【NY金は中東情勢不安の再燃とインフレ高進で低迷続く】 NY金8月限は5月28日に4400ドルを割り込んだところで買い戻され4400 ドルを支持線に下値堅く推移した。しかし、6月5日に4400ドルを割り込み、その 後、続落となり10日は昨年11月上旬以来となる4090.1ドルまで値を落として いる。 レバノンとイスラエルが停戦合意に達したと伝えられているが、実際にはイスラエル によるレバノン攻撃が続く一方、レバノンのヒズボラによる攻撃も続けられるなど、レ バノンとイスラエルの停戦合意は事実上崩壊した状態にある。 また、一方の米国とイランも攻撃の応酬が続いているうえ、米国防長官は停戦合意の 条件を整えるとして攻撃予告を行うなど、米国とイランの停戦協議の最終合意が期待さ れるどころかその関係の悪化が警戒される状況となっている。この中東情勢の不透明感 から原油価格は90ドル台に再上昇している。 原油価格が高止まりとなれば、米国内のインフレ高進を促す要因となる。米国の消費 者物価指数(CPI)は今年3月に+3.3%を記録。4月は+3.8%に到達。5月 に関してもNY原油が概ね90ドルを上回る水準で推移する高止まりとなった影響から 4.2%と23年4月以来の高水準を記録した。 その一方で米雇用情勢や製造業は好調を維持。雇用に関しては、世界的な人工知能 (AI)需要の増加やAI関連企業の好調な決算を受けてAIへの投資が活発化してい ることに加え、6月開催のサッカーワールドカップが寄与し、今月5日に発表された5 月雇用統計で非農業部門雇用者数は事前予想の+8万人の2倍以上の+17万2000 人を記録した。 製造業に関しても5月米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景気指数は22 年5月以来、4年ぶりの高水準を記録。4月の製造業新規受注も前月比で+4.8%と 前月比としては約1年ぶりの高い伸びを見せるなど、好調を維持している。 インフレ高進が確認されながらも、雇用統計が強気を維持しているうえ製造業の好調 も確認出来る状況下だが、このインフレ高進が米債券の金利の上昇を促していることも あり、米国では利下げ先延ばし観測にとどまらず、年内利上げを見込む声が増えた。 金利による差益が生まれない金は、同時にインフレヘッジとしての役割も持つが、現 時点では金のインフレヘッジとしての役割に対する意識は薄く、米利上げの可能性に対 する反応が強く見られる状況が続いている。 実際の利益を伴ったAI需要の伸びが引き続きAIに対する旺盛な投資を促すと予想 されるなか、米雇用情勢および製造業は底堅さを維持すると見られる。また、中東情勢 不安の高まりからNY原油が90ドル前後の値位置を維持していることで、米国内では インフレ高進傾向が続くと予想される。 インフレ高進にもかかわらず強気な米雇用及び製造業が保たれ、利上げの可能性を高 めている状況はNY金にとっての弱材料だけに、NY金8月限は4000ドル前後まで 値を落とす可能性を含めた低迷となりそうだ。 なお、4月個人消費支出(PCE)で実質個人消費及び貯蓄の低下が明らかになった ことは、米経済の約70%を占める個人消費に不安感を強める要因であり、今後もPC Eの悪化が続くようであれば経済不安が高まり、安全資産として金を見直す動きも高ま ると見られる。 MINKABU PRESS
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