コモディティレポート(金)

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
【NY金は米国とイランの和平協議の状況次第で浮上の可能性】
 NY金6月限は5月6日から14日にかけて4700ドル前後で高下した後、15日
の取引で大きく下落し5月4日以来の低水準まで軟化。その後も4600ドルを抵抗線
とするもちあいが続く頭の重さを窺わせる展開となっている。
 米国とイスラエルの和平交渉が難航の様相を強めるなか、NY原油の中心限月7月限
は3月下旬から4月下旬にかけて90ドルを上値抵抗線として意識する動きが続いてい
たが、5月にかけて値位置を切り上げ、100ドル前後での高下が続いている。
 4月の米消費者物価指数(CPI)の前年同月比は+3.8%に達し、3月実績の
+3.3%を上回った。変動が激しい食品・エネルギーを除いたコアCPIの前年同月
比も3月時点の+2.6%を上回る+2.8%と、全体的なインフレ高進が確認されて
いる。
 また、4月の米生産者物価指数(PPI)は前年同月比+6.0%を記録し、22年
12月以来の高水準を記録。全般的なインフレ高進が4月時点で確認されたが、5月に
入ってから原油価格が一段高となったことで、米国内のインフレ率はさらに押し上げら
れる可能性が高い。
 なお、インフレ高進下にもかかわらず、人工知能(AI)関連への積極的な投資が影
響しNY連銀製造業景気指数は堅調な伸びを見せた。また、米4月雇用統計でも非農業
部門の雇用者数は事前予想を上回る伸びを見せるなど、雇用面も堅調を維持している。
 底堅い雇用もあって4月の米小売売上高は事前予想以上の伸びを見せた。インフレ高
進下にもかかわらず好調を保つ雇用情勢、底堅さを見せる個人消費を受けて米国では利
下げ先延ばし観測が強まると同時に利上げ着手の可能性を指摘する声も上がっている。
 金は金利により差益が生じない、とされるだけに米連邦準備理事会(FRB)の利下
げ先延ばし観測、利上げ観測は金市場にとっての重石となり、4600ドルを下回る水
準までNY金が値を落としている主因となっている。
 ただ一方で大きな値崩れが見られていないことについてもいくつか根拠が挙げられ
る。そのうちの一つは米経済に対する懸念だろう。前述のように現時点での米経済指標
は強気な内容の発表が続いている。
 しかしながら、小売売上高は伸びを見せているとはいえ、FRBによると26年第1
四半期の米貯蓄率はコロナ禍前の8%の半分程度の4%と米国の貯蓄率は低下している
ことが明らかとなっており、米小売売上高は好調な内容だったとはいえ、貯蓄を取り崩
しながらの消費となっている可能性がある。
 懸念されるのは、インフレ高進が続くなか平均時給が伸び悩んでいることで、これが
さらに貯蓄の取り崩しを進めかねない点だ。米小売売上高は4月までは順調に伸びてい
るものの、これは原油価格の上昇が大きく影響していると見られ、原油価格の高騰が続
くようであれば日常品以外への消費が停滞する可能性がある。
 また、米雇用情勢は4月時点では事前予想を上回る大幅な伸びを見せたが、これはA
Iのデータセンター建設のため人手需要によるものが影響していると見られる。平均時
給の伸び悩みからも、雇用者数自体は増加しているとはいえ、長期に渡る正規の雇用が
確保された上での伸びが続いているとはいえず、必ずしも米雇用情勢が好調というわけ
ではないことも注意すべきこととなっている。
 トランプ米大統領は、20日にイランとの和平協議が最終段階にあると発表したこと
で、NY原油は軟調となり中心限月の7月限は100ドルを割り込んでいる。米国とイ
ランの和平協議が進展し、原油価格がさらに下落してインフレ高進懸念が後退するよう
であればNY金には浮上の可能性が高まる。インフレ高進が後退しなければ、NY金6
月限は引き続き4600ドルを抵抗線にしての高下になると予想される。
MINKABU PRESS

このニュースの著者

MINKABU PRESS

みんなの株式をはじめ、株探、みんかぶFX、みんなの仮想通貨など金融系メディアの 記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコン テンツなど幅広く提供しています。