リスク選好のドル売りの中でドル円は107円台で膠着=NY為替概況

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 きょうのNY為替市場でドル円は107円台での膠着した取引が続いた。ドルと円がリスクに対して同方向に動いており値動きがない。きょうの市場はリスク選好の雰囲気が強まっており、米国を始め、世界各国の株式市場が大きく上昇している。引き続き経済再開への期待感が市場を押し上げている。各国政府が緊急事態宣言の解除に動く中、それに伴って追加対策を検討していることも、市場の期待感に結びついている模様。

 ワクチン開発が活発化していることも市場のムードを押し上げている。きょうはバイオテクノロジーのノババックスが新型ウイルス向けのワクチンの臨床試験を開始したとのニュースが伝わっていた。また、米国が新型ワクチンの年内実用化を目指し、10万人余りのボランティアを対象に最も有望なワクチン候補を幾つか試す治験を計画しているとも伝わった。

 一方、米中対立への懸念は依然として強く、オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、中国が現在開催している全人代で協議している香港への国家安全法導入に関して、「法案が成立した場合、中国に対し制裁を科すことになるだろう」と述べていた。米中対立は更に激化しそうな気配も見せているものの、市場はいまのところ、経済再開やワクチン開発への期待感を優先させているようだ。

 ユーロドルは1.10ドルを再び試す動きが見られた。ユーロドルはきょうの上げで100日線を回復。目先は1.10ドルを回復できるか、そして、200日線が控える1.1010ドルの水準を突破できるかが意識される。ただ、もっぱらユーロドルの材料はドルの動きに偏る中、一部からは6月4日のECB理事会を巡る様々な見方も出始めている。理事会ではパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の拡大がほぼ確実視されているが、購入規模を5000億ユーロ増加し、1.25兆ユーロまで拡大させるとの見方も出ているようだ。また、プログラムの期限を2021年9月まで延長との見方も出ている。

 更に、堕落した天使と呼ばれる最近ジャンク級に格下げされた債券も購入対象に含めるとの案や、マイナス金利の階層化乗数を現在の6倍から8倍に引き上げるとの見方もあるようだ。乗数が引き上げられれば、市中銀行が中央銀行に預けなければならない準備預金の最低額の最大8倍の準備預金がマイナス金利から免除される。

 ポンドドルもショートカバーが強まり、1.2360ドル付近まで一時上昇。マイナス金利の思惑やEUとの貿易交渉を巡ってポンドはショートポジションが積み上がっていたが、短期筋のポジション調整が一旦出ているようだ。ただ、市場からは引き続きネガティブな見方が多い。EU離脱を受けた新たな貿易協定の交渉が難航しており、離脱後の移行期間を年末以降まで延長するかどうかを決める期限が来月末に迫る中、夏場にかけてポンドは下落圧力が強まるとの見ているようだ。ジョンソン政権は交渉にあまり進展がないと認める一方、移行期間の延長はしないと繰り返し述べている。
 
 一方、マイナス金利については見方が様々で、ベイリー英中銀総裁も否定はしていないものの、実際に導入となれば、経済がさらに実質的に悪化しなければならず、現状では、それは起こりそうにないとの指摘も出ている。4-6月期の英GDPはかなりのマイナス成長が見込まれているが、それをどう見るか次第のところもありそうだ。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

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