とれんど捕物帳 トランプリスクは相変わらず健在 トルコが戻ってくるが反応があるか注目

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 今週のドル円は前半は大台の110円を割り込んだものの直ぐに反転した。結局、週足では陽線引けとなっている。21日線の水準も上回っており、チャート的には来週以降の上値期待が高まる値動きではあった。ただし、ドル高であったかと言えばそうではないであろう。ドル自体は調整モードでユーロやポンドはリバウンドの流れを堅持していたようにも思われる。

 ユーロ円やポンド円といったクロス円が上昇していたことからも、今週はまさにザ・円相場だったといった印象だ。混乱が見られているトルコも大型連休で休場、株式市場は底堅く推移していたことからリスク選好の雰囲気になっていたのかもしれない。

 そんな中でもトランプリスクは相変わらず健在だったようだ。週初のドル円の下げはこれが大きかったであろう。トランプ大統領がパウエルFRB議長を名指しして利上げ姿勢への苦言を呈している。ツイッターでも明確に言及していた。以前にも同様の言及がありサプライズではなかったように思われるが、ドル調整の背中を押したことは間違いない。

 FRB議長を公の場で明確に非難する大統領も珍しいが、本気で利上げを止めたがっているようにも思えない。もし、大統領の発言で金融政策の方向性が明確に転換するとなれば、中央銀行の独立性の観点からは大問題でありFRBの信認にかかわる。そのような口先介入があればむしろ、FRBは強硬になってもおかしくはなく、かえって逆効果だ。大統領はFRB議長を指名はできるがクビにはできず、トランプ大統領もそれはわかっているはず。

 だとすれば、今回の発言は支持者へのリップサービスの意味合いが大きいのではとも個人的には思っている。FRBが出口戦略を積極的に進める中、米国の住宅ローンやクレジットカード、学生ローンなどの金利は上昇傾向にある。特に今年に入ってから急速に上昇しおり、米家計の大半を占める住宅ローン金利は今年に入って14%程度上昇している。現在は30年物で4%台半ばといった水準だ。市場の関心はあまりなかったようだが、今週は米住宅販売件数が発表になっており、中古、新築とも冴えない内容となっていた。住宅価格とローン金利の上昇が消費者を住宅から遠ざけているようだ。FRBもFOMC議事録で住宅市場の鈍化は貿易問題などと並んでリスクと指摘していた。もしかするとトランプ政権も、金利上昇による家計への影響が気掛かりになって来ているのかもしれない。

 今週はもう1つトランプリスクが発生している。大統領の元顧問弁護士のコーエン氏が大統領選中にトランプ大統領と性的関係を持った女性2人に口止め料を支払ったとして選挙法違反の罪に問われている。司法取引があったのであろう、それに対して有罪を認める答弁を裁判所で行っていた。最近の市場はこの手の話に反応が薄かったが、今回は多少反応していたようだ。弾劾というキーワードが再浮上している。11月の米中間選挙で焦点にしようという動きまで出ているようだ。

 弾劾については以前から述べているが万一、トランプ大統領が弾劾されたとしても、次の大統領はペンス副大統領だ。米国では再選挙は行われない。経済政策もトランプ大統領と同じ路線でむしろ、対中戦略はもっと強硬になる可能性もありそうだ。現在は宇宙軍の創設に邁進しているくらいだ。もっとも、弾劾の場合、上院の3分の2以上の賛成が必要なことから可能性は極めて低いであろう。よほど米民主党が中間選挙で上院の改選議席を取れば別だが。

 いすれにしてもトランプリスクは、常にそこにあるリスクと心得よう。

 さて来週だが、経済指標では米GDP改定値やPCEのデータが発表されるが、注目度が高い指標はない。最大のリスクはトルコが連休から戻って来るという点であろう。連休前に一旦冷静のなった感もあり、今週のトルコリラは落ち着いた取引となっていた。これが何かをきっかけに再び猛威を振るうようであれば、シナリオはドル高・円高ということになるのであろう。それがなければ、ドルの調整はもうしばらく続くものと予想される。

 ドル円は膠着感が強い半面、上値の重い展開も想定される。レンジとしては110.00~112.00円を想定。「やや強気」のスタンスは継続。

()は前週 
◆ドル円(USD/JPY) 
中期 下げトレンド継続
短期 ↓(↓↓)

◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓(↓↓↓)

◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓(↓↓↓)

◆豪ドル円(AUD/JPY) 
中期 下げトレンド継続
短期 ↓(↓↓)

◆ユーロドル(EUR/USD) 
中期 下げトレンド継続
短期 →(↓↓↓)

◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓(↓↓↓)

minkabu PRESS編集部 野沢卓美 

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