【NY金は米CPIを受けた9月利下げ観測受け、堅調に推移か】 NY金12月限は8月8日に3534.1ドルまで上昇した後は軟化に転じ、12日 には3393ドルまで値を落とす場面が見られた。その後は米利下げ観測が強まるなか 3400ドル台を回復し、底堅さを感じさせる動きが続いている。 12日に7月の米消費者物価指数(CPI)が発表された。総合CPIの前年同月比 は+2.7%で事前予想の+2.8%を下回ったうえ、6月から横ばいとなった。その 一方で変動が激しいエネルギーと食料を除いたコアCPIは事前予想の+3.0%を上 回る+3.1%を記録している。 米国では全ての国からの輸入に対して10%が課される相互関税の基礎部分が4月か ら発動されており、その影響が物価に反映されてくることが予想されたが、蓋を開けて みるとその影響は軽微にとどまっている。 また、事前予想を上回ったコアCPIに関しても全体をけん引したのが+0.8%を 記録した医療サービスと、関税引き上げとの関連性が薄い分野にとどまっている。 関税が引き上げられたにもかかわらず、物価が僅かに上昇にとどまっているのは、企 業の努力によるところもあると見られる。 消費者物価指数を割り出す場合、毎月の小売物価の統計調査がその計算の基となる。 小売物価が上昇すれば消費意欲が減退しかねないが、それを防ぐために品質を落とした り梱包量の引き下げるなどの方法によって小売価格自体をこれまでと同程度に保つなど の企業努力が見られている可能性もある。 これに加え、輸入物価が上昇しても販売量を確保するためにその上昇分を企業側が吸 収することで小売物価が維持されるケースもあると見られる。実際のところは関税の引 き上げが物価に与える影響がどこでどのように吸収されているかの判断が困難な面もあ る。 8月1日からは相互関税の上乗せ分が輸入物価を引き上げると見られるため、今後発 表されるCPIの推移も依然として注目要因となる。相互関税の上乗せ分が発動されて いることが企業収益を圧迫する可能性があり、雇用情勢の悪化に繋がる恐れがある点に は注意が必要だろう。 すでに米7月雇用統計はこれまで考えられていた以上に米雇用情勢が軟化している可 能性を示す内容だったため、相互関税の上乗せ分の発動に伴い8月雇用統計が更に軟化 傾向を見せるようであれば、米関税政策が雇用に与えている影響が危惧される可能性が ある。 一方、今回のCPIを受けて米国では9月利下げ見通しが更に強まりを見せている。 しかしながら、利下げを実施すれば流動性が高まり、これが物価押し上げもしくは下支 え効果をもたらす可能性がある。雇用情勢が軟化するなかでの物価の高止まりは消費意 欲の減退を招きかねず、米経済の見通しには依然として不透明感が強い。 米連邦準備理事会(FRB)としては利下げを判断するのが難しい状況が見込まれる が、FRBの人事移動も利下げ観測を高める一因となって金融市場ではすでに9月利下 げ観測が浸透しているため、金市場では引き続きこの利下げ観測、そして米経済の先行 き不透明感が下支え要因となり、12月限は堅調に推移する可能性が高いのではないだ ろうか。今月12日の安値3379.1ドルが当面の支持線。抵抗線は短期線の5日間 移動平均線が通る3431ドル水準。 MINKABU PRESS
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