コモディティレポート(金)

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
【金は中東不安の長期化や米国内情勢に対する懸念を受け高値圏を維持】
 NY金4月限は今月3日に原油の急騰がインフレ懸念を高めたことやドル買いによる
利下げ観測が後退したことで急反落となり、5123.7ドルまで値を落としてこの日
の取引を終えた。10日は5240ドル台を維持して引けたが、11日は反落となり、
5179.1ドルで引けた。
 2月28日に米国がイランの攻撃を実施してから10日が経つが、この間、イラン最
高指導者ハメネイ師の死亡が伝えられたのに対し、イランは周辺諸国の米軍基地やエネ
ルギー施設を狙った攻撃を展開。カタール、クウェート、アラブ首長国連邦、バーレー
ンなどでイランの攻撃が見られている。
 トランプ米大統領はイランへの軍事攻撃は終結が近い可能性を示唆したが、具体的な
日程は明らかにされていない。また、10日現在は先月28日に開始された軍事攻撃以
降、イランに対して最大規模の攻撃が行われており、現時点ではこの紛争の見通しは不
透明感が強い状態が続いている。

 米軍が近日中に撤収したとしても、イランと周辺諸国との間で最終的な調停まで結ば
れていなければ対立が残されることとなり、米軍無き後の中東情勢不安が懸念されるこ
とになる。特にイスラム教シーア派であるイランと同じシーア派の人々を多く抱える地
域では、イラン情勢の状況次第ではシーア派とスンニ派との間で対立が生じる可能性も
ある。
 イランによる報復攻撃の度合いに差が生じているうえ、それぞれの国の思惑による違
いもあって、現在のイラン攻撃に対する周辺諸国の対応もそれぞれで異なっている。こ
れは団結して立ち向かう動きが乏しいことを意味している。それだけに、米国によるイ
ラン攻撃が終結した後の中東諸国がどのように内乱や紛争を生じさせることなく関係を
再び構築していくか、という課題が残されることとなり、米国によるイラン攻撃終了後
も中東不安がくすぶり続けるリスクが懸念される。
 懸念されるのが、イランによるホルムズ海峡の実質的な封鎖を受けた世界的な石油供
給の引き締まりだろう。3月2日にイラン革命防衛隊(IRGC)がホルムズ海峡の閉
鎖を宣言した同日に世界の外航船腹量の約90%に海上保険を提供している国際P&I
グループ主要12クラブのうち7クラブが3月5日には戦争リスクの補償を停止した影
響から、IRGCの攻撃による損害発生を懸念し、ホルムズ海峡の航行はほぼ停止した
状態にある。
 これが原油の急騰を招いており、NY原油4月限は一時は100ドルを突破した。原
油価格高騰への措置として国際エネルギー機関(IEA)は加盟国での協調石油備蓄放
出を発表したものの、現時点ではその反応も限られたものにとどまっている。
 原油の高騰が長期化するようであれば、軟化傾向を見せている米雇用への影響、トラ
ンプ米政権の関税政策を受け価格転嫁の動きが続くなかでの原油高によるインフレ高進
が警戒される。経済活動を停滞させるこれらの要因を受け、米国では米連邦準備理事会
(FRB)は4月および6月の米公開市場委員会(FOMC)での利下げ観測が後退し
ている。
 NY金市場は、中東情勢不安は安全資産を求める動きを刺激する要因となる一方、利
下げ観測の後退は重石になってくると見られる。トランプ米政権によるイラン攻撃開始
直後には5434.1ドルと1月30日以来の高水準まで上昇した後に値を落としてい
るだけに、目先の買い一巡とも見られる。
 一方、米国内では雇用情勢の悪化が懸念されるうえ、トランプ米政権による国際緊急
経済権限法(IEEPA)に基づく関税に対する違法判決が出た後の関税還付の問題な
どが見受けられる。
 原油高に伴うインフレ高進と利下げ観測の後退は引き続き上値抑制要因になってくる
が、中東情勢不安長期化の恐れや原油供給引き締まり、米国内の懸念要因など不安材料
も意識される状況からNY金の下値は堅く、NY金4月限は目先は5100ドルを下値
支持線にしての保ち合いとなると予想。
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