コモディティレポート(金・白金)

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
【金の動きにようやく追いついてきたNY白金は踏みとどまれるか】
 NY金6月限は4月の米消費者物価指数(CPI)を受けて以降、利下げ着手期待の
高まりから上値を探る足取りを展開し、20日に2435.8ドルの再高値に達した。
その後も転売を入れながらも2400ドル台を維持している。
 米国では4月CPIが物価の伸び悩みの様子を示したうえ、米雇用統計は雇用情勢の
軟化傾向を伝える内容が目立っている。雇用統計が軟化すれば賃金の上昇が抑制される
予想されると同時に、個人消費も停滞する可能性があることが利下げ着手期待を高め、
金市場で買い支援要因になっている。
 その一方で米連邦準備理事会(FRB)当局者は金融緩和には消極的な姿勢を見せて
いるものの、高金利環境が長期化することによって米経済に与える影響が警戒され、こ
れが安全資産としての需要を意識させていることは金市場にとっての強気要因だ。
 金が投資資金の逃避買い需要によって金が上値を探る足取りを演じる一方、他貴金属
は上値を抑制される足取りが続いていたが、5月に入ってからようやく金に連動する足
取りを強めている。
 白金はNY金の高値更新が続いた3月から4月下旬にかけての時期も金の動きに対す
る反応は鈍く1000ドルを下回る水準での高下が続いていた。
 なお、NY白金は過去に2300ドル台まで値を伸ばしたことがあり、2021年に
1368.25ドルを記録したこともある。1000ドル前後の価格水準は、史上最高
値を更新し続けていたNY金の足取りと比べ上値の重さを感じさせるを得ない状況だっ
たと言える。
 特に、3月にはワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシル(WPIC)
が白金は2023年、2024年と2年連続して供給不足になり、今年の供給不足量は
13トンになるとの見通しを示したもののその時点での反応は限られるなど白金市場の
停滞感の強さが浮き彫りとなっていた。
 4月29日に大きく値を伸ばした後は戻り売りを浴びながらも値位置を切り上げる足
取りを演じ、今月10日には1000ドルの上値抵抗線を突破。WPICに続いて英国
の精錬大手、ジョンソン・マッセイが24年の白金は2014年以来、10年ぶりの高
水準となる18.6トンに達するとの供給不足見通しを示したことも手掛かりとなって
更に値位置を伸ばし20日に1105ドルまで値を伸ばしている。
 昨年5月11日以来、約1年ぶりの水準まで値を伸ばしたところで反落に転じてお
り、目先の動きは金に比べると粘り強さに欠ける足取りとなっているものの、昨年6月
上旬以降、約11か月に渡って上値抵抗線としてきた水準を上抜いたことは金市場に集
中していた意識が他市場にも広がり始めている様子を示唆している。
 米連邦準備理事会(FRB)当局者は利下げ着手には慎重な姿勢を崩していない。実
際、CPIの内訳を見ると家賃を含むシェルター部門は低下傾向にあるとはいえ5%台
と、依然として高水準にある。
 また、米雇用情勢の軟化が賃金の伸び悩みを促し、これが消費者の消費意欲の停滞を
招き物価の上昇を抑制する、という流れが示現されるまでには時間を要することが想定
されるが、実際にこの流れが確認出来ない可能性も残されている。それだけにFRB当
局者の利下げ着手に向けた姿勢が慎重になって当然だろう。
 この数日の下落は利下げ着手先取りの動きの修正によるものが主になっていると見ら
れるが、前述のようにNY金市場では利下げが着手されても先延ばしされても強材料視
する動きが見られているため、修正を終えた後の金市場の底意は強いと見られる。よう
やく金に連動する足取りを見せ始めた白金市場もこの金の底堅いと予想される足取りに
追随できるかどうかが注目される。
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