コモディティレポート(金)

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
【NY金は上げ余地を残す】
 NY金12月限は8月20日に2570.4ドルの史上最高値を更新した。22日に
大きく反落し2506.4ドルまで値を落としたが、持ち直し、2550ドルを前後す
る足取りが続いている。

 9月の公開市場委員会(FOMC)での利下げ着手が確実視されるなか、NY金は値
位置を切り上げた。23日に行われたジャクソンホールでの講演会でパウエル連邦準備
理事会(FRB)議長が金融政策を調整する時期が来た、と発言したことを受けて9月
の利下げが確実視されるに至っている。
 さらに同議長はこれまで利下げ着手に対して慎重な姿勢を崩してこなかったにもかか
わらず、今回の講演で利下げを強く示唆する発言を行ったことがハト派な印象を与えた
ことで、先行きの利下げ見通しを強めた。
 CME Fedwatchによると、12月FOMC時点でのフェデラルファンドレ
ート(FF)金利が現在の5.25〜5.50%から1%以上引き下げられていると予
想する比率は76.1%に達している。これは年内3回の利下げ実施を大多数が予想し
ていることを意味する。
 すでに大幅利下げを見込み、これを受けてNY金は高止まりしているのが現状となっ
ているが、懸念されるのは実際に利下げが実施されることによる米経済への影響だ。
 特に直近のデータでみると米雇用情勢は予想以上に弱い可能性が浮上している。8月
2日に米労働省が発表した米雇用統計では非農業部門雇用者数の伸びは事前予想の17
万6000人増を大幅に下回る11万4000人増で大幅な減速となったうえ、失業率
は事前予想の4.1%を上回る4.3%に達した。
 これは、直近3か月の平均失業率が過去12カ月の最低水準を0.5%以上、上回っ
た場合には景気後退局面を迎える可能性が高まる、とするサーム・ルールに該当する内
容となる。
 これに加え今年3月時点の雇用者数が81万8000人もの大幅下方修正となったこ
とも懸念される。7月の厳しい内容の雇用統計に加え、大幅に雇用者数が引き下げられ
て実際の米雇用情勢がこれまで想定されてきたよりも軟化していた可能性が示されたこ
とは、米景気の先行き不安感を強める要因となっている。
 7月の雇用統計に関してはハリケーンの影響による一時的な動きとの指摘もある。実
際に一時的な動きのものかどうかについては8月雇用統計の発表で確認されるだけに、
9月6日に発表される8月雇用統計が注目される。
 この米雇用情勢に対する警戒感はリスク回避の動きを高めると同時に、金市場におい
ては安全資産を求める形で資金の流入を促す要因になり、これが過去最高値近辺となる
2550ドル前後でNY金12月限が高下する背景となっている。
 NY金は史上最高値から値を落としていることもあり、これからの上昇には警戒感が
高まると見られるが、まだ上げ余地を残している可能性がある。金ETF残高が増加傾
向を保ちながらも過去と比較するとまだ低い水準にあることが挙げられる。
 8月27日時点の金ETF残高は856.12トンとなっているが、7月1日時点で
は829.05トン、8月1日時点では845.47トンだったため、この約2か月に
渡って微増傾向を維持している。ただ、昨年8月10日に900トン台を記録していた
点を振り返ると金ETF残高にはまだ増加に向かう余地が十分に残されている。
 今後の米経済指標の内容次第ながら、景気の見通しに不安感が高まる内容の発表が見
られれば投資用としての金需要が刺激され、金ETF市場への資金の流入も促すようで
あれば、再び史上最高値を更新する場面が見られる可能性もある。
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