ドル円は115円台半ば FOMC議事録の反応は限定的=NY為替後半

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 NY時間の終盤に入ってドル円は115円台半ばでの推移が続ている。午後になって11月FOMC議事録が公表されたが、為替市場の反応は限定的。議事録では資産購入ペース縮小に柔軟性を持たせることの必要性を強調した。「リスク管理に基づき適切な政策の柔軟性を維持することは、政策を実施する上での基本理念であるべきだ」としている。市場は資産購入ペース縮小を早期に終了し、来年半ばの利上げ期待を高めているが、その期待からかけ離れた内容でもなく反応は鈍いようだ。

 きょうもNY為替市場はドル買いが強まり、ドル円は115円台半ばまで上げ幅を伸ばしている。この日発表の米経済指標はまちまちな内容ではあったが、米新規失業保険申請件数が20万人を下回ったほか、10月のPCEデフレータも前年比5.0%まで上昇し、市場の早期利上げ期待を追認する内容ではあった。指標発表後の為替市場はドル買いを続けている。

 パウエルFRB議長の次期議長への再指名をきっかけに為替市場ではドル買いが強まっており、ドルは16カ月ぶりの高値に上昇している。この日発表のPCEデフレータはインフレの長期化を示唆する内容だったが、市場は先々週の米消費者物価指数(CPI)からの一連の指標の強さを、議長の再指名を確認後、改めて意識しているようだ。市場は来年半ばの利上げ開始で織り込もうとしている。

 ユーロドルは下値模索が続き、1.12ドルを一時割り込んだ。1.12ドル割れは昨年7月以来。市場ではFRBの早期利上げ期待を強める一方、欧州での足元の感染拡大もあり、ECBはしばらく慎重姿勢を続けるものとみられている。ECB理事のホルツマン・オーストリア中銀総裁はパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)について、来年3月の終了後に完全に打ち切るのではなく、「待機」とすることを決定する可能性があると語っていた。

 また市場では、ドルとユーロの利回り格差が更に拡大することにより、来年のユーロドルに更に弱気な見方も出ている。来年末までに1.10ドルまでの下落予想はこれまで出ていたものの、1.09ドルを見込む声も出始めているようだ。FRBの利上げサイクルが軌道に乗った時点でECBはようやく引き締めを開始するという。

 来年の第1四半期は現行よりも高い1.13ドル、第2四半期に現行水準の1.12ドル、第3四半期に1.11ドル、第4四半期に1.09ドルを見込んでいるという。その後、ユーロドルは2023年に安定するまでは上値の重い展開を見込んでいるようだ。ただ、逆に見れば、過熱感もあり今年の年末までは短期的に買い戻しが入ると見込んでいるのかもしれない。

 ポンドドルは下値模索が続き、1.33ドル台前半まで下落。昨年12月以来の安値水準で年初来安値を更新した。市場ではFRBの早期利上げ期待を強める一方、英中銀による12月利上げに不透明感が台頭している。

 英中銀のベイリー総裁とチーフエコノミストのピル委員による最近の発言は、12月の利上げが確定したものではないことを示唆している。直近の英経済指標は利上げを正当化する力強い内容ではあるものの、それは年末までに変化する可能性が高まっていることは疑いの余地がない。次回の英中銀金融政策委員会(MPC)が12月16日まで予定されていないことを考えると、幾分注意が必要ではある。

 また、英中銀が12月に利上げを行ったのは過去45年間で1回だけで、1994年に、為替相場メカニズムの崩壊から経済が回復した時だけだった。利下げは何度かある。時期的にもMPC後1週間余りでクリスマスでもあり英中銀は、クリスマス商戦における消費や企業の動向を確認してからでも遅くはないという考えに基づき、パンデミックからの不安定な回復を引き締めで妨害することを躊躇する可能性もあるという。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

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