不調な米10年債入札後、ドル円は114円台を回復=NY為替概況

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 きょうのNY為替市場、後半になってドル買いが優勢となり、ドル円は114円台を回復している。序盤は短期的な過熱感から利益確定売りも出ていた。北朝鮮の駐英大使の核実験に対する発言やトランプ大統領がコミーFBI長官を解任したことで、トランプ政権への不透明感もドル円の調整を後押ししていた。

 しかし、午後に入って発表になった米10年債入札の結果を受けて米国債利回りが上昇し、ドル円も買いが強まっている。ドル円は114円台を回復しストップを巻き込んで、114.35付近まで一時上昇した。市場の関心はファンダメンタルズに戻っており、米利上げ期待がドル円をサポートしている。

 ドル円は前日の午後から調整の動きを見せている。まだ上値での売り圧力も出るものと思われるが、明日は生産者物価(PPI)、そして、明後日は消費者物価(CPI)、小売売上高といった重要指標を控えており、インフレ期待や第1四半期の減速は一過性という先週のFOMC声明の文言を裏付ける内容であれば、ドル円は一段の上値期待を高めそうな雰囲気にはありそうだ。この短期の調整を乗り切れれば、大きな心理的節目の115円が見えてくるということになる。

 なお、あまり反応は無かったが、ローゼングレン・ボストン連銀総裁が、年内あと3回の利上げが妥当と発言していた。大規模な刺激策が実施されれば利上げが加速される可能性もあるという。これまで米地区連銀総裁からは、あと2回という発言が多かっただけに、やや驚きではあった。

 一方、ユーロドルは戻り売りが強まり、一時1.0855付近まで下落している。ただ、1.0850に接近すると買い圧力も強まり、その水準は維持されたが、目先は200日線が控える1.08台前半が意識されそうだ。

 ECBの出口戦略への期待が高まる中、きょうはドラギECB総裁がオランダ議会で議会証言を行っていた。景気については、ユーロ圏全体が上向きに入ったと述べる一方で、現在の刺激策はなお必要との認識も示していた。先日の理事会後の会見と同様に慎重姿勢は堅持している。ユーロに関しては次のアクション待ちの面が強い。

 ドル円の上昇もあり、ポンド円は東京時間に引続き瞬間、148円付近に上昇した。ポンド自体が軟調な動きをしていたことから直ぐに伸び悩んだが、強い動きは続いている。

 明日は英中銀金融政策委員会(MPC)が開催され、インフレ報告も同時に発表される。いわゆるスーパー・サーズデイだが、今回のMPCは政策変更はない見通し。前回3月は、フォーブス委員が予想外に利上げを主張し驚きとなったが、今回も利上げを主張してくるか注目される。なお、フォーブス委員は6月末で退任することから、MPCへの参加は今回を含めてあと2回ということになる。

 そして、四半期インフレ報告だが、一部ではEU離脱の交渉が本格的に始まれば景気を圧迫し、いずれ英中銀は量的緩和を再開してくるとの見方も根強い。その意味でもインフレ報告は注目されるが、少なくとも現時点で、先行きに楽観的な見方を強めてはこないものと見られている。

 6月8日総選挙が実施され、足元の世論調査ではメイ首相率いる保守党が勝利する可能性が高まっている。メイ首相がEU離脱交渉における権限は増せば有利とのことでポンドは、このところ買い戻しが強まっているが、景気自体に関しては不透明感も根強い。

 ポンドの反応は未知数だが、ドル高の流れが続いているようであれば、調整が出る可能性も留意したい。

みんかぶ「KlugFX」 野沢卓美 

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