プラチナはもみ合い、リスク回避と米利上げ観測後退で

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
 プラチナの現物相場は10月、米国債の利回り上昇や金急落を受けて約1年ぶりの安
値851ドル台を付けた。その後は中東情勢の緊迫化をきっかけに金が急騰したことが
下支えになったが、リスク回避の動きが出ると、908ドル台で上値を抑えられた。た
だパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の慎重発言を受けて利上げ観測が後退する
と、押し目を買われた。リスク回避の動きと米FRBの利上げ観測後退を受けて850
〜910ドルのレンジを形成したが、当面は中東情勢の行方が焦点である。
 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルを奇襲攻撃
し、中東情勢の先行き懸念が高まった。イスラエルは予備役を招集し、ガザ侵攻を準備
し、米国は空母打撃群を同国近海に派遣した。またガザの市民に対し、南部へ避難する
よう通告すると、約70万人が北部から移動した。イスラエルがガザを空爆するなか、
米国、ドイツ、英国、フランス、オランダの首脳が同国を訪問し、人道支援などを協議
した。ただバイデン米大統領のイスラエル訪問を控えてガザの病院が爆破され、数百人
が死亡すると、アラブの指導者らとの会談がキャンセルされ、地政学的リスクが高まっ
た。欧米が人質解放を優先するため、イスラエルにガザ侵攻を遅らせるよう圧力をかけ
るなか、イランを後ろ盾とする組織が中東の米軍基地を攻撃しており、紛争拡大に対す
る懸念も残っている。イスラエル軍とレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの
戦闘が激化していることも懸念要因である。イスラエルがガザ侵攻を開始し、リスク回
避の動きが強まるようならプラチナの圧迫要因になるとみられる。
 米連邦準備理事会(FRB)が高金利を長期間維持するとの見方を受けて米国債の利
回りが上昇し、米10年債利回りは2007年以来の高水準となる5%台を付けた。た
だ米国債の利回り上昇が景気を抑制するとの見方が出ると、利上げ停止観測が強まっ
た。またパウエル米FRB議長はニューヨークのエコノミック・クラブで行った講演
で、政策決定は「慎重に進める」と述べたことも利上げ停止観測につながった。CME
のフェドウォッチでは、10月31日〜11月1日の米連邦公開市場委員会(FOM
C)で金利据え置きの確率が98.0%(前月72.5%)となっており、ドル安に振
れると、プラチナの下支えになる。
【中国の景気回復期待も下支え要因】
 第3四半期の中国の国内総生産(GDP)は前年比4.9%増加した。第2四半期の
6.3%から伸びが鈍化したが、事前予想の4.4%を上回った。9月の鉱工業生産や
小売売上高も予想以上となり、景気刺激策の効果がようやく出始めたとの見方が出た。
上海プラチナの出来高が安値で増加しており、中国勢の安値拾いの買い意欲が強いこと
もプラチナの下支え要因である。ただ不動産開発大手に対する懸念が残っている。経営
再建中の恒大集団の株式の取引が香港取引所で再開されたが、許家印会長が資産を国外
に移転した疑いで警察の監視下に置かれた。また碧桂園(カントリー・ガーデン)はオ
フショア債の利払いを履行できず、債務不履行(デフォルト)懸念が高まった。不動産
危機の行方も当面の焦点である。
【NY市場で大口投機家が一時売り越しに転じる】
 プラチナETF(上場投信)残高は10月24日の米国で30.21トン(9月末
30.65トン)、23日の英国で13.05トン(同13.16トン)、23日の南
アで11.87トン(同11.99トン)となった。各国中銀の高金利長期化の見方な
どを受けて投資資金が流出した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細
報告によると、10月10日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の取組が36
枚売り越しとなった。8月29日の1万5038枚買い越しをピークとして売り圧力が
強まり、売り方に転じた。10月17日は349枚買い越し。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
*25日、Yahoo!ファイナンスに掲載された記事を再配信します。


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