為替相場まとめ5月31日から6月4日の週

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 31日からの週は、ドル買いの動きが強まった。4月以降続いてきたドル安の流れに対する調整圧力が先週後半あたりから散見された。週前半には神経質な上下動を見せる展開がみられた。そのなかで米ADP雇用統計が予想外の大幅増となったことがドル買いを誘った。これまで米国ではインフレ期待がFRBの出口戦略開始への思惑を広げた経緯があったが、2大使命の一方である雇用状況の回復がその見方のネックとなっていた。しかし、足元の米雇用指標が改善したことがドル買いを促した。ドル指数は21日線を明確に上抜け、約2カ月続いたドル下降トレンドから中立への転換が示唆されている。ドル円は110円台乗せ、ユーロドルは1.21台、ポンドドルは1.40台、豪ドル/ドルは0.76台へとドル高が進行した。また、ドル円の上昇とともにクロス円も全般的に上昇傾向となり、円安の面もみられた。OECD世界経済見通しが引き上げられるなかで、日本だけはワクチン接種の遅れで見通しが引き下げられており、円安につながったとの指摘があった。また、本邦投資家が為替ヘッジコスト低下を背景に米債投資に傾いているとの見方で、円安の環境が整った面も。ただ、注目の米雇用統計は雇用者数の伸びが予想を下回り、ドル売りの反応を強めた。ドル買いの勢いは削がれている。


(31日)
 東京市場は、小幅の振幅。ドル円は109円台後半での取引。先週末に一時110円台をつけたが、引けにかけては109.80台へと反落して週末を迎えた。週明けは同水準から取引開始したあと、109.90台をつけたが上値も重く、109.60台まで反落。月末要因で本邦勢からの実需売り観測があった。午後には値動きが落ち着いた。ユーロドルは午前の取引で一時1.22台を回復も、その後は1.2180台まで押し戻されて揉み合いに。ユーロ円は朝方に134円台をつけたあとは、133円台後半での揉み合いに。このあとのNY市場がメモリアルデーで休場となるなかで、積極的な売買は手控えられた。

 ロンドン市場は、英米市場の休場で動意薄の展開。英国ではスプリング・バンクホリデー、米国ではメモリアルデーのため株式・債券などの主要市場が休場に。為替取引は行われるが、手掛かり難となっており、様子見ムードが広がっている。ドル円は109.70付近と本日の安値圏での揉み合い。ユーロドルは1.22台乗せでは上値を抑えられており、1.2190付近での取引が続いている。いずれも前週末からのドル安水準での推移。ポンドドルは1.42近辺からジリ安となり、ロンドン序盤には1.4160台まで下押し。一方、豪ドル/ドルは原油相場の反発とともに0.77台前半で高値を0.7740付近へと伸ばしている。いずれも値幅は狭い。OECDは今年の世界成長率予想を従来の5.6%から5.8%へ上方修正した。ワクチン接種の進展とそれに伴う経済活動再開の動き、財政支援策などが背景。ただ、欧州株や米株先物は反応薄で、やや売りに押されている。

 NY市場はメモリアルデーの祝日で休場。

(1日)
 東京市場は、ドル売りが先行。ドル円は前日のNY休場の時間帯に109.30台まで下押しされる場面があった。東京市場午前も上値重く109円台半ばから再び109.30台まで下落。ただ、米債利回りが上昇し、ドルの下支えに。午後には109円台半ばへと戻した。ユーロドルは1.22台前半での揉み合い。午前にはドル売りが先行し、1.2236レベルまで高値を伸ばした、午後には1.2220近辺へとやや調整された。豪ドルは売られた。豪中銀金融政策理事会は政策金利と量的緩和について予想通り現状維持だった。声明では7月理事会で3年物国債利回り目標の対象を2024年4月満期から7月満期に変更するかどうか(変更した場合、事実上の延長)の判断を行うとした。想定内の内容にとどまり、先日のNY中銀の積極姿勢との対比で豪ドルが売られたようだ。

 ロンドン市場は、ドルに買い戻しが入った。ドル円は109円台前半から後半へと上昇、高値を109.68レベルまで伸ばした。ただ、前日のNY市場や今日の東京市場の下落に調整が入る程度の動き。欧州株や米株先物が堅調、NY原油先物が高値を追う動きなどリスク動向は良好。米10年債利回りは1.62%台まで上昇した。ユーロドルは1.22台前半に高止まり。高値を1.2240台まで伸ばしたあとの下げは1.2210台まで。ユーロ円は堅調で、一時134円台乗せとなった。ドイツ雇用統計や一連の欧州製造業PMIが強含んだこともユーロ相場を支援した。一方で、ポンドドルは軟調。1.42台半ばで上値を抑えられると1.4170割れ水準まで反落。ポンド円も156円手前で上値追抑えられると155.30付近へと下押しされている。対ユーロでのポンド売りフローも入った。英製造業PMIがやや下方改定されたが、これまでのポンド高への調整の色合いが濃かったようだ。

 NY市場は、ドル売りが優勢。ドル円はロンドン時間に109.70近辺まで上昇したが、NY時間には再び109.30台まで軟化。この日発表のISM製造業指数が戻り売りのきっかけとなった。雇用指数が11月以来の水準に低下したことに反応したようだ。一方、日銀は出口戦略に遅れをとる可能性が高いとの見方もあって、円相場は売られやすいとの指摘もあった。ユーロドルは一時1.22台半ばまで上昇。その後は戻り売りに押された。RBが出口戦略への慎重姿勢を堅持していることから、ドル安が根強い一方で、ECBもFRB同様に慎重姿勢を強調する中で市場も迷いがあるようだ。ポンドは戻り売りが優勢。ポンドドルは1.41台半ばに下落。対円や対ユーロでも軟調。ただ、東京時間には1.42ドル台半ばと3年ぶりの高値水準をつけていた。英国でのワクチン接種の進展がポンド相場を押し上げている。住宅価格の大幅上昇など英中銀が注意深く監視する動きも。ポンド売りは調整の動きとの見方に。

(2日)
 東京市場では、ドル円が堅調。朝方からしっかりとした展開となり、じりじりと上昇。午前中はユーロ円などの買い戻しとともに円売り主導で109.60台まで上昇。午後に入ってからはドル全般に買いが入る形で109.70台までと、前日高値を上回る上昇をみせた。ユーロ円は133円台後半から134円台乗せ。早朝にはトルコリラが波乱の展開に。エルドアン大統領が同国TVでのインタビューで利下げが必要と発言。中銀総裁らと話し、7月、8月には金利が引き下げられている必要があるとしたことで、リラが急落した。ドルリラは8.52前後から8.80台をつけ、リラの最安値を更新。その後は急速に戻したが、朝方のリラ高水準は回復せず。

 ロンドン市場は、ドル買いが優勢。ユーロドルの下げが主導する格好で、ドルが全面高となっている。ユーロドルは1.22台割れから1.2170近辺へと下押し。ポンドドルは1.41台半ばから1.4110近辺へ、豪ドル/ドルは0.77台半ばから0.7710台へと下落。ドル円は東京市場からの上昇の流れが継続し、高値を109.90手前水準まで伸ばした。米債利回りはやや低下、欧州株や米株先物は上値が重いものの、下値での買いは入り、おおむねプラス圏での推移。NY原油先物は68ドル台前半で堅調な値動き。ユーロ圏生産者物価指数は前年比の伸びが加速、英住宅ローン承認件数は前回から増加。目立ったドル買い材料は見当たらず、ポジション調整主導の展開になっている。ドル指数は再び21日線のレジスタンスを試している。

 NY市場では、方向感のない展開が続いた。ドル円は109円台半ばでの振幅が続いた。ロンドン時間に110円手前まで買われたあと、NY時間には109円台半ばへと押し戻されている。本日109.18円付近に来ている21日線の上は維持しており、底堅さは堅持しているものの上値も重い印象。ユーロドルはNY時間に入って買い戻しが優勢となり、1.22台を回復。本日は下に往って来いの展開で、一時1.2165付近まで下落する場面もあった。ポンドドルもNY時間に入って買い戻されたが、きょうは一時1.41台前半まで下落。ただ、21日線の水準ではサポートされ、上昇トレンドは維持した。米国では財政刺激策が推し進められるなかで、米国内需要はパンデミック前の水準を回復しつつあり、インフレが当面の経済リスクとみられている。ユーロ圏ではECBの6月会合でPEPP購入ペースの減速を発表する可能性が高いとみられている。ただ、出口戦略のサインではない点が強調されるとの見方も。英国では変異株をめぐる動向が注目材料に。

(3日)
 東京市場は、ドル円が底堅く推移。前日海外市場では109.80台から109.50台へと下落したが、東京市場ではじり高の動きに転じた。109.70台までの限定的な動き。明日の米雇用統計を控えて、突っ込んだ売り買いを避ける動きとなった。朝方のドル円の買いは円安が主導していたが、その後はドル高がやや強まっている。ユーロドルは1.2210近辺から1.2190台へと小安い。豪ドルは貿易収支圧の売りがやや目立った。午後には対ドルで0.7750台から0.7730近辺へと軟化。対円では85円付近が重く、84.85近辺へと軟化。

 ロンドン市場では、ドル買いが一服。ロンドン序盤にドル円は109.85近辺、ユーロドルは1.2180近辺、ポンドドルは1.4140台までドル高の動き。しかし、その後はドル売りに押された。ポンドドルは英非製造業PMI確報値が予想外の大幅な上方改定されたことを受けて上伸、一時1.42台へ。ユーロドルも一時1.22台乗せへ。ユーロ圏非製造業PMI確報値も小幅に上方改定されたが、これには反応薄。ロシア、ウェルスファンドでドルの保有高をゼロにすること計画との報道で、ドル円は一時109.60台まで反落。その後、バイデン米大統領がインフラ整備法案で1兆ドルの追加予算を望んでいるとの一部報道で再びドル買い反応。欧州株や米株先物は売りに押されている。きょうのADP雇用統計、新規失業保険申請件数、ISM非製造業景況指数、明日の米雇用統計と米国の雇用関連指標を見極めたいとして調整含みの動きがみられた。

 NY市場では、ドル買いが強まった。米ADP雇用統計、米新規失業保険申請件数、米ISM非製造業景気指数が発表された。雇用関連の指標はともに良好な内容で、雇用回復を示す内容となった。ISM指数は雇用指数は低下したものの、全体的には予想を上回り、サービス業のセンチメント回復を示した。明日の米雇用統計の発表を控える中で、雇用関連の指標は心強かった。これまでのドル売りポジションに巻き返しが入っている。ドル円は110円台を回復し、110.30近辺まで上昇。ユーロドルは1.21台前半まで急速に下落、21日線を割り込んだ。ポンドドルは1.41台割れへと下落。ドル買いの動きが継続するもか、明日の米雇用統計を受けた動きが注目されている。ポンドにとっては、ドル買いも去ることながら、英国で蔓延しているインド型の変異株への懸念もあるようだ。

(4日)
 東京市場は、ドル高水準での揉み合い。ドル円は前日の上昇を受けて110円台前半での取引。朝方に110.33レベルにわずかながら高値を伸ばした。その後は110.14レベルまでの調整売りにとどまった。米雇用統計待ちで積極的な売買は手控えられた。ユーロドルは1.2130台が重くなるなか1.21ちょうど手前へと軟化している。ユーロ円は134円台が重く、133.50割れ水準へと下押し。イベント前のポジション調整の動きがみられた。ポンドドルは1.4112レベルまで買い戻しが入るも、午後には1.4083レベルに安値を更新。ドル高の加えて、インド型の感染拡大警戒が上値を重くしている。

 ロンドン市場は、ドル高の動きが一服。米雇用統計の発表をこのあとのNY市場に控えており、小幅の調整が入っている。ドル円は110円台前半と前日からの高値圏を維持しつつも、やや上値重く110.10近辺に軟化。ユーロドルはロンドン朝方に1.21台割れ目前まで下押しされたあとは、1.2120付近で上値を抑えられての揉み合い。ポンドドルは1.4083レベルまで軟化したあと、1.4130近辺まで下げ渋り。クロス円はまちまち。ユーロ円は133.30近辺へとじり安。ポンド円は155円台前半から一時155.70付近まで反発。ユーロ売り・ポンド買いの格好となっている。4月ユーロ圏小売売上高が予想を下回り、ドイツ建設業PMIが前回から水準を下げた。一方、英建設業PMIは予想を上回る上昇となり英独指標が対照的な結果だった。欧州株や米株先物は調整売りでやや売りが優勢。全般に様子見ムードが広がっている。

 NY市場はドル売りが強まり、ドル円は109円台半ばに急速に下落した。この日発表の米雇用統計の発表を受けて失望売りが強まり、ドル円は110円台から失速。非農業部門雇用者数(NFP)は55.9万人増と前回の驚きの低い数字からは回復を見せたものの予想は下回った。労働参加率の低下もあって失業率は5.8%に改善したものの、今回の結果を受けて市場はFRBの出口戦略への期待を大きく後退させている。前日のADP雇用統計や米新規失業保険申請件数が強い内容だった分、きょうの米雇用統計は失望感が大きかったようだ。

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