コモディティレポート(金)

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
【米経済・雇用が好調で米利上げ観測強まり金の上値は重い】
 NY金8月限は6月11日に昨年11月上旬以来の安値となる4046.2ドルまで
下落。その後、急反発に転じ15日は4391.5ドルと今月5日以来の高水準まで浮
上。16日は4300ドル台を維持して高下していたが、17日は買い優勢も引け後に
米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明文がタカ派の内容となり、18日のアジア時
間の時間外取引で急落している。
 米国とイランの停戦協議は米国とイランの攻撃の応酬を受けて行方が危ぶまれたが、
14日にトランプ米大統領が合意が成立したと発表。19日に正式な署名式典がスイス
で開催される予定となっている。
 この停戦合意を受けてホルムズ海峡の開放見通しが立ったことでNY原油は軟調な展
開が続いており、中心限月の7月限は16日に75.52ドルと3月10日以来の水準
まで軟化した。17日に反発に転じたものの、76ドル台で取引を終えるなど上値の重
い動きが続いている。
 米国では、米国とイランの戦闘が開始された2月28日以降、原油価格が急伸し3月
上旬から4月下旬にかけて80ドルを上回る水準で高下したほか、ホルムズ海峡をイラ
ンが実質的に支配しその閉鎖が長引くなかで需給引き締まりが警戒されたため、4月下
旬以降は90ドルを上回る水準まで価格帯が引き上がった。
 また、100ドル台に値を伸ばす場面が見られる高騰が続いたことで、3月から5月
にかけて米消費者物価指数(CPI)は今年3月に+3.3%を記録した後も上昇が止
まらず、4月は+3.8%、5月は4.2%と23年4月以来の高水準に達した。
 5月の米生産者物価指数(PPI)も上昇し、+6.5%と約3年半ぶりの水準まで
上昇し、インフレ高進の様子を見せていた。
 インフレ高進は個人消費意欲を減退させる可能性があるため、個人消費が約70%を
占める米経済の成長が不安視されてもおかしくないが、世界的な人工知能(AI)需要
増によりAI関連企業の決算は好調となった。好調な企業決算に加え、今後の需要増観
測を受けたデータセンターの整備などの設備投資が雇用を産みだし、米雇用は好調を維
持している。
 さらに、5月の米小売売上高の前月比は事前予想の+0.5%を上回る+0.9%と
インフレ高進時にもかかわらず、好調を維持していたことが明らかとなっている。
 米国とイランの停戦協議に関しては、合意の直前と伝えられながらも合意に至らなか
った場面が度々見られてきたことから、19日に正式に署名が行われるまでは実際に停
戦に至るかどうか疑問が残る面もある。しかしながら、インフレ高進下でも雇用、個人
消費が好調を維持してきたことが明らかになったことに加え、これまで経済を抑制し得
る要因となってきた原油高が緩和されていることで、好調を維持している米経済がさら
に押し上げられる可能性が見込まれる。
 米経済が好調を維持すればFRBにとっては金融引き締め政策を実施する根拠が増え
ることとなるが、金利による差益を産まないとされる金にとって上値を抑制する要因と
なる。
 インフレ高進下にもかかわらず米雇用や製造業、個人消費が強気を維持した後、原油
価格が下落していることを受けてタカ派的な姿勢が示されるようであれば、NY金は引
き続き上値を抑制される動きを強いられることになりそうだ。
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