げ られる可能性は見込み難い。 米関税政策によりOBBBAによる財政悪化は懸念されているほどには拡大しない可 能性があるが、今後はインフレ加速化が見込まれ、これが米経済に与える影響や米連邦 準備理事会(FRB)が利下げを見送る可能性が高まる状況は金市場にとっては強気材 料として受け取られる可能性が高い。NY金8月限はこれまでと同様に3300ドルを 下値支持線とする高値圏でもみあいを継続すると予想する。 MINKABU PRESS
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