【NY金は米関税政策を巡り大きく高下も下値は強い】 NY金期近6月限は2日に3201.6ドルまで値を伸ばし、一代高値を更新。その 後は急落となり、7日に2970.4ドルと今年3月12日以来の水準まで値を落とし た。しかし、9日に3118.5ドルまで急騰し、3079.4ドルで引けた。 暴騰の背景は米トランプ政権による関税政策が挙げられる。4月2日までは米トラン プ政権による関税引き上げを受けて米国内のスタグフレーション発生の可能性に対する 警戒感や貿易戦争の激化とこれを受けた貿易の停滞、世界経済不安などが背景となって 安全な資産を求める動きが活発化するなか、全世界共通の安全資産とされる金への資金 流入の動きが続いた。 3日からの下落は、米トランプ政権が米国へ輸出しているすべての国に対し、10% の相互関税を設けたうえ、国・地域別の賦課関税率を発表したこと、米国の自動車輸入 関税の25%引き上げを実行したことで世界経済に与える影響に対する警戒感が高まり リスク回避の動きが活発化したことが背景となった。 しかし、トランプ大統領は9日に同日発動したばかりの相互関税の上乗せ部分の90 日停止を発表。これにより貿易活動の停滞や世界経済への影響に対する警戒感からリス ク回避の動きが活発化したことによる暴落後の反動もあって買い戻す動きが活発化して いる。 しかし、今回の相互関税上乗せ分の90日停止によって世界経済停滞懸念が払しょく されたわけではない点には注意が必要だ。5日に発動された一律の10%の相互関税は 継続されているため、米国の輸入価格の10%上昇は免れ得ず、これが米国内の物価上 昇を招くことが予想されるからだ。 米国では3月製造業購買担当者景気指数(PMI)や3月非製造業総合指数の低下、 JOLTS求人件数の縮小など、経済活動、雇用面での弱気な発表が続いている。ま た、3月非農業部門雇用者数は事前予想の14万人増を上回る22万8000人増に達 したが、トランプ関税による景気への影響が警戒され、仕事が見つかるうちに就職する 動きが活発化した可能性があるなど、景気の停滞が警戒される状況が続いている。 このようななかで物価の上昇が余儀なくされた場合にはスタグフレーションが発生す る可能性が警戒され、これまでの一連の輸入関税引き上げに加え、相互関税が維持され る限り、そのリスクは高い状態が続くと見られる。 また、中国からの輸入に対しては125%の関税を賦課するとする一方、中国も米国 からの輸入品に対して84%の輸入関税賦課を発表するなど、米中貿易戦争は激化の様 相を呈している。米国は交渉次第では輸入関税の調整に応じる構えを見せているが、中 国側は最後まで付き合う、としており、現時点では米中貿易戦争に折り合いが付く可能 性があるのかどうか、見通しには不透明感が強い。 さらに関税の引き上げを発表したかと思うとその後に修正や調整、もしくは保留期間 を設けるなどのトランプ政権の関税政策の不安定さも懸念される。不確実性の高い関税 政策の発表はそれが発表通りに発動されるのか調整に向かうのか、見通しに不透明感が つきまとう中では安定的な企業の設備投資も期待し難く、これも景気不安を高める要因 の一つになってくると見られる。 当面の間は相互関税の上乗せ分が停止されることになったとはいえ、トランプ政権に よる関税政策の不確実性はその内容、その後の修正を含めて依然として残されており、 世界経済見通し不透明感がくすぶることになりそうで、引き続き安全資産として金を求 める動きが根強く見られることになりそうだ。 MINKABU PRESS
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