米雇用統計でドル円は失望売り 出口戦略への期待が遠のく=NY為替概況

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 きょうのNY為替市場はドル売りが強まり、ドル円は109円台半ばに急速に下落した。この日発表の米雇用統計の発表を受けて失望売りが強まり、ドル円は110円台から失速。非農業部門雇用者数(NFP)は55.9万人増と前回の驚きの低い数字からは回復を見せたものの予想は下回った。

 労働参加率の低下もあって失業率は5.8%に改善したものの、今回の結果を受けて市場はFRBの出口戦略への期待を大きく後退させている。前日のADP雇用統計や米新規失業保険申請件数が強い内容だった分、きょうの米雇用統計は失望感が大きかったようだ。

 市場の一部からは、就業比率の点からもFRBのスタンス変更は難しいとの意見も出ている。就業比率は15歳以上の生産年齢人口に占める雇用者の割合だが、今回は58%となった。パンデミック前は61.6%で推移していたことから、なお低い水準に抑えられているほか、ここ数カ月の伸びが60%手前で鈍化傾向を示している。FOMCメンバーからは「健康や育児の問題が人々を労働市場から遠ざけている」との分析が出ているが、人々の労働市場への回帰は依然として鈍いことが示されている。

 今月はFOMCが予定されているが、緩やかな景気回復に言及する可能性は高いものの、少なくとも雇用については、出口戦略着手に必要な大幅な進展にはほど遠いとの見解が示されてもおかしくはない。

 ユーロドルは買い戻しが強まり、一時1.2185ドル近辺まで上昇する場面もみられた。本日の21日線は1.2175ドル付近に来ているが、いまのところは、その水準の完全回復までには至っていない。しかし、21日線を下放れる動きも見られておらず、前日から警戒されていた下げトレンド入りの兆候は見せていない。

 来週のECB理事会が予定されているが、それを巡って様々な見方が出ている。「ECBは文言を微調整する可能性はあるものの、大幅な政策転換を示すことはまずない」というのがコンセンサスのようだ。ECBの口調は恐らくハト派的であり、今年最初の数カ月よりも速いペースでの債券購入を続けると繰り返し述べると見られている。予想外に強気な発言がなければ、ユーロドルにとっては圧迫要因になるとの指摘も聞かれるが、一方でそれは間接的にユーロ高をもたらす可能性があるとの見方も出ている。ECBの継続的なハト派姿勢は、欧州株への資金フローを促進し、逆にユーロをサポートする可能性があるという。

 ポンドドルは買い戻しが強まり、一時1.42ドルちょうど付近まで上昇する場面もみられた。本日の21日線は1.4135ドル付近に来ているが、その水準は回復している。

 迅速なワクチン展開により、英国でもインフレ期待が高まっており、直近4月分の英消費者物価指数(CPI)は前年比1.5%に上昇している。ただ、エコノミストからは、5月分は更に1.9%まで上昇し、10月までには英中銀の2%目標を上回る可能性が高いという。ただ、来年上半期以降は英中銀の2%目標を上回って推移する可能性は低いとしている。今年終盤に一時帰休プログラムが終了になると労働市場のスラックが増加し、賃金上昇が抑えられるという。また、最近のポンド高が来年初めに、コア商品の価格引き下げを誘発するとも指摘した。

 英消費者がオンラインで商品を購入する機会がこれまで以上にが増えることが予想される中で、企業側の価格決定力はパンデミック前よりも強くなる可能性は低いという。なお、5月分の英CPIは6月16日に予定されている。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

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