【NY金は地政学不安が逃避買い需要を刺激し高値圏を維持】 NY金2月限は今月12日に4600ドル台に値を乗せた後は4650ドルを抵抗線 に高値圏でもみあいとなっていたが、20日から急速に地合いを引き締め、21日に 4891.1ドルまで値を飛ばし、史上最高値を大幅に更新した。 一方の東京(JPX)金は21日に全限月が2日連続で一代の高値を更新したうえ、 先限は2万5684円の高値を付け、上場来高値をつける動きを継続した。 年初の取引を4340ドルで開始したNY金2月限が今年の取引開始以降、短期間で 4891.1ドルまで暴騰となった背景は、地政学不安の高まり、米連邦準備理事会の 独立性に対する警戒感、米政策に対する懸念感から加速する米国とドル離れの動きが挙 げられる。 地政学不安に関して昨年9月以降、急速に高まりを見せている。米トランプ政権は昨 年12月5日に国家安全保障戦略(NSS)を発表し、この戦略に基づいて今年1月3 日にベネズエラを攻撃したばかりか、マドゥロ大統領を拘束した。 中南米諸国を裏庭と見てきた米国が中南米諸国に圧力をかける場面はたびたび見られ おり、今後もトランプ政権版のモンロー主義とされるNSSのもと、米国は今後も西半 球を重視する動きを見せると見られる。警戒されるのが、軍事力の行使という形で中南 米諸国への圧力がかけられたが、今後も中南米諸国に圧力を強める可能性がある点だ。 注意すべきは中南米諸国に近年、中国が積極的に進出している点だ。世界最大の原油 埋蔵量を誇るベネズエラを始め、中南米諸国は資源の宝庫であると同時に中国にとって は主要な輸出相手先国でもある。今回、米国がベネズエラに軍事攻撃を実施したのは、 中国の勢力が強まる中南米諸国において、米国の勢力の回復を促すことも、目的の一つ だったと見られる。 ただ、この米国の動きはロシアや中国にとって力によって圧力をかけることを肯定す る根拠となりかねない。特に米国がNSSに基づいた戦略に沿った動きを見せ西半球を 重視する動きを強めるようであれば、北米、南米を差すことが多い西半球に入らない地 域に当たるロシア、中国の動きが活発化する可能性もあると見られる。 この中南米諸国を巡る動きに加え、米トランプ政権によるグリーンランド購入を巡る 欧米対立の動きも地政学不安を高める要因になっている。なお、北米大陸の北東に位置 するグリーンランドは位置的には西半球の一部と見られる。このグリーンランドに対し 米国は、防衛のために必要、と主張しその領有を求めているが、欧州諸国ではこの米国 の動きに反対する声が強まっている。 トランプ大統領はグリーンランドへの武力行使を否定する発言は行ったものの、欧州 諸国からの輸入に対する関税の引き上げなどの政策によりグリーンランド領有に向けた 動きを進めると見られる。 レアアースの供給規制などの政策を実施しながら世界的に存在感を強める中国や、ウ クライナへの軍事侵攻を行ったロシアに対抗するためには欧米諸国が協力体制を敷くこ とが重要と見られる。それにもかかわらず米国が欧州諸国との対立も顧みずにグリーン ランド領有の主張していることは、自国の利益を優先する米国の姿勢を如実に示すもの と見られる。また、グリーンランドを巡り欧米対立が深まることは世界的に分断が進む 可能性を意識させる。 ベネズエラでの米軍事攻撃に対する反応を織り込むとグリーンランドを巡り欧米の対 立が激化するなど、次から次に地政学不安が台頭すると同時に米国とドル離れの動きが 促される。その一方で金には安全資産を求める動きが活発に流入してきている。 目先は20日、21日の2日間で200ドルを超える上げ幅を記録した反動安となる 可能性はあるが、深まる地政学不安や米国、ドル離れの動きが意識されるなか、再度、 高値を更新する可能性があるなかでの高値圏での高下が見込まれる。 MINKABU PRESS
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