米大統領選が日々接近する中で、今週の市場は踊り場に入ったといった印象だ。その中でドル円は105円台での上下動が繰り返されているが、下値を模索しに行ったという印象。105円の心理的節目は保たれているが、下値警戒感は根強い。 何も無ければ、いまの為替市場はドル売りということなのかもしれない。以前も述べたが、FRBが低金利の長期化を打ち出す中で、FRBと各国中銀との金融政策に差が無くなり、国債の利回り格差も縮小している。ドルの流通量は他の通貨を遥かに凌ぐ大きさで、需給関係から基本的にはドルは売られやすい。これまでは金利がそれを抑制していたが、FRBのゼロ金利政策とバランスシート拡大で、質的優位性はほとんどなくなり、ドルの過大評価は正当化されない。 ドル売りを円売りが凌駕すれば、ドル円は上昇する。景気の先行き期待の高まりにより、投資家のリスク許容度が高まれば、株高とともに円安も期待できそうだ。しかし、目下の要素としては米追加経済対策、ワクチン開発などに市場の注目が集まっているが、米追加経済対策については米与野党の協議が難航しており、11月3日の大統領選はおろか、年内の合意も難しい情勢だ。ワクチン開発についても、トランプ大統領は「年内には安全で効果的なワクチンができる」と述べているが、製薬会社から臨床試験の一時中断も伝わる中、期待感は若干後退している状況。早くても来年以降との見方が有力視されている。それの状況下で、リスク選好の円売りが強まることは期待しにくい。 ただ、市場が先行きに悲観的なムードを強めているわけではない。米大統領選を前に、これまでの楽観度合いが少し後退したいった程度で、米大統領選通過後の市場の流れを確認したい雰囲気になってきたといったところであろう。 ドル円は105円割れを試す展開になってきている。ただ、105円を割り込んだとしても、下値での押し目買いに支えられることも予想され、少なくとも、100円に向かってどんどん下値を切り下げて行く雰囲気ではないと思われる。今年は105円を大きく割り込んだのが3度あったが、いずれも買い戻されている。今回も同様の展開が想定される。 さて来週だが、米経済指標は住宅関連が中心で、現在の市場環境では、さほど材料視されないであろう。個人的には低金利による米住宅バブルの可能性に注視しているが、恐らく市場の反応は鈍いことが予想される。やはり、差し迫った米大統領選の行方が注目の1つとなろう。世論調査では民主党のバイデン候補が圧倒的に優勢で、勝利の確率が80%以上と言っている調査機関もあるようだ。そのような中で市場もバイデン候補の勝利で織り込みに行っている節もあるが、最近の世論調査は、発表元の意志が働くこともあり、あまり当てにならないとも言われている。市場も慎重に織り込んでいるといった印象だ。大統領選と同時に実施される議会選挙も民主党が上下両院とも過半数を獲得しそうな勢いで、バイデン候補勝利なら、議会もホワイトハウスも民主党がリードする。 追加経済対策は民主党の主張が通りやすくなることが想定されるので、規模は共和党よりも大きくなる。その点は市場にとってはポジティブなのかもしれないが、半面、増税の可能性が浮上する。一方、トランプ大統領続投の結果となったとしても、議会が民主党であれば、追加対策の規模はそれなりの規模になるとも見られている。トランプ大統領は最近、大規模な対策を主張しており、同じ共和党との意見の違いも浮き彫りになっている。半面、トランプ大統領であれば、米中対立が更に激化することが予想される。バイデン候補ならそれが鎮静化して行くとも思われないが、トランプ大統領よりは激化しないのではとの見方もあるようだ。 いずれにしろ、市場から見れば甲乙付け難い状況で、様子を見守っている状況。ただ、投票後に結果がすんなりとは決まらないとの見方もあり、市場も神経質にはなって来ているようだ。 ドル円だが、神経質な展開の中で、上値は重いことも想定され、心理的節目の105円を割り込む可能性は十分にありそうだ。しかし、深追いは禁物かもしれない。 想定レンジとしては、104.50円~106.00円の狭いレンジを想定。スタンスは「弱気」を継続する。 ()は前週 ◆ドル円(USD/JPY) 中期 下げトレンド継続 短期 ↓(→) ◆ユーロ円(EUR/JPY) 中期 下げトレンド継続 短期 →(↑) ◆ポンド円(GBP/JPY) 中期 中立継続 短期 →(↑↑) ◆豪ドル円(AUD/JPY) 中期 下げトレンド継続 短期 →(↑↑) ◆ユーロドル(EUR/USD) 中期 下から中立へトレンド変化 短期 ↑↑(↑↑) ◆ポンドドル(GBP/USD) 中期 下から中立へトレンド変化 短期 ↑↑↑(↑↑↑) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 次回の配信は10月31日(土)の午前を予定しています。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
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