S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。 ●好調な決算発表シーズン、最高値更新では18回目の快挙も 市場参加者が11対11というスコアをあっさり受け入れたため、均衡を破るための副大統領の1票は必要ありませんでした。S&P500指数の終値は、10月の22営業日の半分に当たる11日で最高値を更新しました。これは2013年5月以来のことで、月間での最高値更新が11日を上回ったのは、1930年以降でわずか6回です(1961年と1998年に、13日という月がありました)。月の半分というのも素晴らしいことですが、10月16日から20日までの週は、まさに完璧でした。この週には最高値が毎日更新されたのです。これは、同指数の1928年以降の歴史における18回目の快挙で、1998年3月以来のことです。 上昇の理由に関する異論はほとんどなく、企業収益がもっぱらの理由とされました。S&P500指数構成企業のうち、2017年第3四半期の決算発表が終了したのは、現時点で時価総額の69.2%に相当する銘柄(構成銘柄数の52.4%)で、そのうちの74%が市場予想を上回る業績を上げています(過去の平均は67%)。また、第3四半期は過去最高益の更新が期待されています。 さらに重要なこととして、売上高は65%の企業で予想を上回って前年同期比5.6%増が見込まれており、過去最高を更新する状況です。経費削減や自社株買いだけで1株当たり利益を増やし続けることはできないため、現在の売上高の伸びは重要な要素となります。 小売りセクターの決算はまだ発表されておらず、予想では、2017年第4四半期の最高益の更新とともに、年末商戦での支出の増加が見込まれますが(そしてそのような兆候も次々と現れていますが)、継続的な売上高の増加に感謝するには、感謝祭の頃までもうしばらく待つ必要があるでしょう。 「好調な決算発表シーズン以上に相場を盛り上げるものはない」とはいうものの、10月は他にもさまざまなイベントや問題、ショーやドラマが繰り広げられました。予算決議案が可決され、税制改革法案をめぐる審議が本格化する中、市場は政治的なイベントを注視して消化しましたが、大きく反応することはありませんでした。米環境保護局(EPA)は、オバマ政権が進めたクリーンパワープラン(裁判所により差し止められ、発効していません)の撤廃案を発表し、連邦通信委員会(FCC)は、米国のテレビ局や新聞社の所有規制に関して2017年11月に多くの制約や管理を撤廃する大幅な変更を行うと報道され、医療保険制度改革法(ACA、通称オバマケア)の見直しをめぐっては、トランプ大統領が補助金の停止を発表し、議会が救済案を模索しています。 米連邦公開市場委員会(FOMC)がインフレの気配を待つ一方で、スペインのカタルーニャ州では独立に向けた動きが強まりました。他にも幾つかの地域が同様の状況にあり、地図が塗り替えられる、あるいは各地で流血騒ぎ(通貨や債務は言うまでもなく)が起きる可能性があることから、その機運が広がるかどうかに市場の関心が集まりました。各国での選挙は一部の現政権サイドにとって望ましい結果となり、日本の安倍首相と中国の習近平国家主席には、勝利に加え、権力の強化と任期の延長がもたらされました。オーストリアでは31歳のセバスティアン・クルツ氏が首相に選出され、政権が右寄りとなりました。 興味深かったのは(そして潜在的に影響が予想されるのは)、内輪もめが続く共和党に関する名称変更案です。2名の共和党上院議員(フレーク氏とコーカー氏)が再選を目指さないことを表明するとともに、トランプ大統領を激しく非難しました(ジョージ・ブッシュ元大統領や現職のジョン・マケイン上院議員に続くものです)。議会とトランプ政権が折り合いをつけるに連れて、去る人が増える可能性があります。 そこで重要になるのは、来年の中間選挙でトランプ大統領に近い候補が選出されるか、それとも民主党か、という問題です。市場の統計によると、昨年11月の大統領選以降、S&P500指数とグローバル市場はいずれも20%上昇し、S&P500指数は12ヵ月中11ヵ月、グローバル市場は12ヵ月すべてでプラスになっています。このような状況の下で出てきた党名の変更案は(ただし、バーで飲んでいる中立的な立場のトレーダーたちの提案ですが)、「俺の党だ。嫌なら出て行け」というものです。 ●10月のまとめ 好調な業績が相場を支え、S&P500指数の終値は、10月の22営業日中11日で最高値を更新しました。年初来では、210営業日中の50日で最高値を更新しています。 10月のS&P500指数は2.22%(配当込みのトータルリターンは2.33%)の上昇となり、7ヵ月連続のプラスでした(2016年11月以降の12ヵ月間では11ヵ月でプラスとなり、唯一0.04%のマイナスだった2017年3月も、配当込みのトータルリターンは0.12%のプラスとなるため、配当込みでみると12ヵ月全てがプラス。一方、グローバル市場は12ヵ月全てでプラス)。最高値の更新は11回(前月は9回)、3ヵ月間の上昇率は4.25%(トータルリターンは4.76%)、年初来では15.03%(同17.91%)、過去1年では21.12%(同23.63%)の上昇でした。 11セクター中7セクターが値上がり(前月は8セクター)となりました。電気通信セクターは値下がりが続き、10月は8.69%下落(AT&Tの14.1%下落が影響)で、年初来でも16.05%値下がりしており、騰落率は最低となっています(AT&Tは20.9%下落)。最も好調だったのは情報技術セクターで、10月は7.67%、年初来では35.69%の上昇となり、騰落率首位となっています(アップルが年初来で46.0%、アルファベットが30.4%と31.7%、マイクロソフトが33.9%それぞれ上昇していることが寄与。一般消費財銘柄のアマゾンは47.4%の上昇)。 2016年11月の大統領選以降、S&P500指数は20.36%(配当込みのトータルリターンは22.73%)上昇し、最高値を58回更新しています(2017年は年初来で50回、2016年は18回、2015年は10回、2014年は52回)。 10月は、グローバル市場全体が好調で、月間での上昇を12ヵ月連続に伸ばしました。10月のグローバル市場は1.97%(年初来で17.82%)の上昇となり、内訳は、新興国市場が2.53%(同27.19%)、先進国市場は1.90%(同16.85%)の上昇でした。 ※「下げ知らずのトランプ大統領、就任後に世界市場は20%上昇 (2) 」へ続く。 株探ニュース
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