【予想外の米雇用情勢の軟化や地政学不安がNY金をサポート】 NY金2月限は11月17日から24日までのもちあい圏を上抜き11月26日に終 値で4200ドル台を回復した。その後、堅調地合いを維持し12月1日に4299. 6ドルと10月21日以来の高水準まで浮上。その後、値位置を落としたが4200ド ル台を保つ高止まりとなっている。 NY金は11月終盤に地合いを引き締め、12月に入っても堅調に推移。根強い米雇 用情勢の軟化とインフレ加速化懸念を受けた今月9〜10日にかけて開催される米公開 市場委員会(FOMC)での追加利下げ観測の高まりが堅調地合いの背景だ。 米政府機関の一部閉鎖解除以降、経済指標の発表が再開され、10月時点の内容の経 済指標の発表が多くを占める状態が続いている。注目の雇用統計も同様で、当初予定の 発表日は10月3日であったが、政府機関一部閉鎖の影響で見送られた9月分が11月 20日に発表された。 この報告では9月時点での非農業部門雇用者数は前月比で11.9万人増で、事前予 想の5.3万人増を大きく上回った。また、10月分の発表はデータ収集不足が影響し て見送られているため、現時点で把握できる米労働省発表の最新の雇用統計は、この9 月時点のものとなる。 ただ、3日に米労働省が発表する雇用統計と同様に注目されるADP雇用統計の11 月分が発表された。前月分では事前予想を上回る増加を見せたものの、今回の報告では 事前予想の2.1万人増に反する3.2万人の減少となり、米雇用情勢が軟化傾向を強 めている可能性を示唆した。 ADP雇用統計は米労働省が発表する内容に完全に一致するわけではないため、米雇 用情勢を示す参考として捉えられるが、それでも事前の増加予想を覆す結果は米雇用情 勢の軟化傾向に対する意識を強めるものとなる。 11月26日に発表された11月の米消費者信頼感指数は88.7で前月の95.5 を下回っており、消費者の景気に対する見方が停滞している様子を既に示していただけ に、雇用情勢の軟化に加え、トランプ関税の価格転嫁が進行するなかでのインフレ加速 化が消費者の景気に対し悲観視する向きを強めているという状況が窺われる。 今月16日に米労働省から11月の米雇用統計が発表される予定。米連邦準備理事会 はこの雇用統計の発表を待たずして公開市場委員会(FOMC)を迎える。雇用の軟化 が警戒されるなかで消費者が景気を悲観視する向きが強まっていることが追加利下げを 後押しする可能性もある。 追加利下げに加えて、地政学不安も金価格を支える要因になってきそうだ。欧州では ウクライナの和平案を巡りロシアと欧州連合(EU)との協議が行われているが、プー チン大統領は欧州との衝突には否定的な見方を示しながらも万が一の時には戦う用意が 出来ている、と語った。 これに対し欧州側はロシア産天然ガスの輸入の恒久的停止を2027年10月末まで に実施することを決定しており、ロシアとEUとの関係の悪化が懸念され、安全資産を 求める動きが金に向けられる可能性がある。 なお、9〜10日に開催されるFOMCでは米政府一部機関の閉鎖が過去最長に渡っ たことで米経済指標の発表が大幅に遅延し最新の状況把握が難航するなか、追加利下げ は見送られる可能性は残されている。追加利下げが見送られると政策遅れに対する警戒 感が強まり、安全資産を求める動きが高まると見られる。 CMEのFedウォッチによると、12月3日時点で12月FOMCでの追加利上げ を見込む比率は89%となっている。前週時点では83.4%だっため、じりじりと追 加利下げを見込む比率が上昇している様子が示されている。 FRBは米経済や雇用情勢を把握するための手掛かりとなる材料はあるとしている。 ただFOMCまでに発表された経済指標が金融政策を決定するには不十分と見なされ、 現状据え置きとされる可能性もある点には注意したい。 据え置きとなれば金市場にはマイナスの影響を与える可能性があるものの、金融政策 遅れに対する懸念が強まる可能性があるうえ、米雇用情勢の軟化やインフレ加速化、そ してこれを受けた消費マインドの悪化の状況が変化するわけではない。 一方、予想されているように追加利下げが実施されれば材料織り込みから利益確定の 動きが広がり、これが価格を下押す要因になってくる可能性もあるが、米雇用情勢の現 状が把握できないことによる不安感や米雇用情勢軟化の可能性、インフレ加速化に対す る警戒感やこれを受けた消費者の米経済への悲観的な見方などは引き続き金を支える要 因になってきそうだ。 2月限は4200ドル台を回復し一代の高値を記録した10月20日以来の水準に達 していることで利益確定の動きが見られる可能性はあるが、根強い安全資産を求める動 きに支えられ、4200ドル台での高下が続くと予想される。
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