【NY金は中東不安再燃は米インフレ高進懸念を強め頭重い動きを継続か】 NY金8月限は今月に入り、4600ドルが抵抗線となり、売り圧力が強まってい る。5月29日に米国とイランの停戦協議が最終局面を迎えているとの見方から上昇 し、5月15日以来の高値となる4627.1ドルを記録。しかし、その後は米国とイ ランの停戦協議が停滞するなか再び値を沈めており、3日に4454ドルの安値をつけ た。 米国とイランの停戦協議に関し、トランプ米大統領は交渉が継続していることを強調 し、合意間近であるとの見方を繰り返している。これに対しイラン側は米国との協議停 止の可能性を伝えるなど、停戦合意を巡る両者間の動きには温度差がある。 米国とイランの停戦について前提条件としてはレバノンを含めたすべての地域での戦 闘停止が条件とされているが、イスラエルはレバノン内部やベイルート近郊への攻撃を 行った。 レバノンにはイスラム教シーア派の武装組織ヒズボラが拠点を構えているが、ヒズボ ラはイスラエルと長年に渡って対立している。また、ヒズボラはイランから支援を受け たうえでイスラエル領内を攻撃しているため、イスラエルにとっては国内の平和を取り 戻すためにはヒズボラの排除が必要となっている。 自国が攻撃の直接的な対象となり、実際に攻撃も受けているイスラエルと、本国が攻 撃された経験に欠ける米国とでは、イランの非核化という共通目標を掲げながらも戦闘 に対する温度差には違いが生じている。米国とイランが停戦合意に向けた協議を行って いる最中にもかかわらず、イスラエルが引き続きレバノンを攻撃しているのは、この温 度差が背景になっていると見られる。 また、米国とイランとの間でも停戦中にもかかわらず攻撃の応酬が見られていること も停戦交渉の継続を危うくする要因になっている。さらにイランは湾岸諸国にも攻撃を 行うなど、中東の戦闘は再び激化しており、米国とイラン間の和平交渉の進展を見込む のが難しい状況となっている。 この米国とイランの和平協議の行方に対する懸念が強まる一方、世界的な人工知能 (AI)需要の高まりが経済にもたらす影響に対する関心も高い。米株式市場ではAI 関連株が全体をけん引する動きが続いているが、米経済指標からもAI関連設備投資の 活発化や設備の拡充を受けて、雇用統計や製造業関連の経済指標は強気な内容が続いて いる。 3日に発表されたADP米雇用統計は、非農業部門雇用者数の前月比は事前予想の +11万人を上回る+12万2000人となり、米雇用情勢の好調さを示す内容となっ た。 好調な雇用と経済指標に加え、中東情勢不安から原油が高止まりしていることで、米 国では年内の利下げ据え置き観測も浮上している。インフレ高進のなかにもかかわら ず、米イ戦争の影響によるエネルギー価格の高止まりとこれを受けた米債券の金利上昇 はNY金市場にとって引き続き重石となる。 停戦交渉を巡る米国とイランの温度差や度重なる停滞に加え、米国とイラン双方の攻 撃が激化していることで、一時は弱まっていた中東不安は再び高まっている。特に米国 とイスラエルの停戦に向けた温度差は、停戦交渉の困難さを示唆している。 中東情勢不安は米国内のインフレ高止まりを促すと同時に米債券の金利上昇、年内の 利下げ据え置きの可能性を更に強めることが想定される。中東情勢もしくは米経済への 不安が高まり安全資産を求める動きが高まらない限り、NY金は上値を抑制される動き が続くと見られる。 MINKABU PRESS
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