ショッキングな米雇用統計を受け、確率は上下五分五分の状況に

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 今週のドル円は全体的に様子見気分が強まっていたが、週末の米雇用統計がショッキングな内容となったことで、市場には動揺が走った。非農業部門雇用者数(NFP)は26.6万人増となったが、市場の予想コンセンサスは100万人増で、なかには100万人を大きく超えるとの強気な見方まで出ていた。

 市場の見解を総合すると、他の指標も鑑みてパンデミックからの景気回復トレンドの鈍化を示す内容ではないとの意見が多い。ただ一方で、少なくとも利上げはおろか、資産購入ペース縮小など、市場が描いていたFRBの早期出口戦略着手への期待は大きく後退させる内容との見解も多く見受けられる。

 ただ、ショッキングな米雇用統計だったにもかかわらず、インフレ期待は逆に高まっている。米インフレ期待を示す米10年債のブレークイーブン・レートは2.50%まで上昇し、2013年以来の高水準となった。今回の弱い米雇用統計でFRBの出口戦略着手への期待が後退し、バイデン大統領のインフラ投資策への期待感も高まる。インフレを上昇させる環境が長引くと見ているのかもしれない。

 確率は上昇のほうがまだ高いものの、下落の確率との差が、金曜日の米雇用統計で一気に縮まっている。110円と107円に着目すると、5月末までに110円に一度でも到達する確率は前週の68.6%から35.6%に低下。一方、107円の確率は前週の17.6%から29.7%に上昇しており、その差が一気に縮まっている。

 ワクチン展開の進展、それに伴う景気回復、そして、企業業績回復といったハッピーシナリオを市場は完全に織り込んでいる。あとは織り込んだシナリオを点検しつつ、次の展開を探っている状態と思われるが、来週以降、ドル円が上下どちらの流れに向いて行くか、確率的には五分五分の状況となっている。

◆来週以降5月31日までに各ポイントを1度でも付ける確率
()は先週末
112円: 2.7%(11.8%)
111円:11.6%(32.3%)
110円:35.6%(68.6%)
108.60円(週末終値)
107円:29.7%(17.6%)
106円: 8.7%( 5.1%)
105円: 1.7%( 1.1%)

◆来週以降6月30日までに各ポイントを1度でも付ける確率
()は先週末
113円: 7.4%(15.3%)
112円:16.5%(29.4%)
111円:32.3(50.7%)
110円:56.1%(78.6%)
108.60円(週末終値)
107円:52.0%(37.4%)
106円:29.1%(20.0%)
105円:14.1%( 9.3%)
104円: 5.8%( 3.7%)

※ドル円のオプション取引から算出

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次回の配信は5月29日(土)の午前を予定しています。
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MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

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