貴金属4品週間見通し=NY金は避買い需要を受け高止まりに

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
<金>
 NY金2月限は11月26日に4200ドル台を回復して以降、4200ドルを支持
線としながらも4300ドルに近づくと転売が出て、上値を抑制されるもちあいとなっ
ていたが、今月11日の取引で値位置を切り上げて終値ベースでの4300ドル台を示
現。NY金が終値ベースで4300ドル台を付けたのは最高値を記録した今年10月
20日以来のことになる。
 この大幅高の米追加利下げに加え米雇用情勢に対する警戒感が強まったことが大幅高
の背景となっている。
 今月9日から10日にかけて開催された米公開市場委員会(FOMC)では、事前の
予想通り0.25%の追加利下げが決定されたが、同時に米財務省証券(TB)の購入
開始も明らかとされたことで流動性の確保に対する安心感が強まった。
 この追加利下げの決定で、これまでの追加利下げ観測が織り込まれたため10日の
NY金は反落に転じているが、それが11日に反発に転じたのは、新規失業保険申請件
数が約4年半ぶりの大幅増となったことで米雇用情勢軟化に対する警戒感が強まったこ
とが主因となっている。
 パウエルFRB議長は今回の追加利下げ決定後に行われたFOMC後の記者会見で景
気に配慮する姿勢を見せると同時に雇用の下振れリスクが高まっている、との認識を示
しており、FRB内でも米雇用情勢懸念が強まっている状況を明らかにした。
 米国では8月1日に相互関税の上乗せ分が発動されて以降、しばらくの間は価格の上
昇による消費者離れが警戒されて企業側が関税引き上げ分を消化する動きが見られてい
たが、輸入価格の上昇分を小売価格に転嫁する動きが徐々に広がっており、これがイン
フレの加速化に繋がる可能性が高まっている。
 米政府機関一部閉鎖中も継続して発表されていたADP雇用統計は10月以降の雇用
軟化の可能性が示されていたことで、雇用軟化に対する警戒感が強まっている。
 一方の10月米労働省雇用動態調査(JOLTS)求人件 数は事前予想の711万
7000件を上回る767万件と5カ月ぶりの高水準に達しており、雇用情勢がこれま
で警戒されるほど軟化していない可能性も示されている。
 今月16日に11月米雇用統計が発表され、ようやく最新の米雇用状況が確認できる
ため、その内容を待ちたいところ。
 なお、米雇用統計が強気な内容で米雇用情勢軟化懸念が後退しても、一方では世界的
なドル離れの動きを受けた公的機関による金需要の増加が引き続きNY金を支える要因
になってきそうだ。
 また、世界的に人工知能(AI)関連株の高騰が続くなか、これまでの上昇後の反動
に対する警戒感も強まっている。
 公的機関によるドルの代替資産としての需要や高騰する株価の下落に備えた安全資産
としての需要が引き続き見込まれるなか、NY金2月限は4300ドル前後を維持する
高もみが予想される。
<銀>
 NY銀3月限は12月に入ってから6000セントを上値抵抗線とする高もみが続い
ていたが、9日にはこれを上抜いたうえ、その後も続伸して11日には6472セント
に達して高値を再び更新している。
 26年以降の設備投資やハイテク産業からの需要拡大観測が強まるなか、米公開市場
委員会(FOMC)での追加利下げ決定も追い風となっている。日柄調整はあるが、深
押しはなく、高値更新の可能性を含めた高値圏での高下となりそうだ。
<白金>
 NY白金1月限は11月28日以降、1700ドルを上値抵抗線としてのもちあいと
なっていたが今月9日に終値ベースで1700ドル台を記録。その後もじり高となり
11日には1713ドルの終値を記録している。
 金・銀など他貴金属の堅調が手掛かりとなって値位置を切り上げているが、工業用と
しての需要増が期待されながらも、最大の消費国である中国景気に対する警戒感が重石
になっている。
 最高値を付けた10月16日以来の高水準に達していることで上値警戒感が強まるこ
とも見込まれるため、1700ドル前後での高もみと予想される。金、銀が修正安とな
った場合、つれ安も有り得る。クリスマス休暇前の手じまい売りを警戒したい。
<パラジウム>
 パラジウム3月限は今月8日以降、1500ドル台前半でのもちあいが続いている。
独自の材料には乏しいながら、他貴金属の高止まりが見込まれるだけに1500ドルを
下値支持線にしての底意の強い動きとなりそうだ。
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