【強気なADP米雇用統計をきっかけに反落もNY金の下値は強い】 NY金12月限は9月26日に2708.7ドルと指標限月の史上最高値を付けた後 は利益確定と見られる動きもあり、修正安場面を迎えた。2日は20ドル前後の下げ幅 を記録した。 2日発表のADP雇用者数の伸びは事前予想を上回る14万3000人増を記録。強 気な米雇用情勢を示唆する発表が行われたことが金市場の弱材料となった。ただ、AD P雇用者数の伸びも必ずしも強気とはいえない状況にある。2022年、2023年は 時おり40万人を超える増加を見せる月が見られたうえ、20万人を超える増加幅が見 られる月も多かったものの、今年に入ってからの増加幅は最大は3月に記録した20万 8000人のみでそれ以外の月はの増加人数は20万人未満にとどまっており、時間を かけながら雇用者数の伸びが鈍化している様子を示している。 高金利環境の長期化を受けて設備投資など大規模な資本の投下が必要な措置が控えら れてきていることが雇用情勢に影響を与えている可能性が考慮される。今後、米連邦準 備理事会(FRB)の利下げペース次第では引き続き、製造業などの成長が抑制され、 これが雇用情勢に反映されるリスクが残されている。 ADP雇用統計は米労働省が発表する雇用情勢と乖離する結果となる可能性もある。 10月4日に米労働省が発表の統計報告次第では米雇用情勢に対する認識が転換する可 能性があることにも注意が必要だ。それだけに、今回の雇用統計を受けた金の軟調な足 取りは短期で終わることが見込まれる。史上最高値を連日更新し、上値警戒感が高まっ ていたタイミングでの発表だったことが利益確定に向かう理由づけになったと思われ る。 米国の雇用情勢に加え、中東情勢不安が高まっていることも安全資産としての金需要 を意識させる要因になっている。イランがイスラエルにミサイルを発射したことが伝え られたが、これを受けてイスラエルが報復措置を取るようであれば地政学不安が一気に 高まることが予想される。 また、労使交渉の決裂を受けて米東海岸やメキシコ湾では10月1日から労働者のス トが実施されている。9月30日までに新たな労働協約を締結できなかったことが背景 となっているが、このストがいつまで実施されるかによっては、物流が滞ることにより 物価高が再燃する恐れもある。 物価高が再燃するようであれば米経済への影響が警戒されるが、リスク回避の動きを 促すと同時に安全資産を求める動きを刺激することが見込まれ、金市場にとっては下支 え要因になってくるのではないだろうか。 目先はこれまでの続伸後の利益確定の動きに上値を抑制されると予想されるが、不透 明さが残る米雇用情勢、中東の地政学リスク、米港湾労働者のストと逃避買い需要を刺 激し得る要因が浮上していることが金市場の買い支援要因であり、NY金12月限は引 き続き2650ドルを下値支持線にして高下することになりそうだ。 MINKABU PRESS
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