とれんど捕物帳 ロング勢は少し様子見も

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 今週もドル円は上値の重い展開となり、金曜日のNY市場では111円割れ寸前まで下落している。日銀と主要各国中銀との出口戦略に対する温度差が大きく、円安期待は根強いものの、肝心のドルが相変わらず盛り上がらない。先週のイエレンFRB議長の議会証言や米消費者物価(CPI)を受けインフレ鈍化から年内の米利上げ期待に不透明感が強まってドルを重くしている。いずれは修正されることを期待するが、もうしばらく続きそうだ。

 そのような中、トランプ政権に関する雑音が更にドルの上値を重くしている。米議会がヘルスケア法案を成立させられなかったことや、ロシア疑惑への懸念が更に強まっており、投資家もドル買い戻しに動けない状況になっている模様。今週は米大統領選挙におけるトランプ陣営とロシアとのつながりを捜査しているモラー特別検察官が、捜査の対象をトランプ氏や関係者のビジネスに関わる様々な取引についてまで捜査を拡大していると伝えた。

 今後、トランプ大統領の経済政策の本丸である税制改革やインフラ整備法案の議論が本格化してくる。上記の2つの財政刺激策が実施されることを前提に現在の市場は成立している。ただ、ヘルスケア法案も成立させることができない中、債務上限引き上げ問題も目前に迫っており、市場は不透明感を強めているようだ。

 そして、今週は何と言ってもECB理事会とドラギ総裁の会見であっただろう。ECBは声明で「必要なら資産購入の規模や期間を拡大する用意」という文言をそのまま残した。その後のドラギ総裁の会見も慎重姿勢を強調し、全体的には予想以上にハト派な内容だったと思われる。しかし、ユーロの買い意欲がECBに勝っているのか、ドラギ総裁の「債券購入プログラムについては秋に協議」との一言に敏感に反応し、ユーロは逆に買いが加速している。

 債券購入プログラムの変更についてECBは、10月まで決定しない可能性があるとの当局者の発言も伝わっていた。ECBは9月の理事会で、債券購入プログラムの拡大ペース縮小について協議を開始する見込みだが、結論は出せないであろうという。

 今週のECB理事会を見た限りにおいては、ECBは現状のユーロ高や欧州債利回りの上昇を快く思っていないことは確認できたであろう。ただ、ドルも買えない、円も買えない、そして、ポンドも買えない中、資金はユーロに集中しており、市場はまだ耳を貸す気はないようだ。

 さて来週だが、今回の下げでドル円は10日線と21日線のデットクロスを示現しそうだ。米大統領選以降の基本的な上向きトレンドに変化は出ないものと思われるが、来週のFOMCや米GDPの反応次第では、110円割れも留意する必要がありそうな状況ではある。ロング勢であれば、下げ止まるのを待ちたいところではある。

 そのFOMCだが、今回は声明のみが注目となりそうだが、9月にバランスシート縮小開始を目指すFRBとしては、大きな変更は与えないと見ている。ただ、インフレ部分の表現は、少し慎重さを増す可能性はありそうだ。

 そして、米GDPだが、イエレンFRB議長も、そして、トランプ大統領も大きく改善する可能性に言及していたように思われる。市場予想では前期比・年率換算で2.5%を見込んでいる。インフレが鈍化しており、デフレータが実質を嵩上げしている可能性はあるが、底堅い成長を示すようであれば、雰囲気が少し変わるかもしれない。

 想定レンジだが109.50~112.50を想定。スタンス

は前回のやや強気から中立に変更する。

()は前週 
◆ドル円(USD/JPY) 
中期 上から中立へトレンド変化
短期 ↓↓(↑↑)

◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑(↑↑)

◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↓(↑↑)

◆豪ドル円(AUD/JPY) 
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑↑(↑↑↑)

◆ユーロドル(EUR/USD) 
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑↑(↑)

◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑(→)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
来週は配信をお休みさせて頂きます。次回は8月5日(土)の午前を予定しています。ご了承ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(みんかぶ「Klug」 野沢卓美) 

このニュースの著者

MINKABU PRESS

みんなの株式をはじめ、株探、みんかぶFX、みんなの仮想通貨など金融系メディアの 記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコン テンツなど幅広く提供しています。